異世界転生ものなるものを書いてみる

異世界にGO どうかしている

大分前からラノベおよびアニメ界隈では異世界転生ものが幅を利かせ、出始めの頃は直ぐに廃れるかと思いきや意外にも手を替え品を替え新作が出続けておりピークを過ぎた感はあるものの定着した感があります。
そこでここはいっちょ乗るしかないこのビッグウェイブにということで、私も何か異世界に転生して富を得てやろうではないかと思い立ったので書いてみることにします。

最近は、さすがに死んだ後に異世界に転生すると、もの凄い能力を発揮して無双するだけというパターンこそ少なくなって来ていますが主人公には大抵プラスアルファとして現実世界の知識を活かして異世界でビジネスが上手く行ったりというようなアクセントの添えられているケースが増えてきたように見受けられます。

そこで私が何か活かせる知識が無いか考えてみたところ、そういえば筆者もエクセルの誰でも取れる資格を持っていたことを思い出します。
そこでこれを活かして一つ異世界ものを書いてみようと思います。

主人公は男で、ブラック企業で飼い殺されてて、心臓発作か何かで死んだら現実世界での記憶を持ち越して異世界に転生して、人気が出なかったら最終回は病院のベッドの上で主人公が目覚めて異世界の記憶は全て夢だったことにして終われば良いでしょう。
完璧ですお兄様。撤退戦略まで策定していれば何も憂うことはありません。

それでは始めます。

やぁ、僕は現実辛夫。
ブラック企業で一日18時間位働いているよ。
給与を時給換算すると高校生の頃にバイトしてたコンビニよりも安くなる気がするけど、冷静に計算しようとすると目に涙が溜まって見えている景色が歪んでしまうので出来ないでいるよ。
あ、上司が呼んでいるので話を聞いてくるよ。
「おう、こら!辛夫。この営業成績は何だ?オマエはいつまで会社に寄生してれば気が済むんだ。嫌ならいつでも辞めて良いんだぞ。但し、その時は今まで無駄に払った給料全部返していけよ」
「ひいい、すいません。暗黒部長、靴の裏を舐めますから許してください」
「そんな汚いものはいらねぇから今日も会社に泊まって、この誰でもやれる事務仕事を一人でやるんだぞ。オマエみたいな寄生虫でもエクセルだけは使えるから会社にいさせてやっているんだということを忘れるんじゃないぞ」
「あのー、残業代とかは・・・」
「なんだ?寄生虫が何か言ったのか?」
「ひぃえ、何でもありません」

まったく、このまえ暗黒部長の棚に買い置きしてあったカップ麺を勝手に食べてから僕に対する当たりが更に厳しいんだよなぁ。しかも部長の奴、犯人は辛夫だろって勝手に決めつけてきたんだ。確かに部長のカップ麺を勝手に食べたのは僕だけど、それはそれとして部長の態度は問題だと思うんだ。もしも僕が犯人じゃなかったから名誉毀損で訴えていたところだよ。
やれやれ、仕方ない。今日も僕と言うスーパープレーヤーが会社で活躍してやるとするか。
まずは猿でも出来るデータ入力を片付けるとするか。
あれっ?おかしいなあ。急に視界が歪んで来たぞ。いつも涙で目の前の景色が霞むことはよくあるけど、これだけ歪むことは無いんだけどなぁ。そう思いながら僕は床に倒れ込んだ。

次の日、会社で倒れて死んでいる僕が発見された。
僕はその様子を見ていた。
何だろう?僕は幽体離脱しているのか?いや、それだと自分の体に戻れる筈だから完全に死んでるから幽霊になったのか?
暗黒部長が第一発見者の掃除のおばちゃんから僕が死んでいるという報告を受けているのが見える。
その報告を受けた部長は会社の皆を集めて「いいか?現実の奴は仕事が好きで勝手に会社に残っていたんだ。いいな」
そう会社の皆に言い聞かせている。
嫌だなぁ。自分が命令した癖に責任逃れにアリバイを作ろうとしているよ。
あ、社長が来た。
「暗黒君、これはどういうことだね?」
「いやぁ現実の奴は仕事が大好きでしたからね。勝手に働いて死んでしまったようです。私は仕事が終わったら早く帰るようにあれほど言っていたのに全く迷惑な話ですよ」
「全くだよ。どうせ死ぬなら、会社じゃなくて、どっかの公園で死んでくれれば良かったのに。またエクセルだけ使えて奴隷に出来る馬鹿を探してこないといけないじゃないか。採用費用がまた無駄に掛かってしまう」
「本当ですよ」

幽霊になっているのに僕は眩暈がした。
僕の人生は一体なんだったんだ。

そして気が付くと僕は異世界で目が覚めた。
ここは何処だろう?
辺りを見回して誰に言われた訳でもないのに気が付いた。
異世界だ。
僕はここでエクセルの技術を活かして都合よく可愛い女の子に惚れられてハーレムを作って過ごすんだ。
神様、僕も幸せになって良いんですね。

ラノベを愛読する僕は自分も異世界に転生すれば無双して夢のような生活が送れるに違いない等と思っていたのだけれど本当に異世界に転生してみると何をしていいか分からない。
そうこうしていると「キャーッ」という叫び声が聞こえて来た。
おっと早速ヒロイン登場ときたようです。
僕は急いで駆け付けると人型の怪物に襲われている女性に出会う。
「どうしましたか?」
「すみません旅の方、ゴブリンに襲われているんです」
これはついてる。いきなり可愛いヒロイン登場キターッ!敵もドラゴンとか何かそこら辺の強面が出てきたらどうしようと思っていたらゴブリン。最弱のザコキャラが相手なら丁度良い打ち頃って奴ですよ。
さっそくゴブリンをぶっ殺そうと立ち向かうと、ゴブリンは手に持つナイフで僕の腹を刺してきた。
血がどくどくと流れて辺りを真っ赤に染める。
しかし僕の持つエクセル能力をもってすればこんなものは直ぐに回復してしまう。
それじゃあPCを開いてエクセルアイコンをダブルクリックしてって、アレ?PCが無いぞ。
遠ざかる意識の中でキャーッという悲鳴を上げて遠ざかっていく足音を聞く。

神様「やっぱり、いくら現実世界の能力を持ち越せてもエクセルじゃ無理だったかな?」
助手「って言うか辛夫君、腹を刺された傷。エクセルでどうする積りだったんですかね?それよりも神様、まずエクセルを使うならパソコンを用意しないといけませんよ」
神様「それは分かってたんだけど、うーん、やっぱりパソコンを用意すると世界観がちょっとね」
助手「神様、パソコンが使えない世界でエクセル使いの人間を転生させてどうするつもりだったんですか?」
神様「そこは、なんか、ほら、エクセルのメソッドだけを抽出することで何か凄いことになるかと思ったんだよ。まぁ、でも、元がバカだとどうしようもないか」
助手「そうっすね」
二人「アハハハハハッ」

おしまい。

やっぱり現実世界の知識があれば良いとは言っても、何でもあれば良いって訳じゃないんですね。

それとエクセル異世界転生は既に存在してました。
人間の想像力って凄い。

それでは今日はこの辺で