読書感想「カラマーゾフの兄弟」 ドストエフスキー (著),‎ 原 卓也 (翻訳)

陰鬱な曇り空 徒然日記

ドストエフスキー最後の長編

作家:フョードル・ドストエフスキー

1879年 文芸雑誌『ロシア報知』で連載開始
1880年 単行本が出版

この作品が僅か1年で書かれていることに驚きます。

後期五大長編作品の最終作。
残りの四編は「罪と罰」「白痴」「悪霊」「未成年」

他に作家の村上春樹も総合小説とこの小説を称えています。
作家として最後の作品がカラマーゾフの兄弟という出来すぎな展開に驚きます。
事実は小説よりも奇なりというのは本当です。

作品の感想

この作品の中の凄い所というか総合小説と言われる所以だと思うのですが、
一つの作品の中に違う作品が出来てしまいそうな要素が入り込んでいて飽きの来ない作りになっている。
特に大審問官の章はあれだけで大長編が書けてしまうのではないかと思う程に密度は高い。
しかも、この作品は2部構成になっており、これが終わった後もまだ続くかもしれなかったのである。
残念ながらその前にドストエフスキーが亡くなってしまった為に結局それは為されないままに終わります。

但し、それは言われなければ分からない位に完成度は高い。
ドストエフスキーはこの作品を完成させた数か月後に死去してしまうのですが、
家族に看取られながらのものだったと聞くと
彼の波乱万丈の人生と作品に出て来る破滅的な登場人物達のことを思うと、
それは僥倖であったのかもしれないとも思います。
ただ、一ファンとしてはカラマーゾフの兄弟の続編も読んでみたかったですね。

話を戻して作品の内容は、
簡単に言うと血の繋がりによる呪いとでも言えばいいのかもしれない。
どうしようもない父との繋がりを断てず挙句にその父と同じ女性を奪い合ったり、
それに乗じて父の子供かもしれない者がその男を殺してしまう。
その罪を着せられた長兄ミーチャ、次兄イワンの父を恨んでいた為に巻き起こる自分が殺してしまったのではないかと錯覚しての混乱。
それは父を殺した男の告白と自殺により更なる混迷に陥っていくのですが、
その様は正に圧巻。

父と子。それは決して覆す事の出来ない事実である。
血の繋がりを断つ事は出来ない。
それが例え、どんなに憎み、軽蔑すべき人物であったとしても。
常にその事実は自身に纏わり付いて離れる事はない。
しかし、その呪縛に捕われてはいけない。
人への想い。
女性への愛についても同様である。
それらに縛られてはいけない。
上手くは言えないけれど、そういった話であったのかもしれない。

総合小説の誉れの通り複合的な物語であり今の自分ではまとめきれないのですが読書好きなら一度は読んでみて欲しいと思う作品です。