真田丸20話感想「前兆」④道久を追い詰めたものは

前回は名探偵幸村がノリノリで調査を行い、今回はその結果報告を三成へ行う所から始まります。

二人が報告に訪れると三成と吉継は刀狩りで集めた刀の処分方法についての検討を行っています。
集めた刀を溶かして釘を作る事になったそうです。方広寺に使用するとの事。
因みに方広寺は豊臣家の氏寺です。このことは「今生の儀は申すに及ばず、来世まで助かる儀に候(豊臣に従う民衆は来世まで助けられる)」秀吉政権に従う者に対しての統治ポリシーの表明でもあったのではないでしょうか。

調査結果としては、門番の中に尾藤道久という男がおり怪しいが住居を尋ねたが留守で現在の居場所が掴めないという事を報告します。
その報告を聞いた光成は「道久とは法名だろう坊主が紛れ込むなら大寺のあそこが一番」と本願寺にいるだろうと伝えます。

せやかて工藤

せやかて工藤

そして幸村と平野の二人は早速、本願寺へと向かいます。

2016-05-27 13.51.34

不浄なる者どもよ聴くが良い

僧と面会した所、道久は寺にいることが判明します。
道久を問い質す為に面会を求めると御仏を頼った者を見捨てられないと拒否されてしまいます。
(寺の強気な対応の理由ですが、戦国時代の寺は寺内町という自治特権を獲得しており、僧兵と言う兵力も有しており、自治意識が高かった為と思われます。しかし、この時代に大阪にある本願寺は武装解除され、寺内町特権も否定されています)

病にさえ掛かっていなければなぁ

病にさえ掛かっていなければなぁ

城に戻った幸村と平野は三成へ道久がいたが寺の反抗によって会えなかったことを伝え、助力を願います。そこで三成は豊臣秀長へと相談を行い、本願寺への一筆を頂戴する事となります。
(豊臣秀長は秀吉の異父弟であり片腕と呼ばれた人物。秀吉に異を唱え制御できる唯一の人物と言われ、長生きしていたなら豊臣が徳川に滅ぼされることはなかったであろうとまで言われています)

再び本願寺へと場面は移ります。
今度は秀長の一筆の効果もあり道久に会うことが出来ます。
面会を断った僧が幸村と平野を案内します。

「道久は元々ここにおったのですが、根っからの乱暴者で一年ほど前に追い出されましてなぁ。国に帰ったと思っておったのですが」と言いながら尾藤道久の元へと案内します。
この発言は道久の行いはあくまで個人によるものであり、本願寺が与しているものではないということを暗に伝えたがっているようにも思えます。

案内された先には尾藤道久がおり床に臥しています。

伏せる尾藤道久

尾藤道久

落書き事件について幸村が道久を問い質すと、ずっと酒を飲んでいて見回りなどしていないと否定します。
平野が「それでも番人か」と言うと、道久は語り出します「百姓に戻ったところで野良仕事は元々苦手だ。槍を担いで隣村の連中と戦うしか能がない男さぁ。ところが刀狩りが始まって、刀を奪われた上に喧嘩もしちゃならねぇとなったら、あとは何すりゃいいんだ。やっとありついたのが番人の仕事ってわけだ」
「だったら尚の事きちんとこなさねばならぬだろう」
「だって、やる事なんざありゃしねぇ。誰かが攻めて来るでもなし。そうだろう」
この時に道久は背中を向けていたものを幸村たちへと向き直ります。
道久の発言に幸村と平野は何を思ったのでしょう。
時代が平和へと向かい戦の少ない時代になるという事は彼等武士の出番も減るという事です。道久の姿を他人事と思う事は出来なかったのではないでしょうか。

道久の話に耳を傾ける幸村

道久の話に耳を傾ける幸村

そして幸村の手を借りて身体を起こした道久は言います。
仕事の合間に酒を飲んでいた事。
その為に背中を痛めた事
自分が長く生きられない事。

そして字が書けない事。

以上の事を伝えます。

道久は傭兵の様なものを生業としており、寺には僧兵として所属していたのではないでしょうか。
それが私闘を禁じられたことによって自分の役割が消滅してしまった。
かと言って今更農民としても生きられない。
そう言った人生の袋小路とも言える箇所に追い詰められた状態だったのかもしれません。

時代背景として、
この時代に秀吉は「惣無事」と呼ばれる論理を打ち出しています。これは天下静謐は叡慮(天皇の意思)であり、故に私闘を禁ずるものとする。従ってこれに逆らう者は天皇の代行者である関白(秀吉)が裁きを下す。
つまりは紛争解決の為の私戦を禁止して秀吉の裁定に対しての服従を強制するものとなります。

この様に統治が行き渡るということは同時に治安維持能力が行き渡るという事でもあります。
そうなると自分の身は自分の身で守るという(自力救済)を行う必要性がなくなるので刀を持つ必要がなくなり私兵を雇う必要もなくなります。
同時に寺も政治の保護・承認の下に置かれることになった為、僧兵といった私兵集団を持つ必要もなくなりました。
そして「刀狩り」の意味することの一つは地侍のように曖昧な身分を無くし農民は耕作に専念するべきだという兵農分離を促進させることにもあります。

しかし過去には農民の出とも言われる秀吉が身分の固定へと繋がる兵農分離策を推し進めることになるのは時代の皮肉であるようにも感じます。

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