終身雇用を無くして労働基準法を守ればブラック企業は存在できなくなる

無理やり悪魔から契約させられる ブラック企業の社窓から

就職活動をして企業に就職した場合、普通は終身雇用を前提に考えていると思います。
それ故に会社で理不尽な仕打ちや辛い仕事でも定年までいるのだから波風を立ててはいけないと思って耐えます。
それに年数や経験を積めば給与も上がってくるだろうし、ここで直ぐに辞めてしまうと勿体ないという考えが退職したい気持ちを抑えているのだと思います。
以上のような考え方は間違えていると考える人はまだ少数派だと思います。
私は間違えていると思っている人です。

なぜか?
ブラック企業を複数社経験すると分かりますがブラック企業で解雇というのは珍しくありません。
それも一般企業のように企業からの解雇でなく自主退職の形で解雇されます。
経営者が「おまえがクビだ」と言われたらそれまでです。
よく聞くのが「解雇という形だと将来、君が苦労するから温情として自主退職の形にしてやる」という促され方です。
別に懲戒解雇でもなければ解雇されたとしても特に従業員の側に問題はない所か失業保険の給付タイミング等から見ると解雇された方が圧倒的に有利なのですが、世間知らずであったり当の本人が洗脳状態になっていると、それに頷いてしまいます。
(そうなった場合は直ぐに労働基準監督署に駆け込みましょう)

そういった場面を私は何度も見てきました。
解雇の理由は本人の能力以外のものであることも多かったです。
例を挙げると、
・口が臭いから。
(一番酷いと思った理由)
・いつも咳をしていて辛気臭いから
・実績をあげているからといって上司のパワハラに逆らって協調性がないから

もちろん有休消化などはありません。
有休が存在していたのかどうかすら怪しいと思っている程です。
上司に体調が悪いと相談してみても「そんなものは気合でどうにかするんだ。昔は云々」と言われて休めず月曜日から金曜日まで出勤して休みの筈の日曜日に出社して途中で仕事を抜けて病院に行ったらインフルエンザが治りかけていて、どうりで社内全員が今週は具合を悪そうにしていたなと思ったのも今となっては良い思い出です。
(その間、他の社員も全員休んでいませんでした。バカすぎる・・・)
他にも役員とインフルエンザの話になって、その役員が昔、新型インフルエンザに罹った人が出た飛行機にたまたま搭乗していて行政から仕事を休むよう言われて経営者にそれを言ったら出社して来いと命令されて休めなかったと聞いた時は驚くやら呆れるやらです。コロナもこういう馬鹿が広げたんじゃないかと振り返って思います。

しかし私がブラック企業でこんな心温まる日常を送ることが出来た理由は何なのだろう?と我ながら不思議に思うのですが、こんなブラック企業にいても長生き出来ないから早く逃げなくてはと常日頃思っている私でさえも心の中のどこかで冒頭の終身雇用を前提にした考え方をしていたことに気が付き寒気がしました。
もしかしたらこの会社に定年までいるのかもしれないのだから、ここは穏便に何も言わず黙っていようと思っていたのです。

そこでブラック企業の経営者の権力を支えるのは何なのか考えてみると、それは存在しない終身雇用を前提にした妄信であると思い当たります。
それ故にブラック企業の経営者が過大な量の仕事が終わらない社員に向かって「別に会社に泊まってやれば良いよ」と涼しい顔で出される命令にも従えるのです。
これがもし終身雇用という制度が存在しないとなれば、ふざけろ。なんで気紛れに会社に来て適当な時間に帰ってる奴の為に残業代も出ないのに会社に泊まって仕事なんぞせなあかんのじゃ、アホか!となって誰も言うことを聞かずブラック経営者の独裁政権も成り立たない筈なのです。

次に労働基準法の厳格順守です。日本は生産性の低さが話題にのぼることが多いですが当然です。
まずブラック企業は残業代を社員に払いません。
残業させても残業代が発生しない定額社員使い放題サービスを許している現状で経営者は仕事の効率を上げるための施策を講じたり設備投資をしません。
投資には資金が必要です。
しかしブラック企業は社員が残業代なしで働くので資金は掛かりません。
なぜ使わなくて良い資金を使わないといけないのですか?

ブラック企業の経営者になった気持ちで考えてみます。
業務の効率化によって生産性を向上させましょう。
業務の効率化? そんなの社員が長時間働けば良いでしょ?
なんでそんなものに無駄な資金を使わないとならないんだよ。
うちの会社は最大効率で働いてるよ。
以上のような考えが許されているのでブラック企業が無くならないのです。
これが労働基準法に則って残業代が支払われるようになればブラック企業の経営は早晩立ち行かなくなって消滅します。

従ってブラック企業を無くすには終身雇用制度を廃止するか労働基準法を厳格順守すれば良いのです。
終身雇用が無くなって転職がもっと一般化すれば被雇用者は履歴書に書く職歴の数など気にせず転職できるようになるので、スキルを身に付けたらさっさとホワイトな企業を目指して転職するようになります。
そうなると困るのはブラック企業なので転職されるのを防止する為に給与を上げるか待遇を良くするかしなくてはならなくなります。残業代を規定通り支給すれば資金が掛かります。更に法定時間を越えれば割増賃金も掛かって来ます。そうなって来て始めて仕事を効率的にこなすことによって人件費を抑えようという考えも出て来るのではないでしょうか。

以上のようにブラック企業は終身雇用という幻想と労働基準法を守らないことによってその存在を許されているのかもしれないと思ったので書いてみました。

それでは今日はこの辺で