桶川ストーカー殺人 埼玉県警上尾署の傲慢と失態



桶川ストーカー殺人事件ですが、
最終的には警察内部でも多数の処分者を出すに至っており、
当時、警察に対する不信を招く要因ともなっています。

この事件の主犯である小松和人についてはこちら
桶川ストーカー殺人、主犯である小松の異常性について

実際にこの事件に対しての警察の対応は余りにも不審であると感じる点が多かったので書いてみました。


所轄である埼玉県警上尾署の被害者に対しての対応

母親と二人で被害を訴える為に三日間通う(二日目は父親も加わり三人)が事件にならないと取り合わない。
小松とのやり取りを録音したレコーダーを提出しても同じ対応。

彼女の自宅周辺、大学付近、父親の会社に中傷する大量のビラを撒かれた為に通報されるが次の日に一日見張るだけで終了。

告訴を決意した彼女に「よーく考えた方がいいよ。全部みんなの前で話さなくてはいけなくなるし、時間掛かるし面倒くさいよ」と話す

告訴を受理するまで一ヶ月半もの時間を掛ける

父親の会社に送られた嫌がらせの手紙を持ち訴えると「これはいい紙を使ってますね。手が込んでいるなぁ」と笑いながら言うだけで何もしない

自宅前での嫌がらせについて通報を受け車のナンバーも知らされるが何もしない

被害者宅へ刑事が訪問を行い「受理した告訴を取り下げて欲しい。告訴するならまたすぐにできますよ」と伝えに来る
(刑事の発言は嘘で取り下げた告訴を再度上げる事は出来ない)


この警察の嘘について当初関係者たちはメディアに対して次の様に話していたようです。

警察幹部がこの出来事に関しての質問に対しての回答

「調べてみましたが、警察にそんな刑事はうちにはいません。記録も報告もありません。そんなことを言う筈がありません」

捜査関係者がこの出来事についての質問に対して

「ニセモノですよ。おそらく芝居を打って告訴を取り下げようとしたのでしょう」

※この出来事は当初、報道関係者も小松の手の者によるものと考えられていましたが、清水氏に被害者の父親より調書を取った刑事であった事が伝えられた事で本物であることが発覚しました。

警察が告訴を取り下げさせようとした事への識者の意見
告訴を受理すると検察庁への書類送付義務が生じ県警本部でも状況が管理される。
事件の起きた9月は上尾署の署長が交代した時期で、
継続捜査事案にはチェックが入り、二ヶ月進展がなければ問題になる。
しかし、遺族が取り下げれば全てチャラ。
解決するよりかは事件自体を無かった事にしようとしたのではないか

捕捉として告訴調書とは検察または警察に言って口頭で告訴する場合に検察官か警察官が作成する調書の事です。
今回の事件では「告訴」するという内容が「被害届」を出したという内容に改ざんされていました。

するとどうなるのか?

名誉棄損は親告罪です。
しかし「告訴調書」は「被害届」になっています。
つまり改ざんされた事によって警察は小松を逮捕したくても出来なくなっていたという事です。

この改ざんによって桶川ストーカー事件解決後に警察からは3名の逮捕者が出ました。しかし100人にものぼる捜査体制の中でこの事実に逮捕された3名以外の誰も気付かなかったというのは有り得るのでしょうか?

この事件をスクープした当時フライデーの記者、清水潔氏は小松容疑者と警察の繋がりについて疑義を述べています

清水氏は上尾署から公表される事件の情報もプラダやブランド品を持っているや厚底ブーツなどと言ったようなものを重点的に出す上尾署は猪野さんの被害者像を意図的に作ろうとする情報操作を疑っており、僅か三人でこの流れを形成出来るとは考え辛く、警察の個人によるものではなく上尾署全体による関わりを疑っています。更には二週間だけ務めた酒を出す店でアルバイトをしていた情報をマスコミに流し、風俗店勤務という流れを一時は警察が成功していると述べています。
新聞記者の取材を受けた捜査員は記者達に「あれは風俗嬢のB級事件だからね」と言い続けたと言います。
指名手配の際にも「風俗店店長と交際していた…」としています。小松は詩織さんにカーディーラーであると言い続けていたにも関わらずです。

警察にとって想定外だったのは、
大した事件じゃないと思っていた事件が大きくなってしまった事、
更にはストーカー事件の被害者である猪野詩織さんが殺害されてしまった事、
その為に報道に載る事になってしまったが為に内密に処理する事も出来なくなってしまった

そして警察の更なる不運としては、
ゴシップ誌と相手にしていなかったフライデーという雑誌記者の中に清水氏がいた事でしょう。
彼がいなければ、記者クラブに警察の都合の良い情報を流してコントロールする事で世間へは「風俗嬢のB級事件」という印象を植え付けて、世間の耳目が離れたら、うやむやの内に終わり。となる筈が、そうならなかったのですから

それでは事件当初、既に詳細な聴取を持った上で記者クラブへと提供された情報です。
詩織さんの服装と身に着けていたのもの:
・黒いミニスカート
・厚底ブーツ
・プラダのリュック
・グッチの時計
・酒を出す店でアルバイトをしていた
(小松が風俗店経営者である為「風俗店店長と交際していた被害者 猪野詩織」とする等で被害者は風俗嬢であるという印象操作を目的)

警察の流す情報がこういったものに特化していた事で報道側がのせられてしまいます。
実際に当時の報道は
・ブランド依存症
・風俗嬢だった女子大生

といったようにブランド中毒の女子大生が交際相手に散々に貢がせていた挙句の痴情の縺れといった書かれ方が多かったようです。

実際には、ブランド品は小松が渡したものであり、風俗嬢というのも二週間だけ酒を出す店でアルバイトをしていただけです

また、被害者の方の写真を拝見すると美人に属する容姿であった事はメディアとして面白おかしく書くには丁度よく、ここも被害者にとっては不幸に働いてしまったように思えます。

他に記者である清水氏が凶器であるナイフを事件現場裏の団地付近や歩道の植え込みを捜索していますが見つかっていません。
この際に団地の管理者や住人に聞き込みを行い警察が捜索に来ていなかったという証言を得ています。つまり警察は事件現場すぐ近くにある凶器を隠すか捨てるかするのに丁度良い場所を捜索していないという事です。


警察はこの事件の結果として

・100人体制で臨んだにも関わらず週刊誌記者である清水氏に出し抜かれて実行犯の居場所を先に特定される
・主犯である小松和人に自殺される
・書類改ざんの不正を暴かれて逮捕者を出す
・国会で議員に捜査の怠慢を追及される
ー警察の事件関係者処分者多数※1
・遺族に国家賠償請求訴訟を起こされて敗訴
ー捜査の怠慢を裁判所に認められて賠償金550万の支払いを命じられる

といった警察史上の中でも稀に見る失態を衆目に晒しています。

警察の内部調査
2000年4月6日警察が内部調査の結果を発表
警察が調書を勝手に書き換えて告訴を取り下げていた。
書類改竄に関わった3名が懲戒免職
この3名は詩織さんの訴えを聴かなかった刑事二名と告訴取り下げの話をしにきた巡査だった。
動機としては告訴を減らしたかったというもの。

※1警察関係者処分者と内容

4月6日に埼玉県警は「調書改竄」や「捜査放置」を認め謝罪し、署員の処分を決定した。

署員3名 – 懲戒免職
埼玉県警本部長 – 減給10%・1カ月
県警本部刑事部長 – 減給5%・1カ月
上尾署長 – 減給10%・2カ月
上尾署刑事生活安全担当次長 – 減給10%・4カ月
上尾署刑事生活安全担当次長 – 減給10%・1カ月

9月7日、告訴状の改竄に関わっていた元署員3名が虚偽有印公文書作成容疑で執行猶予3年の懲役刑の有罪判決を受けた。wikipedia


その後
事件当時刑事であった巡査部長が2000年10月7日に起こした事件について
・事件当時の上尾署員を脅迫
・当時の上尾署刑事生活安全担当次長であった埼玉県警警視の自宅を放火
・逮捕、服役中に自殺
・その後に容疑者への対処に不信感を表明した刑事も自殺

補足として

逮捕された巡査部長は桶川事件当時上尾署の刑事であり、さらに最初の逮捕容疑となった脅迫事件の被害者も当時の上尾署員だった。wikipedia

容疑者は刑事から交番勤務に左遷されていたことから、恨みによる犯行とされた。一方で容疑者は、桶川事件では最初に被害者の女子大生に応対し、相談内容の深刻さに同情して当初は熱心に話を聞いてくれていたという。wikipedia

警視は桶川事件当時の上尾署刑事生活安全担当次長で、告訴取り下げや告訴状改竄を直接、間接に指示し得る立場にあった人物である。wikipedia

この事件について書いた感想としては余りの遣り切れなさに驚いています

被害者死亡

容疑者自殺

警察関係者処分者多数と複数の自殺者

これでは遺族も遣り切れないのではないかと想像します。これだけの死者を出しながら誰も救われていない。

結局、この桶川ストーカー殺人事件というのは何だったのでしょうか?

警察が本来の職務を全うしなかった事を隠す事に右往左往に終始していた単なる失態劇だったのでしょうか?しかし、事件後に自殺した巡査部長の一連の出来事には明かされていない裏が隠されているように思えて仕方ありません。

現在は2016年であり、事件発生から既に16年もの歳月が経過している訳ですが、この時から改善が行われているのかどうかというのは大いに気になる所です。
そもそも警察が何のために存在しているのかという点を考えて見つめ直して欲しいというのが率直に望むところであり、まだ風化させるには早い事件と感じました。

最後に詩織さんの友人の言葉です
「詩織は小松と警察に殺されたんです」

 

参考資料:
桶川ストーカー殺人事件―遺言 (新潮文庫)清水 潔
-書いた内容の殆どはこの本の内容を参考とさせて貰っています。当時フライデーの一記者に過ぎず、記者クラブに所属出来ていない為に警察への取材も出来ない人間が、大手報道や警察を出し抜いて真相を暴き出して真犯人を追い詰めていく姿からは執念すら感じます。


桶川ストーカー殺人事件―遺言―