事業を奪われた話

全員惨敗 ブラック企業の社窓から

ビジネスとはルールを守って競うものだと思っていた時期が私にはあったのですが、そんなことなかった話です。

これは私が以前に勤務していた会社の話です。
そこではオーナーが所有する施設の運営受諾を主な事業としていました。
しかしベンチャーでお金の無い会社でした。
部分的には運営に成功例も出し始めてはいましたが残念ながら全体ではまだ赤字という状態。
その会社で私が営業として最後にした仕事はお客さんを送ってくれた代理店さんに会社が潰れてしまうのでお客さんを受け入れられません。ごめんなさいの行脚であったのは今になっても笑えない思い出です。

中小零細企業は資金繰りが命

倒産する末路を迎える会社だったので、そこに至るまでの間にも何度か資金難に陥っています。
従って、この会社の倒産はある日突然つぶれるというものではなく、この会社潰れそうだなというのを何度か繰り返してたら本当に潰れた会社です。
何もプールに入る前に水を身体に掛けてならして心臓麻痺を防ごうってんじゃないんですから個人的にはある日突然つぶれてくれた方が色々と手間が無くて良かったんだけどなぁと思ったりします。

救世主現る!?

そんな中で社長と付き合いのある会社が融資してくれるかもしれないという話が持ち上がります。
これに社長だけでなく副社長も会社の一大事と先方の経営者と面談してきて「いやぁ、向こうの経営者の人が気持ちの良い人でね」等と無邪気に喜んで帰ってきます。

その後、融資してくれるかもしれないという会社から経営状態を見せて欲しいと何名かやってきます。
これにお人よしの経営陣はうちは何も隠さないと言って先方の望む情報を全て与えます。
更に先方の会社は私も含めて本社の人間全員と面談する念の入れようです。
現場管理を担当する役員の面談は他と比べてかなり長く掛かりました。

リスクなく儲けるにはどうしたら良いか?

後日、先方の会社から資料を求められ、こういった話は早い方が良いということで直接資料を相手の会社に届けたのですが至極冷たく対応されました。
この反応を見て私は融資は無いなと思っていたのですが予想は斜め上に外れます。
向こうが考えていたのは融資ではなく事業の乗っ取りだったからです。
先述した通り全体では赤字でしたが利益の出ている施設もいくつかありました。

向こうの考えは恐らくこうです。
運営受諾事業について利益の出ている施設を乗っ取って確保してノウハウを横展開して拡大させていく。
現場のサービスについては担当役員を引き抜けば良い。
他の経営能力は全て自分たちが上であるので必要ない。
以上の考えによってリスクなく儲けることが可能であると踏んで利益の出ている施設のオーナーに働きかけを開始します。

気持ちは分かるけど・・・

個人的には役員達も家庭を持っていたので、度々資金難に陥っているような会社でなく経営の安定した会社で安心して暮らしたいという気持ちは十分理解できるので引き抜かれた役員を責めるつもりは無いのですが、引き抜きを行った会社については自分の知り合いの会社に乗っ取りを画策するという考え自体が理解できませんでした。
しかし社長と副社長の二人とも向こうの社長を気持ちの良い人物と評する人の見る目の無さは経営者として致命的です。

因みに私の採用を決めたのは副社長です。まぁ、副社長の人を見る目が無かったからこそ私が採用されたという話もあるので痛し痒しといった所です。

計算違い

向こうの誤算は引き抜いた現場担当の役員が実は現場スタッフから全く信頼されておらず、おまけに各施設毎に置かれた施設長の独立権が強いということもあって現場の職員たちは役員を殆ど無視して各々で運営していたこと。そしてサービスの中核と思っていた役員が実は穀潰しというか他の皆は働いていると思っていた働かないおじさんだったこと。
従って施設のサービスレベル維持の為に引き抜いた運営役員が実は施設のサービスレベルに全く寄与していないというか寧ろ阻害要因になっていた人物だったので、それを聞いた私は大笑いさせて貰った所でもあります。

オーナーを説得した流れ

そして運営を横取りする施設にもオーナーが存在する訳ですが、
その説得については
・当方の会社は経営が苦しい
・件の会社は経営が安定している
・施設管理担当の役員は引き抜いたのでサービスレベルは変わらない
以上の理由を並べ立てることで黒字経営だった施設のオーナーの一人が運営委託引き抜きの説得に応じます。
ここで営業が強く集客をこちらが握っているとなればオーナーの説得材料になったと思うのですが営業については始動したばかりだったのでこの段階では明らかなお荷物でしかありませんでした。
それどころか集客についてはサービスレベルの高さから引き抜きに応じた施設の評判が良かったため口コミとリピーターで集客も間に合ったのでオーナーにとっては経営リスクの無い側になびくのも致し方ないと思います。

乗っ取りを掛けてみたけれど・・・

更に向こうの誤算です。
先述した通り現場管理の役員に対しての現場からの評判は最悪です。
しかし引き抜いた会社は現場管理をしている役員さえいれば今までのクオリティでサービスを維持出来ると考えていました。
運営の委託先が変わりました。
現場管理の役員が現場に詰めることになります。
現場の人間はこの役員が嫌いです。
どうなったか?
運営役員と施設のスタッフが対立しました。
結果として現場のスタッフの殆どが退職してしまいます。
その中にはサービスレベルの維持を担っていた中核スタッフも含まれていました。

残された施設はどうなったか?

先ずスタッフが辞めた影響で現場のサービスレベルが落ちました。
リピーターのお客様の来る要因は現場のサービスレベルあってのものだったのでリピーターのお客様は来なくなりました。
よって十分な集客が望めなくなりました。
その後、件の会社でも施設管理担当役員が無能であったことに気付いたかどうかは知りませんが暫くしてその役員はクビになります。

卑怯者の末路

結局、間違えた計算を基にして事業の美味しい所だけ乗っ取ったと思った会社は運営受託する施設の数を意味なく増やしますが、おそらく殆どは失敗して数年して運営受諾事業全てから手を引いています。

そこから更に数年後ブログにこのことでも書くかと思って乗っ取りを仕掛けて来た会社のホームページを見てみると、それが切っ掛けとなったかどうかは知りませんがメイン事業を他社に譲渡して倒産目前となっているのを知って悪は滅びるんだなぁと思って大笑いしました。

ついでに裏切って相手方についた施設も最後は仕方なくオーナー自ら運営していたようなのですが、元々オーナーの運営が上手くいかなくて委託をしているので当然のことながら上手くいかず倒産していることを知ります。
しかし私のいた会社も事業清算の憂き目を見ているので最終的に皆が不幸になるお話でした。

それでは今日はこの辺で