日大のタックル問題とはパワハラ問題だったのではないだろうか

割られようとする卵 社会派気取り


最近、日本大学と関西学院大学のアメフトの試合で起きたタックル問題が話題です。

事の始まりとしては2018年5月6日に行われた日本大学と関西学院大学の試合中にクオーターバック(QB)の選手がパスをしてボールを既に放しているにも関わらず背後から日大の選手がタックルを行い相手選手に怪我を負わせた事に端を発しています。

そして怪我をさせた選手に対して相手を潰せという指示が日大のコーチと監督から出たものであるということが判明。後日、関西学院大学が日大に事件の見解を求めたものに対して日大コーチが「指導と選手の受け取り方に乖離が起きていたことが問題の本質」等と説明した辺りから世間の批判は更に厳しいものとなっていったように思います。

この問題について個人的には確かに批判されるべきものではあるもの、そこまで延々と長い時間を掛けてまで追求するものでなく然るべきペナルティ、例えば被害を受けた選手への謝罪と加害者である選手の謹慎等の処分等で十分ではないだろうか等と思っていたのですが、これがコーチから監督の命令として「1プレー目でQBを潰せ」という指示が為されていた事を知り、いや、この問題は一つのラフプレーというものでなく、個人の意思を無視して監督という強い立場の人間がモラルを無視した恣意的な命令を強いるパワハラなのではないだろうかと思い直しました。

タックルを行った選手の状況です。
チームから干されていた。
本人は断りたかった。
コーチの命令を断る事の出来ない弱い立場にあった。

そういった背景を持つ選手本人は記者会見を開き申し開きの場を設けたことでコーチや監督に対する批判は強くなっていきました。
先に述べたように今回のタックル問題をパワハラ問題とするならラフプレーを行った選手は加害者でなく監督とコーチから受けたパワハラの被害者とも言えるからです。
そう考えると世間の見方が彼に同情的なものとなっていったことも理解出来るように思えます。

私個人の見解では今回の潰せという指示は相手選手に怪我をさせることを意図したものであったと考えています。
当該選手が試合から干されている状況下でコーチから「監督から相手のQBを潰せば出してやると言われた。自分からQBを潰しに行くんで僕を使ってくださいと監督に言いに行け」と指示されたという事。
そして試合中に行われた計3回の反則となるタックルを行った後も当該選手が労うようにベンチで迎えられている姿は選手以外の意思が介在している裏付けです。

続いて2018年5月23日コーチと監督が記者会見の場を開きます。
会見の内容についてですが、これは最悪としか言いようのないものでした。
監督とコーチの伝えたことは相手に怪我をさせるという意図は無く、「潰せ」という命令も頑張って試合をして来いという意味であったと言葉遊びに終始していました。
会見の運びとしても司会者が記者からの質問を強引に遮り会見を打ち切るという考えられる限り最悪の終わり方をします。
これは当の本人達も自覚していたようで会見後、監督とコーチ、なぜか司会者も入院。
これは入院することで追求の手から逃げたようにしか見えませんでした。

個人的に見ている限りでは、今回のタックル問題がここまで大きくなった理由は問題の当事者である日大の監督コーチ陣が今回のタックル問題について単なるラフプレーを責める一時的な炎上問題であると捉えていた点にあったのだろうと思います。

しかし今回のタックル問題の本質にあるのはパワハラであり、選手の人格を無視した命令が行われた背景にある構造部分にあると考えています。
つまりは監督から倫理を外れる命令がなぜ出され、なぜそれが受け入れられて複数の人間を介して実行されたのか?
その構造はパワハラが行われる構造と同一のものと思えます。
従って彼等が行うべきであったのは自分の行動の過ちを認める事と責任を取る事です。
更に贖罪を望むのであれば明らかに過ちと分かる命令を防ぐことの出来なかった組織の問題を明らかにすることだけだったと思います。

せめて今回の事件を切っ掛けとして個人の理不尽な命令等によって傷つく人間が一人でも減れば良いと願わずにはいられません。