映画「海の上のピアニスト」 感想


物語はマックスという男の思い出話の回想シーンという描かれ方をします。

主人公の1900はマックスの同僚であり良き友であり、憧れを抱かせる英雄として描かれています。

回想の中の船は過ぎ去った時代を象徴し、
マックスは普通の感覚の持ち主の人間を代表している、その対極の存在として1900が存在しているのだと思っています。

この作品が人の心を動かすのは、登場人物達の数々のエピソードが積み重なる事によって達成されているのではないかと思います。

屍骸と化した船は昔に捨て去ってしまった想いや懐古を表現していて、普通の人が状況等の理由によって果たせなかった想いに1900が共に殉ずる事によって昔に果たせなかった想いへの後悔なんかを表しているのかと思います。

1900は純粋な大人だというイメージを抱きます。それは天才と狂気の境、限りなく純粋な想いに身を任せる事の出来る狂気すれすれの純粋な天才であるという事が出来るのではないかと思います。

普通の感覚を持つ人間が見限らざるを得なかった、時代に留まり続ける事を選んだ懐古主義者の最期。そうする事を望みながら選ぶ事の出来なかった選択をする事の出来る、ある種の殉教者への人々の憧れ。
それを彼の死が表現しているのだと感じました。

思うのですが、案外、あの作品の主人公はマックスであり、海の上のピアニストという物語は彼を救う為のものだったのではないかと思うんです。彼を救う事であの物語は完成したのではないかと思うんですね。

それらが作中に散りばめられたメタファーと観た各人の記憶と絡むことで化学反応を起こし、それらも含めて作品を創り上げているのかなと思っています。