廊下で人知れず悔しがる忠勝
稲を嫁に出すことになり、それを廊下で嘆く忠勝、そして偶然その傍を通りかかる信幸。どうやら厠へと向かう所だったようです。
信幸が用を足していると
音もなく後ろに忠勝が立ちます。
刀を持っているので切り掛かりそうで怖いです。
信幸がそれに気が付きます。
しかし忠勝は鼻水を垂らして目は真っ赤になっており尋常な表情ではありません。
信幸は礼をします。途中でしたが小便も止まっていますね。
実に礼儀正しいです。(掛けたら大変ですしね)
そして「どうぞ」と一言残して立ち去ります。
それを忠勝は険しい表情をして黙って見送ります。
本多家は武門の家系ですが長女である稲は才色兼備と謳われており、武芸にも秀でているとも言われる才女なので尚更に惜しいのでしょうね。
娘を奪われる父親の気持ちが出ています。
そして場面は謁見場へと移り徳川側と真田側が向かい合います。
昌幸「縁組でございますか」
正信「左様でござる」
家康「此度のこと徳川と真田のよしみを結ぶ良い折であると儂は思っておる。(忠勝を見て)この本田平八郎という男は我が家臣の中でも殊に武勇に秀でた男」
忠勝「有り難き、お言葉」
家康「その娘をそなたの嫡男、信幸殿の嫁としてもらいたい」
信幸「えっ」
正信「形としては本田平八郎がむすめ稲を、いったん殿の養女に迎えます」
家康「あくまでも徳川と真田の縁組ということにしたいのじゃぁ」
昌幸「いや大変ありがたいお話ではございますが、息子には我が無き兄の娘で江と申す嫁がございます」
家康「離縁すれば済む話ではないか」
昌幸「そう申されましても」
家康「これほどの良縁、それしきの理由で断るとは言わせんぞ」
家康「安房守」
そして、まさか断るなんて言わないだろうな?とでも言いたげに信幸を忠勝は睨みます
気圧されて思わず信幸も目を逸らします。
怖いよね。
補足しておくと稲が家康の養女になるという流れについてですが、初めは忠勝の娘として信幸の嫁にと話したところ昌幸がそれを受け入れなかった為に、家康の養女に迎えたという説もあるようです。
何れにしても稲はその後、真田と徳川を結ぶにあたって重要なファクターとなります。
場面は真田の部屋へと移ります。
信幸「お断りください」
昌幸「どう思う(信尹を向いて)」
信尹「これは言ってみれば徳川から真田に人質を出すようなもの、無下には断れますまい」
信幸「いや、しかし」
そして信幸を全く見ようとしない昌幸と信尹です。悲しいかな信幸の意思が介在する余地は少ないようです。
昌幸「奴の狙いはなんじゃ」
信尹「兄上に裏切られるのが怖いのでしょう。もしくは真田の内情を探る為の間者」
昌幸「使えるなぁ」
まさかの稲との結婚にプラス評価です。
信幸「使えるなぁではありませぬ!!」
たまらず絶叫する信幸。
信尹「何れにしても断れば両家の間に波風が立ちます」
信幸「源三郎。お江は里に帰そう」
信幸「本気で仰せですか」
昌幸「源三郎、ここは泣いてくれ」
信幸「父上!!」
昌幸「全ては真田の為じゃあ」
ここで独身の幸村にしたらと思ったのですが真田家の跡取りは信幸と考えると徳川とでは釣り合わない。となってしまうのでしょうね。
いくら徳川から人質を出す格好になるとはいえ、今ある妻と別れてというのは強引に感じてしまいますが、家康の正室である旭姫も秀吉に夫と離縁させられてという経緯を辿っているので、立場や地位に関わらず個人の感情よりも政治を優先せざるを得ない時代だったと言う事なのかもしれません。
今度は忠勝が稲を説得する番ですが冒頭から「嫌でございます」と断られてしまいます。
稲「稲は父上の傍にいとうございます」
忠勝「殿の命には逆らえぬ」
稲「信濃になど行きとうございませぬ」
稲は将軍家康や秀忠などにも直に意見したと言われています。
なので父親である忠勝にも言いたいことを言います。
それに驚く忠勝。と、思っていたら
忠勝「ひょっとして稲、好きな殿御でもおるのか」
そっちの心配かよ!と思わずツッコんでしまいます。
稲「(迷った様子を見せて)おりまする」
これに忠勝は再び驚きます。
そして暫くの間、躊躇して改めて言います。
稲「おりません」
好きな男がいるとなれば、その気持ちを汲んでくれるかもしれないと一度は考えながら父を騙すことは出来ないと言う姿には稲の気質が現れている気がします。
稲「稲は殿の為に働きたいのでございます」
忠勝「よいか稲。これは殿の為なのじゃ。そなたの動きを探るのじゃ」
稲「稲は間者になるのですか」
忠勝「頼む、頼む・・・」
稲「喜んでお役目、果たしまする」
しかし稲は抱きしめられてから唸り、忠勝を跳ね除けて言います。
「やっぱり嫌でございます」
再び謁見の間へと移り
信幸「真田安房守が嫡男、信幸でござる」
稲「本多平八郎が娘、稲でございます」
家康「こうして見ると似合いではないか、平八郎。良い娘に育てたのう」
忠勝「は、有り難きお言葉」
そういって頭を下げます。
稲は無表情なままです。
家康「どうじゃ安房守」
昌幸「我が息子には勿体ない位でございます」
家康にそう答えます。が信幸も表情は変わらないままです。
そして稲は突然、宣言するかの如く言います。
稲「稲は徳川様と真田様の懸け橋になりとうございます」
家康「よう申した」
自分の感情を押し殺した上で、なお徳川家の間者になると決意した稲の成長と娘の我が侭を聞けない父親として不甲斐なさ。それと嫁に出したくないという気持ちを含んだ上で頷くしかない忠勝もまた苦しい決断をしたんでしょうね。
昌幸「さすが本田平八郎様の娘御、先ずはおめでとうございます」
対して不承不承といった風情の信幸と稲が今後どのような関係を築いていくのかは気になりますね。
と、言う訳で明日に再び続きます。
どうにか明日の20話放送までには19話の感想を終えたいです。