最近になってカスハラ問題が取り上げられることが増えてきたように思います。
カスハラ(カスタマーハラスメント)とは、簡単に言えば「お客による嫌がらせ」とでもなるでしょうか。
筆者が見た例で言えば、牛丼チェーンに入ってみたらお客と思われる男性が「早く本部の奴を寄越せ!!」と大声でお店の店員さんに怒鳴り散らしているという場面に出くわしたことがあります。
男性と店員さんとの間の細かい経緯は分かりませんが聞こえてくる会話から推測すると店員の接客態度が悪いという理由から苦情へと発展した様子でした。無関係な私から見れば安さが売りの牛丼チェーンで接客も何もないだろうと思いながら、いつもより不味く感じる牛丼を食べた記憶があります。
前述の通り、詳しい経緯を知ってはいないのですが金額で言えば千円以内で収まる店で高級レストランのような接客を求めるのは無理があります。
言うまでもないことですが、高級レストランであればサービス分も料理の値段に含まれている為ある程度のサービスが受けられると思います。
しかし牛丼チェーン店となると料理の料金の中に含まれるサービスに対しての割合というのは前者と比較すれば低くなりますので受けられるサービスの質もその料金に見合ったものとならざるを得ません。
従って、そういったチェーン店で苦情を述べるとすれば、例えば注文した料理とは違うものが提供されたり料理の提供自体が為されない、もしくは虫が入っていたり衛生的ではない等に限られてくるのではないかと思います。
接客態度で苦情を述べるなら「おらよ、次はもっと高いもん頼めよ貧乏人」等のありえない暴言を吐かれるといった余程のことが無い限り、チェーン店で度を過ぎた苦情を述べるというのは関係ない人間から見る限りカスハラに明け暮れる経済の仕組みを知らない思い上がった頭の残念な人か、精神に異常を来した可哀想な人、もしくは社会から居場所を無くしてしまったご老人、それともしたら店にいちゃもんを付けて金をせびろうとする食い詰めたチンピラ位にしか思われません。
因みに前述の牛丼チェーンでカスハラに勤しんでいた人を、筆者は経済の仕組みを知らない精神に異常を来した可哀想な人と思って見ていたのですが、同時にこういった人達と対することを避けることの出来ない店員さんは本当に大変だと同情します。
おそらくですが店員さんの側から見たら(おいおい、たかが500円しない牛丼に接客なんか期待すんじゃねえよ。なんでこの時給でこんな頭のおかしいデブの相手なんかしないといけないんだよ)と内心でうんざりしているのではないかと想像するのですが、まさか本当に口に出してしまえば、今度は本部から店員さんの側が非を責められて懲罰対象に入ってきてしまうであろうと考えると少なくとも表面上は丁重に扱わなくてはならないので大変です。
なぜこんなことが起きるかと言えば日本人には「お客様は神様です」という言葉が刻み付けられており、自分が一円でもお金を支払えば神になれると思っている節があります。この言葉も正確に言えば、お客様というのは店に対して利益を齎してくれる方に限る話であって、それ以外の人間というのは例えお金を支払っていたとしても店にとって利益が出なければお客様ではなくお店で幾ばくかの支払いをしてくれた人以外の何者でもありません。
ここで気付いて欲しいのは、お客の側と同じく店の側にも権利のようなものがあり、実は顧客と企業というのは取引を行う対等な関係であるということです。
言うまでもなく僅かな例外を除けばお店の殆んどは営利企業です。
顧客の側から申し立てられる苦情が正当なものであれば、その改善に真剣に取り組むべきですが、それが行き過ぎたものであれば拒否するべきです。
カスタマーハラスメントに勤しむクレーマーに運悪く出会ってしまった際に費やされる時間というのは数時間に及ぶこともあり、更に運が悪ければそれが数日に渡って続く事もあると聞きます。
東京都でアルバイトの平均時給は1105円(2019年10月現在)。つまり言い掛かりに近いクレーマー客一人に対してお店が東京都にあれば1時間につき最低で1105円の支払いが生じていることになります。これが数日に及ぶならこのコストは更に跳ね上がることになります。
冒頭で筆者が見かけたクレーマー客について言うと店員さんがクレーマーの対応に1時間程度の対応が既に生じていたと仮定し他に本部から呼び出される要員が1名と考えると、
単純計算で
チェーン本部要員1名が、
移動時間が片道1時間の往復で2時間+対応で1時間
合計3時間。
店員さんが、
クレーム発生対応1時間+本部要員の待ち時間1時間
両名合わせて
時間消費が合計5時間。
金額換算すると
拘束時間5時間×東京都平均時給1105円=5525円。
(本部要員の給与を時間計算すると更なる金額が掛かると思われますが、ここではアルバイトの平均時給で計算)
以上が牛丼一杯で生じたと思われるクレーマー対応の為にチェーン店が支払うと思われるコストになります。
店舗側からすると1名のクレーマーに対して、これだけのコストを支払ってまで本当に対応する必要があるのかどうかというのは一度検討されてみても良いのではないかと思います。
とはいえ実際に自分が苦情を申し立てたくなるケースも出て来ると思うので次は自分が苦情を申し立てる場合です。
我慢は体に悪い。店から受けた仕打ちを思い出すと夜も悔しくて眠れないといった怒りを感じる事もあるかもしれません。そこは金額の多寡ではなく感情なのだ!!と憤る方もあるのかもしれません。
それが店側に起因するものであれば遠慮なく一度は言葉にして言ってみても良いのではないかと思っています。もちろんそれは節度を持った態度と言葉で行うべきとは思いますが、そうすることで誤ったお店の対応が改められるなら、それはお店側にとっても利益となるからです。
次に店側から然るべき対応が為されなかった場合です。
これも筆者の例となり某牛丼チェーン店の話になるのですが、注文した牛丼が出された後に仕事の電話が掛かって来たため店舗内では迷惑になると考え、食券で料金を支払い済みであったことから食い逃げの疑いは持たれないだろうと持っていた鞄を席に置いて店の外で対応して戻ってみたら殆ど箸を付けていない牛丼が下げられていたことがありました。店員にそのことを言うと「食券をお買い求め下さい」と取り付く島もありません。
どうしたか?
それ以来その牛丼チェーンには出来る限り行かないようにしています。
筆者はホテル運営に関わっていた時期がありまして、その時に学んだことの一つに運営側の落ち度に対して苦情を言ってくれないお客様というのが会社にとって一番のマイナスになるというのがあります。
そういった上品なお客様というのは大抵の場合は二度と来て下さいません。
飲食店に限らずホテルもリピーターのお客様の売り上げは大きな部分を占めており、この人達の存在なくして存続はありえません。
筆者の牛丼チェーンの話で言えば、それまで週に一度は行っていたものが殆ど皆無になったので、そのチェーン店に生じた売上のロスというのは年間で2万円弱程度になり、これを10年ほど継続しているので大体20万円程度の売り上げが失われたことになります。
(いま気付いたのですが筆者は牛丼を食べ過ぎかもしれません)
このように自分が店の不手際によって被害を受けたり気分を害したといったことがあった場合に正当な苦情というのは一度はきちんと申し立てるべきです。
その際に不誠実な対応がされた場合は店に行かなくなれば店側にとって一番効果的なダメージを与えることになります。
そして自分が実はカスハラ上等のクレーマーに気付かずになっていた場合、その場合はお店にとって余計に掛かるコスト削減となり、この場合はお店にとってプラスとなるのです。
ね。一番効果的でしょ。
それでは今回この辺で