無邪気に必要なものを蹴り出す子供

創造性を無くしていく組織

最近、世界の時価総額ランキングで平成元年と平成30年のもので比較されたものを見たのですが、平成元年のランキングでは日本の企業が上位50社の内に32社がランキング。それに対して平成30年のものでは日本企業ではトヨタ1社が35位にランキングされるのみです。栄枯盛衰は世の習いとは言うけれど、ここまで変わるものかと驚きました。この理由は何なんだろう?等と思っている所でファスト&スローを読んでいていくつか思うことがあったので書いてみたいと思います。
(比較表は元が転載禁止であったため興味のある方はリンクをクリックすることで見ることが出来ます。平成元年と平成30年時価総額ランキング

「頭が楽ならほほえみ」というタイトルの論文があります。
実験内容:参加者に静物写真を見せる実験を行う。
写真のうち何枚かは物体の全体像を見せる直前に輪郭だけを示して認識しやすくした。輪郭を示すのは一瞬なので見たことに気付かない。
この時の反応を計測。
実験結果:被験者は写真が理解しやすいと感じると微かな笑みが浮かんだり表情が和らいだりした。

この結果を見てやはり人と言うのは理解出来ると楽しいのだろうなぁと思いました。そして楽しい経験というのは繰り返したいと欲求しますし、それが繰り返されれば習慣となっていきます。
理解できて楽しい→もっと理解しようと追求する→より理解が深まる
以上のような具合でしょうか。

海外の企業で言うとGoogle(アルファベット)などのオフィスは社員がリラックス出来る環境が整えることで社員達が各々が自分の仕事に対して専念して理解を深めて仮定を立てて実行し結果を分析しながら、より効果的な施策を打ち出していくというサイクルを作ろうという試みを行っており、現状ではそれに成功しているのだろうと思います。その中に日本企業にありがちな上司がパワハラ紛いの追い込みを掛けたりといった現象は存在していないように見えます。

現代の仕事は特に創造性が求められているように思えます。例えば製造業であれば以前の少ない品種の製品を大量生産する少品種多量生産では製造コストの低い中国を始めとしたアジア各国には勝てません。その為、商品の単価を高くすることの出来る多品種少量生産へシフトする必要があるのだろうと思います(アップルのアイホンのように高いブランド価値を維持しながら市場を世界に広げることが出来れば話は変わる)。これには何も製造業に限ったことではありませんが新しい価値を生み出すことの出来る創造力の高い人間の力が必要になるのだろうと思うのですが冒頭でも書いた通り今の日本企業の凋落振りを見る限りでは必要な数を満たすことが出来ていないようです。

先にも少し触れましたが日本のマネジメントは下の者に対して懲罰的であるように思います。上司が部下に対してパワハラ紛いの追い込みを掛けたりといった事例を聞くことは企業の大小に関わらず枚挙に暇がありません。その発想の根源には、叩いて伸ばす的なものがあり、またそうして下の者に対して上の者への恐怖を叩き込むことで命令を忠実に実行させようという意図があるのだろうと思います。嘗て筆者も一部上場企業に在籍していたことがありましたが所属した上司が新卒の私についた教育係の先輩に対して「新人教育ってのは部下から恨まれて一人前だ」と語っているのを聞いて恐れ慄いていたら現実はもっと酷くて恐ろしいことを体で覚えることが出来たりしました。

日本はよく昔から縦社会と言われますが、マスプロダクト的な商品やサービスを展開する際には上手く機能していたのだろうと思います。
製品やサービスの計画を立て、それを一気通貫で仕上げる。嘗ての市場は製品やサービスが行き渡っていない状況なので消費者が企業に求めるのは、製品が販売される事。そしてなるべく安い事。という明確なニーズがあったので、提供者側は製品を一度で多く製造しようとします。そうすれば消費者の求める製品を市場に行き渡らせることが可能になり、また大量に作るという事は一つあたりの製造コストは下がることとなり、これも消費者の求める安い製品の提供を行える事に繋がりました。
従って、一回のプロジェクトには持てる費用や人的リソースを多く注ぎ込む事になります。その流れの中で一番重要なのは失敗しないことです。失敗すれば今まで注ぎ込んだ多額の費用や人的コストが水泡に帰すことになるため大前提として批判を受けずに多くの人にベストではなくともベターなものを作り上げることが求められていました。
そのため組織の責任を取る立場にある者はリスクヘッジを重視します。その結果、勝手な考えで行動しない忠実な部下が求められるようになり、自ずから新人教育の方法もその目的に沿ったものとなっていったのだろうと推測します。

しかし、これらは部下の萎縮を生み出し、上にものを言えない雰囲気を作り出して行きます。そして、会社の命令を忠実に実行する、ある意味で創造性を放棄することが求められた新人達もやがて上司となります。しかし今まで創造性を放棄することが求められていた人間が上司になりました。それでは創造性を発揮しますと言って発揮出来るようになるとは考え辛いですし、また部下に対してのマネジメントも今までと同様のものが行われると考えると、気が付いてみれば企業の上層部と下層部の双方共に創造性を持った人間が居なくなり、よしんば未だに淘汰を免れる下層部の創造性のある者が革新的なアイデアを出しても創造性の無い上司から決裁を得ることが出来ず、その為にやる気が削がれるという構造が出来上がっているのではないかと想像します。その為に革新的なサービスや製品を生み出せなくなっている。これが創造性が失われた日本の企業が苦境に立つこととなっている一因となっているのではないかと思いました。

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