真田丸感想31話「終焉」③死を目前にして


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前回は一度は三成の思う通りに為ったかに見えた遺言書を家康が引っ繰り返し、それを更に三成が引っ繰り返す戦いでした。
今回はそれを諌めた寧々が幸村に秀吉が秀頼と会えたのか尋ねる所から始まります。

幸村は茶々が秀頼に秀吉のやつれた姿を見せたくないと会わせたがっていないことを伝えます。
加えて、秀頼にとって秀吉は偉大な太閤殿下であって欲しいと考えていることを伝えます。
寧々は「殿下のお姿を見て、どう思うかは本人に任せればええに、」と憂うと「あの子は賢い子。きっと今の殿下のお姿を見てもがっかりなんてせんと思うがね」と幸村を説得します。幸村はそれに頷くのでした。
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幸村は茶々の元に向かい寧々の言葉を伝えます。「そんな事は分かっております」と茶々は何を言っているのだといった目で幸村を見ると、中庭で大蔵卿局と遊ぶ秀頼を見ながら「殿下を見ればきっと、あの子は殿下の大きさを知る。でも同時に、他の面も知ってしまう。私はそれを案じているいるのです」と言い、幸村が他の面とは何かを聞き返すと「殿下がお元気だった内は隠れて見えなかったもの。あの方の心の卑しさ、醜さ、冷たさ、そんなものまであの子はきっと感じ取ってしまう。六歳の子供は恐ろしいですよ」と茶々は言い放つのでした。

恐らくですが寧々と茶々の二人は秀吉の姿を正確に捉えています。表れている違いはそれに対する感じ方と秀頼に対する姿勢の違いなのだろう思いました。
寧々にとって秀吉は亭主であり、秀頼は息子である家族だと捉えているのに対して、茶々は秀頼を天下の跡取りであり、それに見合った教育を施さねばならないと考えているのだろうと思います。その為に秀吉は偉大な存在で有り続けなければならない。寧々は母親であり、茶々は教育者としての色が濃いように見えました。
寧々は秀頼に秀吉の死を見せる事によって得られるものがあると考えているのでしょうし、茶々はそれを老醜であると捉えており無様な死に様はマイナスの影響を齎すと考えているのでしょう。
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幸村は茶々を説得できずに大阪城に戻る事となりました。
そんな幸村にきりは寧々からだと生せんべいを差し入れます。幸村は「それは有り難い」と受け取ると縁側に腰掛けます。きりは「秀頼様はまだお見えにならないの」と尋ねます。幸村は生せんべいを手に取りながら「もうここへ来られないんじゃないかなぁ」と何処か他人事のようです。きりは「で、殿下のご様子は」と聞くと手に持った生せんべいを千切り口に近づけながら「恐ろしい人ではあったが、こうなっては憐れでならぬ」と言って口の中にせんべいを放り込みます。きりは憤りを見せながら「惑わされちゃダメですよ。これまで酷いことをやってきたんですから、自業自得」「今の殿下を見るとそうは言えない」と幸村は嗜めると「殿下が亡くなったらどうするんですか」ときりは幸村の身の振り方を聞き、幸村は「分からん」と短く答え「上田に帰るの」ときりが畳み掛けると幸村は「どうなるんだろう。想像がつかぬ。まぁ先が読めぬのは私だけではないだろうがな」とはぐらかします。きりが納得のいかぬ顔をしている所へ近侍の者がやってきて家康の来訪を幸村に告げます。
それに聞いた幸村は急ぎ向かいます。残されたきりは幸村の残した生せんべいを口にするのでした。

寧々がきりに生せんべいを持たせたのは茶々への説得の礼なのか現状を探らせる為なのかは迷う所です。しかし少し前の幸村なら秀吉の容態を口にすることは決して無かった事だと思うですが、秀吉の容態は公となっているのか、それとも幸村からやる気が失せてしまっているのかというのも気になる所です。また、きりは秀吉に悪い感情を抱いている様です。いつの間にかキリシタンの集まりに参加しているきりにとってバテレン追放令やサンフェリペ号事件、日本26聖人磔事件を起こした秀吉を許すことは出来ないのでしょうね。

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幸村が向かうと家康は眠っている秀吉を見舞っています。家康はやって来た幸村へ「先日は、些か、手荒な真似をしてしもうた」と言い訳のように言うと幸村は「殿下に直々、仰せ下さい」と返します。家康は秀吉の顔を見詰めます。幸村は蝋燭の火を新しいものに移し変えます。家康がそれを見ているのに気が付いた幸村は「火を絶やすなという殿下のお言いつけです。この燭台の火が消える時、己が命も消えると」それを聞いた家康は目を見張り唾を飲み込みます。今まで誰も成し得なかった天下統一を果たした英雄がそんな弱気な事を言う様になったのかと驚いたのではないかと思います。
家康は「どれほど華やかな暮らしをしていた所で、死ぬ時は一人。諸行無常じゃのう」と言い幸村がはいと答えると、込み上げるものがあるのか「生き延びられれば良いと思うておる内に、ここまで来た」と言葉にします。それを幸村が見やると尚、秀吉を見詰めたまま「戦は大嫌いじゃ。間違いなく、勝てる戦など何処にもない。伊賀超えは一度で沢山。戦場で命からがら逃げ惑うのはもう御免じゃ。殿下が亡くなられて再び、世が乱れては、元も子もないしのう」と言うと「私も、左様に心得ております」と幸村が答えます。

家康が言っている伊賀越えは本能寺の変に際して明智軍から逃げる為に伊賀を越えたことを言っているのでしょう。この時の家康は京都にある知恩院で切腹をしようと考える程に追い詰められています。小牧・長久手の戦いで秀吉に土を付けた戦上手と見られる家康ですが、三方ヶ原の戦いでは武田信玄に糞を漏らす程の恐怖を味あわされ、三河一向一揆では本多正信が敵に回り戦いの後に家康が鎧を脱ぐと弾丸が2つ転がり落ちたという逸話がある程の激戦を経験しているだけに説得力があります。

意外なのは感傷的にも見える家康の言葉に私もそう思いますと答える幸村です。三成は家康を完全に敵視していますし秀吉も家康を警戒しています。加えて遺言書き換え事件が起きたばかりです。幸村が家康の来訪に急いで駆けつけたのも家康を警戒してのものである筈です。従って幸村も家康を敵視して然るべき中での同意です。先程は、きりとのやり取りで今後の身の振り方を分からないと言っていた幸村なので、もしかしたら家康に仕えるという選択肢も考えの中にあったのかもしれませんね。

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そんな所へ小早川秀明が見舞いに訪れます。
しかし秀吉が眠っている姿を見ると「叔父上はお休みのようだし出直すとしよう」と遠慮しようとしますが「一日の殆どを寝てらっしゃいます」と引き止め、家康も立ち上がると「さあ、どうぞ」と秀吉の枕元に来る事を促します。
秀明は躊躇いがちに秀吉の枕元へと向かいます。幸村は秀明に「お言葉を」と声を掛ける事を促すと目に涙を溜めた秀明は「お元気で」と言葉を掛けます。それを聞いた幸村と家康は複雑な表情を浮かべます。すると秀吉が目を開き、家康と幸村が枕元へと近付くと、秀吉は家康に目を向けて「秀頼のこと頼む」と言い、家康は「お任せあれ」と答えます。次に秀明に目を向けると「秀頼のこと頼む」と言い、秀明は「出来る限りで」と答えます。それを聞くと秀吉は再び目を閉じます。幸村は秀吉のその姿を少し見てから僅かに乱れた布団を直すと蝋燭から溶け出したろうの入る小皿を持ち下がる途中で家康に「お話になるのは秀頼公の事ばかり」と言うと家康は秀吉を見て「さぞ気がかりなのだろろうな」と答えます。その間に秀明は眠る秀吉の邪魔にならないようにと考えたのか蝋燭を吹き消してしまいます。
それを見た幸村と家康の二人は揃って驚きの余り大声を上げます。秀明は怪訝な表情でそれを見ますが、大声に目を開いた秀吉も蝋燭を見て驚きと嘆きの混じった声を上げます。それに驚いた秀明は動揺から蝋燭を崩してしまうのでした。
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気のせいか見舞いにやって来た秀明はどこかよそよそしいように見えましたが、考えてみれば秀次事件の煽りで秀明は筑前・筑後・肥後にまたがった三十三万石から越前北の庄十二万石へと領地を減らされた上に左遷されています。そういった秀吉からの仕打ちがあったと考えると多少そうなっても仕方ないのかという気もします。また、秀吉が自らの命の象徴と考える蝋燭を吹き消したのが秀明であるというのは皮肉であると感じました。後に秀明は豊臣を滅亡へと導く切っ掛けとなる裏切りを果たすのですから。

その夜から秀吉の意識は混濁状態となります。

秀吉の命は風前の灯となっていますが、今回は今まで壮健の折には本人の輝きによって隠されていたものが、それが弱くなることによって形として現れ始めているという印象を受けました。見舞いに来た家康が秀吉を見る目は哀れみか己はそうなるまいとする戒めであるようにも見えます。

真田丸31話感想続きます。
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