西郷隆盛像

西郷どん1話「薩摩のやっせんぼ」感想③英雄の条件

小吉は後に自分を引き上げてくれる生涯最大の恩人とも言える島津斉彬に天狗として出会い、そして生涯対立することになる島津久光とも出会います。

斉彬は磯の御殿に父親である島津斉興から呼び付けられていました。
父親の前に出ると斉彬は手土産の不味い芋焼酎を斉興の杯に注ぐと「火薬実験のついでに芋焼酎を造って参りました」等と言います。これに斉興は勝手に薩摩に帰ってきたことを叱責しますが斉彬は何だそんな事かと江戸には影武者を置いて来たと嘯いて軽くいなすと更にイギリスと清が戦った阿片戦争のことを語ります。

なぜ日本の中で首都である江戸から遠い薩摩という辺鄙な地が当時の最先端の情報とも言える海外の情報を知っている理由についてですが、これには薩摩が支配下に置く琉球が関係しています。薩摩は琉球を通じて清とも繋がりを持っており阿片戦争の情報も薩摩に入って来ています。また、阿片戦争の経緯としては当時の清とイギリスとの貿易はイギリスが中国から大量の茶や陶器を輸入、一方の中国は一部の富裕層向けの製品を輸入するだけであった為にイギリスの大きな輸入超過状態となりました。そこでイギリスは自国の植民地であるインドで生産したアヘンを中国に売りつけてバランスを取るという暴挙に出るのですが、当然の措置として清はこれを禁止します。この措置に関して両国のやり取りが発展したことで戦争へと至るのですが問題はイギリスが持つ最新兵器の威力です。イギリスは開戦時たまたま近くに居た東インド艦隊の序列最下位の軍艦2隻だけで清国船団を壊滅させました。更に琉球にはフランスや英国が自国の要求を受け入れるように迫ることが度々起きていました。琉球という地は日本国内では最南端の僻地に過ぎないのですが欧米や中国、東南アジアから見れば日本の入り口となっていた為に、そこを支配下に置く薩摩は江戸幕府や諸藩に先駆けて海外からの脅威に曝される事となり、それがやがて西洋諸国と結び付く事となりました。そういった状況下の中で斉彬は蘭学を学んでいたことからも薩摩藩の中で次期藩主という以外にも重要な役割を担って行く事になります。
薩摩藩は幕府からも睨まれているので四人に一人を武士として抱え、更には海外の攻勢に怯えなければならないという事情から兵器開発費用と相まって領民は重税に苦しむ事となります。なんだか書いていて本当にイギリスはとんでもない迷惑野郎だと腹が立ってきました。

そういった状況の中で久光は共の者を引き連れて妙円寺を訪れると、やがては兵力となる子供たちを褒めてやるべく妙円寺詣りというおそらくは二十キロはあるという鎧を纏いこれまた距離も20キロの距離を駆け抜けるという悪夢以外の何者でもない苦行の一番乗りを果たした下加治町の面々に余り気乗りしない様子で声を掛けます。その時に赤山靱負は後ろに槍持ちの振りをして付いて来ている斉彬に気付くと、小吉も「あの時の天狗」などと声を掛けてしまい赤山に相手が斉彬であることを教えられます。これを受けて斉彬は「子は国の宝だ。お前たちのような者がいれば薩摩は安泰だ。頼もしく思うぞ」と声を掛けます。それを見て久光は気まずそうに馬廻に小声で「出せ、出~せ」とその場を早く立ち去るようにしている姿からは「坊主、大きくなったら巨人に来い」的な斉彬と対照的な小者感が漂います。まぁ、はっきり言って久光の面子は丸つぶれです。久光にとって長きに渡って対立することとなる西郷隆盛との出会いはやはり不愉快なものとして始まったようです。

小吉達は家に帰り妙円寺詣りの報告を行うと家族中が大喜びします。これを見ていると剣豪であったご先祖様の無敵斎様の事にしてもそうですが、昔の家というのはこういった褒め言葉を誇りとして家族で共有していたのかもしれません。また裏を返せば自分の恥は自分だけではなく家全体を貶める。その為に恥を雪ぐことは命を懸けてでも行う必要のある事だったのかもしれない等と思いました。
思い当たる例として幕末に薩摩藩の者が殺されます。その時に一緒に居て逃げた者は殺害された者の葬儀の際に線香をあげてうな垂れていると同じ薩摩の者が一刀の元に首を切り落とし「こいでよか」と一言で済ませました。これは切られることによって汚名を雪ぐことが出来た為に受け入れられたものです。当時の名誉はそれ程に重いものでした。
まぁ久光はこの後に隆盛と大久保利通のコンビに大いにプライドを傷つけられ続ける事になるのですが、こういった時代背景を考えると同情を禁じ得ません。

最後に小吉等少年たちは山を駆け上り城山を眺めます。
英雄になる為には時と場所と人の三つを揃える必要があると思います。
西郷隆盛は時として、幕府の力が弱まり欧米列強と渡り合う必要が有り変革が求められる時代。薩摩という海外からの玄関口と言える場所に生を受けた事。最後に島津斉彬という最高の後見人を得ることが出来、他にも薩摩藩内からは初代内務卿となる大久保利通、枢密顧問となる海江田信義、宮内大丞となる村田新八、初代鹿児島県令となる大山綱良といった人を得ることが出来た。
西郷隆盛は以上のように英雄となる三条件を揃えます。
この時の西郷が城山を眺める姿は希望に満ちたものでした。

西郷どん1話感想おわり。

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