「営業会社」がブラック企業となる理由

社畜 ブラック企業の社窓から


転職活動や就職活動をして内定が決まった先がブラック企業であることを避けたいというのは求職者すべてに共通する願いの一つだと思います。
とは言うものの就職活動をした先がブラック企業であるかどうかというのを見分けるのは非常に難しいです。数々のブラック企業を渡り歩いて来たという全く笑えない経験を持つ悲しい笑いですが、果たして次に就職活動を行った際にブラック企業を避けることが出来るかと問われれば全く自信がありません。はっきり言って次に就職活動を行ってブラック企業に勤務することになっても全く不思議ではないと思っています。
と言ってしまうと何も書くことが無くなってしまうので、今になって思い返してみるとこれは共通点だったなという一つのキーワードが思い浮かんできたので営業職から見てという前提で書いてみたいと思います。

「営業会社」という危険なキーワード

数字を出すことの出来ない営業マンはゴミと同義であると叩き込まれることとなったブラック企業全てで自社のことを語る際に判を押すように出てきたセリフが下記となります。
「うちは営業会社だから」
なので面接の際などに面接担当者から「うちは営業会社だから~云々」と言った話が出たら要注意です。
そしてこの手の会社の創業者が起業した理由は偉くなりたいとか人に使われたくないとかいうクソみたいな理由が多かったのも共通して思い出しました。
いいですか?これを読んでいる読者の皆さんにお聞きします。
今までの経験を思い返してみてください。
「俺は人に使われたくないんだ」
「俺は偉くなりたいんだ」
そんなことを嘯いていた嘗ての同級生、同僚などを思い出してください。
それを聞いて内心でうわぁって思いませんでしたか?
その人達は所謂DQNではありませんでしたか?
そういう人の下で働くとどうなると思いますか?
言わなくても分かりますよね?

「営業会社」とは具体的にどういう会社なのか?

「営業会社」と聞いて社内で営業の立場が強い会社だと思ったのであれば、それは半ば正解で半ば間違いです。
確かに稀に営業の力が強く、営業が現場で収集してきた情報のフィードバックで開発が動き商品力を強くしていくというような会社も存在しているとは思いますが、残念なことに筆者の勤務していたブラック企業の殆んどは単に営業しかいない。もしくは経営層が営業のことを問題のある製品も売ってきて尚且つ苦情が出たら自分で何とかする都合の良い詐欺師兼ゴミ箱のような存在と捉えているかのどれかでした。
そして自らを営業会社と呼称する会社は単に特徴が無いだけであるケースが殆どでした。つまりは同業他社と差別化できるものが存在しないか、もしくは販売代理店で販売する商品は他社から仕入れている。他社から仕入れているということは他の会社も同じ商品を扱える。依って同じ商品を売る他社との違いというのは訪問してくる営業が違うということ位しかないということです。
そういった状況での差別化というのは通常であればメーカーであれば商品力、つまりは開発力。販売代理店であれば総合的な提案力や他社製品と組み合わせて保守サポートを含めたソリューション化等によって差別化を図るべきだと思うのですが、これが出来ない。もしくはやる気がないので「我が社は営業力(だけ)が売りの営業会社である」となる訳です。

利益が出ないのでブラック化する「営業会社」

では、視点を変えてこういった営業会社から提案を受ける側がどう思うのか考えてみます。
顧客側からすると営業力だか消臭力だか知らないけど、同じような商品、サービスを提案してくるのであれば一番安い所に発注しようとなります。そうなると営業力が売りと言いながら実際に行われるのは値段の叩き合い等に終始するケースが殆どです。そして値段の叩き合いが行われることは利益が減少することを同時に意味します。利益が少ないということは人件費に回る資金が少なくなる。人件費が少ないということは人員を雇えない。と言うことは雑務をこなしてくれる事務員さんも雇えないので営業の業務内容に雑務が追加される。結果、営業は売れば売るほど、それに纏わる雑務が増えて帰りが遅くなるが給料は一向に上がらないという地獄の一本道がきれいに整備され悪夢のような循環サイクルが勢い良く回り出してブラック企業の出来上がりです。

月給は社員の定額利用料

では、こういった状況下でブラック企業の経営者が何を考えるか?
残業代を支払わないという前提で社員の勤務時間を増やそうとします。
(営業手当てが固定残業代として支払われているから残業代は発生しないというロジックが多い印象。言うまでもなく必要条件を満たさなければ法律的にはアウトです)
例えば、ライバルのA社は9-17時で7時間だけ働いている。じゃあうちは9-23時で14時間働いて倍の売り上げを出せる。
上記のようなことを本気で考えます。実際そんな状況に陥った営業が行うのは、どっかで適当にサボって帳尻合わせか、本当に言われた通り真面目にやって消耗して能力が発揮出来ない売れない営業になってしまうかのどちらかです。
こういった状況下でも場合によっては売れる営業が出て来るというのが物事をややこしくしている点になるのですが、まぁ普通の人は売れません。そして売れない営業に対して企業の経営者は月給泥棒位に捉えているので、そういった営業はパワハラや嫌がらせ等で退職に追い込まれて行くのがセオリーです。逃げ遅れると更に鬱病を患って引き込もりになるというオマケも付いて来ます。
ですが、こういった状況下でもある程度売れる営業を残して人数を増やすことが出来れば薄利多売で会社全体の売上金額は増えるんです。つまり営業や従業員に分配する給与は上がらなくても営業の数がある程度まで増える。売上高の利益率は低くても、全体の母数である売上高が増えれば利益額は増えるんです。
(ここでは理解しやすいよう営業利益や経常利益等と言わず利益額とします)


創業1年目 営業 10名 売上 100円 利益 10円
創業5年目 営業100名 売上1000円 利益100円

更に仕入れと代金の支払いサイクルが違えばプールされる期間が出来るので会社が使える金額も増えます。


仕入れ代金:100円 販売先の支払時期:販売した月の翌月の末日。仕入れ先への支払時期:翌月末に金額を確定させて翌々月の末日に支払。 

こうすると1か月間ですが1000円が会社にプールされることになります。
毎月平均して1000円前後売れていれば1000円が常に会社の金庫に入っていることになります。

しかし金庫に1000円入っていたとしても退職した人員の補充の為の採用費用や急な支払い、他にも経営者がキャバクラに使い込んだりすると毎月金庫に入っている筈の1000円は確実に目減りして行きますので自転車操業へと陥っていくというのが大体のオチになります。

このようにして仕事は忙しいが給与額は増えない。しかも経営者は社員を月給を支払えば定額利用できると勘違いしているので大した給料を支払うでもないのに売上げを上げろと営業を怒鳴ったり脅したりして無駄に追い込むパワハラ属性がブラック企業に追加付与されることとなります。

以上のように経営能力の無い経営者がブラック企業を作り上げる温床となりやすいのが営業会社であるという見方をして貰うと良いかと思います。

最後に

ここまで書きましたが世間には営業会社と言いつつも収益を上げて、社員に対して給与額としてもきちんと反映している会社も存在します。例えば保険各社等はその例になるのではないでしょうか。
(売れている保険のおばちゃんは驚くような収入を得ています)
こういったきちんと売り上げが給与に反映される会社は売れる営業であれば社内の扱いも悪くないと思います。但し売れない場合の追い込みは相当なものとなることが予想されるため人によってはどこよりも色濃いブラック企業になることも想定されます。
それらを覚悟の上で自分の腕を試したいという奇特な人は兆戦してみても良いのではないかと思います。
まぁ筆者は御免ですが・・・。

それでは今回この辺で