「忍耐は消耗する」

それでは前回に引き続き「ファスト&スロー」ダニエル カーネマン著をの第3章の怠け者のコントローラーを読んでのものとなります。

タイトルからすると自分も怠け者なので、これを容易に正してくれて人生の成功者の階段を登らせてくれそうなタイトルに見事に釣られてみた訳ですが、まぁ、人生はそんなに甘くないというか世知辛いことが分かりました。

先ず、人間の制御が二つのシステムで為されていると大まかに分けます。
システム1・・・直感の部分
システム2・・・集中、計算、感情の抑制といった制御部分

制御するということは消耗する

仕事などで困難な問題に集中して対処していれば疲れて本能的に甘いものが食べたくなります。取り分け感情を制御したり集中して計算などを行う行為はぶどう糖を消費する為に体が甘いものを欲しがります。しかしダイエットをしている最中であれば、甘いものを摂取する選択はシステム2の制御の部分が働き拒否される筈なのですが、この制御の部分が疲弊している場合、ダイエットしているから止めておけという命令に対して甘いものが欲しいというシステム1の直感による要求が勝っている場合は甘い物を摂取する選択が取られます。しかし、ここで、もし強い意志で甘い物を拒んでも、再び困難な仕事が発生した場合には制御の部分が消耗されているので付随する計算などを行う機能も低下しているために失敗しやすくなるという罠が仕掛けれています。世の中は本当に罠が一杯です。

ついでに甘い菓子とサラダのどちらを選ぶかを聞き、甘いものを選択した人に甘い菓子を見せながらサラダを食べさせるとより早く消耗するという実験結果も出ているそうです。個人的には何と恐ろしい実験を思いつくんだ。鬼か?等と思うのですが、甘いものを我慢して食べたい食べたい等と念じながら仕事を続けていると、この食べたい欲求を抑える為に制御部分が疲弊するという人体による罠です。まぁ、そこまで欲しいならさっと食べてしまって仕事に集中した方が良いということのようです。

さて、ここまでだと疲れたら甘いものが良いのね?で終わりそうなのがですが、まだ続きがあって、この制御部分は計算などの頭脳労働だけではなく感情を制御したり、肉体の制御にも一役買っているようなのです。
これも実験結果があり、被験者に感動的な映画を観て感動しても感情を表に出さないよう努力させた後に、握力計を握り続けるよう肉体的な持久力をテストすると映画を見せる前よりも肉体に忍耐を強いる制御が消耗されている為にテストの数値が悪くなるのだそうです。
他にも疲れていると怒りやすくなるのも感情を制御する力が弱まっている為であるそうです。

休憩による回復は必要

やはり疲れている時は甘いものでも口にして休憩を挟むのが自分にとっても周りにとっても良いようです。疲れていると感情が抑えられないので怒りやすくなるは疲れて物事を考えられなくなるはで碌なことがありません。
なので夫婦で相方が疲れていそうな時は放っておいて食事やお風呂に入れてやった後の疲れが取れたタイミングで夫婦のコミュニケーション等を取るのが良いのかもしれません。

他に怖いのは例えば大きな仕事があって上手く行くだろうかと不安になって考えすぎると本当に上手く行かなくなるそうです。これは心理的な不安から制御部分が消耗してしまうからのようです。だから不安になって答えの出ない考えにはまり込んでしまうような人は本番にベストパフォーマンスを発揮できない可能性が高くなり、それに比べると明日の事は明日に考えれば良いや的な楽天家の方が良い人生を送れるようです。
(本番の準備が終わっている人を前提条件として)

消耗が及ぼす影響について

イスラエルで実験が行われました。
内容は仮釈放の申請書類を審査する8名が行った審査結果を計測するというものです。
前提条件として審査結果は基本的に却下するものとします。

結果
・申請の許可率が一番高いのは休憩直後
・休憩直前の許可率はゼロに近くなる

書類を審査するには注視して強い集中が必要になるので作業には消耗が伴います。しかし審査は却下が前提なので本来なら許可する書類を却下しても彼等に責任が求められる事はありません。
つまり彼等の負担が一番少ないのは申請を却下する事である為、疲れて消耗している休憩直前は却下率が高くなるようです。
逆に始業直後か休憩直後は消耗していないため許可率は高くなります。

これも実生活で活かすなら、会社であれば稟議を出す為に上司にお伺いを立てるタイミングとしては朝一番か午後一番の休憩間近が一番良く、最悪のタイミングはお昼直前か夕方位で、この時は上司も一番消耗しているタイミングなので考えるのが面倒な為に否決される可能性が高くなると思われます。更に怒りやすい上司だと疲れで感情が制御出来ないので馬鹿なことを言うなと怒られる可能性まで出て来るので踏んだり蹴ったりとなる可能性が高まります。やはり仕事が終わったらさっさと帰るに越したことはありません。

感情の制御は重要

考えてみると自分の感情を制御出来るかどうかというのは大きな問題です。これが出来ないと世の中では怒りっぽい厄介者として扱われる事になり、将来的にはブラック企業の中で黒々と部下や同僚を食い物にして輝くか、それともしたら精々スーパーで試食しちゃいけない刺身を勝手に試食する危険人物として近所のガキから恐れられる位の人物になる公算が高まります。
こういった自分の感情をコントロール出来るかを子供にテストしたところ、このテストの結果の良い人物というのは10~15年後に知能テストも高い数値をマークしたそうです。勉強や新しい物事を習得するというのは、ある程度の困難を伴います。自分の感情を制御出来る人間と言うのはこの困難を乗り切ることで自分の能力を向上させることに成功出来ているケースが多いという事なのかもしれません。

今回のまとめ

自分を制御するという事は消耗を伴う。そして仕事の作業や勉強などは多くの場合は計算したり集中する等の制御を伴う為に消耗する。依って、消耗していることを感じた場合は甘い物を取ったり休憩を挟むことで能率的に動くことが出来るようになる。という割と当たり前の結論に行き着きました。

それでは、皆に幸あれ。

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