兵庫県警の機動隊員2人が9~10月に相次ぎ自殺した問題で、県警が「パワハラやいじめといえる言動はなかった」として同僚隊員らの処分を見送ったことが24日、県警関係者への取材で分かった。
警官2名が相次いで自殺とは尋常ではないです。
(機動隊23歳巡査 山本翔さん 9月28日自殺 翌日9月29日死亡 同分隊所属24歳巡査 10月6日自殺 10月15日死亡)
しかも同じ兵庫県警機動隊第一中隊第一小隊で発生しています。
小隊の標準構成は一分隊11名であり、その中の2名です。
その状況下での言葉です。
「パワハラやいじめといえる言動はなかった」
この言葉がどうしても信じられなかったので調べてみました。
先ずは全国の自殺率との比較
※1 日本の10万人あたりの自殺率 約0.021%
※2 兵庫県警該当機動隊分隊の自殺率 約18%
全国10万人あたりの自殺率の約857倍
(※1 全国10万人当たりの自殺者20.1名 wikipedia「日本の自殺」)
※2 機動隊分隊の標準構成1分隊11名 wikipedia「分隊」)
他に参考として
自殺者が多いとされる自衛隊の自殺者
平成26年度自殺者 66名※3
平成27年度隊員数 226,742名(現員)※4
自衛隊の自殺率 0.029%(年)0.0024%(月)
(※3産経ニュース ※4 平成27年度の自殺者公表数値がなかったので26年度のものを使用 防衛省)
自殺した隊員の残した遺書と思われるメモ書きには
23歳の巡査が複数の同僚隊員の名前を挙げ、いじめを受けたとする趣旨の遺書を残していた
遺書でいじめを受けたと語り、なおかつ具体的に名前を挙げた時点でいじめやパワハラは存在していると思うのですが・・・。
自殺した山本翔さんの母親の訴え
母親の直美さん(43)は涙ながらに訴える。
「翔が自殺したのは、県警機動隊内部のいじめや嫌がらせにあったからです。翔が残した遺書や交際していた彼女へのラインにハッキリ書いてありました」
翔さん「これ以上マルキ(機動隊のこと)には耐えられん。死にたい。この世から本当に消えたいと思えるくらいつらい」(午前10時44分)dot.
「翔の夢は将来、捜査一課の刑事になることでした。竹を割ったような、曲がったことの嫌いな性格で、人のために尽くしたいと願っていた」
小、中、高と剣道を続け、3段の腕前。高校を卒業後、兵庫県警の採用試験に合格。灘署に配属された。
「灘署では褒賞をいただくほどで、仕事にやりがいを感じている様子でした。ところが、今年3月に機動隊に転属となってから『病みそうや』と悩みを口にするようになったんです」(同)
dot.
この言葉を聞くと警察官として必要とされる体力面は十分に満たしており、褒章を受けているという事は警官としても有能な人物だったのではないかと思えます。
自殺した山本翔さんの彼女であるAさんの証言
「当日、翔ちゃんは体調がすぐれなくて、休みを取ろうとしました。すると、1日休むだけのために『診断書』を提出しろという嫌がらせを受けた。小部屋に呼び出されたり、報告書を書けと言われたり、集中的に嫌がらせにあったみたいなんです。当日から1カ月間の外泊禁止を言い渡されて、翌日に私と会う約束も果たせなくなりました」dot.
飲食チェーン「ステーキのくいしんぼ」で起きたパワハラによる自殺を思い出しました。そのパワハラの内容も休みを与えずというものが含まれていたと記憶しています。
一ヶ月間の外泊禁止というのはそれに共通する部分かと思います。
体調を悪くして休んでいるにも関わらず報告書を書けと小部屋に呼び出されたというのでは休める筈がない。
助けを求めた兵庫県警相談室の対応
翔さんは自殺当日の午前11時過ぎ、県警本部の職員の悩みを受け付ける「何でも相談室」に電話を入れ、こう訴えていた。
「職場でパワハラにあっていて、つらい。職場の上司が信用してくれず、人間関係が非常に厳しい。職場を変えてください」dot.
当日の11時にこの訴えを行っていたという事ですが、その夜に自殺しています。
これは推測ですが、この訴えを聞いた相談室の対応は翔さんに対して「考え過ぎだ」であるとか「みんな経験している」といった対応を行うか、もしくは「所属部隊の上官に注意する」といったことを伝えたとのではないでしょうか。相談した内容が上官に伝わることで更に酷いパワハラが行われると追い詰めることになったというのは考えすぎでしょうか。
翔さん死後の兵庫県警監察官の対応
翔さんの死後、10月5日に監察官が直美さんのもとを訪ね、こう説明したという。
「これから、関係者86人に事情聴取し、真相を明らかにします」
だが後日、再び監察官がやって来たときには事情聴取する対象は約半分に減少し、「翔さんは職場を変わりたがっていた」と問題がすり替わっていたという。
dot.
確かに職場を変えたがっていたのだと思いますが、なぜ職場を変えたがっていたのかという根本原因への究明が為されていません。
自殺の起きた兵庫県警警察寮「雄飛寮」画面右側の建物
機動隊2名が自殺した雄飛寮が上の画像右側の建物です。目視だと1フロア5~10部屋程度の6階建てですね。また一部屋に何人かで入っているタイプだと思います。休みの日に別の小部屋に呼び出したというのは他の同僚に見られない為だったのでしょうか。
雄飛寮の地図(〒654-0121 兵庫県神戸市須磨区妙法寺野路山 雄飛寮1044-1)
正に機動隊の直ぐそばですね。この立地では自殺した隊員の気が休まる暇はなかったのではないでしょうか。
山本 翔さん(当時23歳)に関して言えば、
兵庫県警機動隊第一中隊第一小隊へ2015年3月 赴任。
2015年9月28日の20時過ぎの夜に自殺。
機動隊の在籍期間は約半年間です。
半年もの間パワハラを受け続ける苦痛というのは想像に難くありません。
実際に小学生から剣道を続けてきて三段を取る腕前と体力があり、勤務によって褒章を受ける能力のある人間が自殺に追い込まれているというのがその大きさを証明しているように思えます。
(2021/12/13木戸さんについて追記)
同じ兵庫県警機動隊第一中隊第一小隊の一員でもあった
木戸 大地さん(当時24歳)
三人兄弟の次男として生まれ、
小学校の頃は児童会長を務める活発な少年であったとの事。
2009年 兵庫県警採用
2012年 兵庫県警機動隊配属
2015年07月 うつ病を発症
2015年10月06日 首吊りにて自殺を図る
2015年10月15日 死亡
結婚を控えていた木戸さんの自殺は山本さんの自殺から僅か1週間ほど後のものでした。
遺族はパワハラの内容として
・試験の際に同僚に回答用紙を見せたと執拗に迫られる
・集まりの際に裸踊りをさせられる
他に自殺に大きく関わったのは遺書の中で名指しされたA隊員です。
A隊員は木戸さんを直接指導する立場の人間でしたが、
その指導に問題があった疑われています。
A隊員が裁判所に陳述書を提出、最後を締める言葉は
「私の言動が自殺の原因になったとは考えられません」
yahooニュース「【マルキの闇】兵庫県警機動隊員の連続自殺、塗りつぶされた「真相」立ちはだかる“組織の壁”…明日14日、遂に「A隊員」が証言へ― 問い続ける遺族の6年」
仮に自殺した特定の隊員に対するイジメが存在しないとしても所属隊員11名の内2名が自殺しており機動隊に限って言えば判明しているこの2名の自殺だけでも全国平均の約857倍の自殺率です。
他にも兵庫県警内で1名が自殺しており僅かな短期間で合計3名の若手警官が自殺しているというのは明らかに異常です。
以上の事から考えると、
兵庫県警機動隊第一中隊第一小隊もしくは兵庫県警自体に所属警官を自殺へと追い詰める程の問題を抱えているとしか考えられません。
また、この状況下で殆ど誰も責任を取っていない現状が兵庫県警もしくは警察全体で抱える問題の根深さをあらわしているのではないでしょうか。自殺した隊員の方々の無念と遺族のやり切れなさは如何ばかりかと思わずにはいられません。
せめて該当機動隊に対しての公正な再調査とそれに基づいた厳正な処分が行われる事を願います。
最後に、亡くなられた方々へのご冥福をお祈り申し上げます。
-以下2021/12/13追記分
この記事を書いた後
この一連の事件で遺族から兵庫県警への問い掛けに未だ非を認めることはなく、
現在に至っては「マルキの闇」と呼ばれ
警察の闇を象徴する事件になりつつあり不信感を募らせる事態となっています。
2017年10月木戸大地さんの両親が国家賠償請求訴訟を起こしています。
パワハラが自殺の原因であると訴えたものですが、
これには遺族がパワハラであることを証明する必要があります。
それを証明する証拠の多くは兵庫県警が握っています。
その警察の資料を集める為に遺族は多くの時間を割くこととなりました。
更に言えば2021/3/19には
機動隊で29歳の巡査部長が部下4名に対して暴行を加え腕立て500回を命令した由でパワハラの処罰を受けています。
「パワハラ巡査部長戒告、兵庫県警 腕立て伏せ500回命令」yahooニュース
このニュースを見る限り兵庫県警の機動隊に於いて二人の死を活かすことは出来ていません。
その体質は現在も変わっていないと判断せざるを得ません。
他に自殺事件で機動隊長に組織を適切に管理できなかったと本部長注意処分が下されていました。
これは減給や停職、免職といった懲戒処分を要しないと認められる事案に対して行われる処分です。
2021年12月14日、3年ぶりに公判が開かれます。
そこでは名指しされたA隊員、先輩隊員、上司の3名も法廷で証言する予定となっています。
しかし裁判でこの3名は以前と同じくパワハラを認める発言は出ない公算が高いです。
理由は先述した通り兵庫県警が加害者達に懲戒処分にも値しない軽い処罰しか与えていない。
それは兵庫県警が加害者達に重大な過失があると認めていないということです。
そして裁判に於いて加害者達はパワハラの事実を認めない限り自分達の地位と名誉が守られます。
パワハラを認めればそれらは失われるということです。
そう考えると公判で加害者達からパワハラを認める発言が出るとは考え辛いと言わざるを得ません。
事実が明らかにされることで被害者と遺族の無念が晴らされることを祈りたく思います。