パワハラは教育の為に必要で、それで鬱病になる者が出たり自殺者が出たとしても、それは被害者達が弱い人間として組織から淘汰される必要があったのだと正当化されていた側面があります。

三菱電機の場合はパワハラによって2012年から2020年の8年間で5名の自殺者が出ており内一件は加害者が書類送検されています。その人物の役職は教育主任です。
主任ということは少なくとも上長として課長はいる筈です。パワハラが日常業務の中でも行われていたと考えると上長もパワハラが行われていたことは知っている筈です。
そういった状況下で社内で自殺者が出る程のパワハラが行われ続けてきたということは、それが珍しくない光景であったということです。それは会社がパワハラを排除しようとせず黙認していたということでもあります。
それどころか非公式で奨励されていた可能性すら考えられます。

なぜなら自殺者5名の内2名は月に100時間を超えた長時間労働によって労災認定を受けています。

三菱電機は2012年以降、月100時間を超える残業などが原因で6人の労災認定者、5人の自殺者を出している(1人は子会社社員)

ー東洋経済ONLINE「三菱電機「8年で自殺5人」何とも異常すぎる職場」より引用

普通に考えれば月に100時間を超えるような長時間労働をしたいと自ら望む人間は稀です。
となればパワハラによって怒鳴りつけたり叱責される等して長時間労働を強いられていたかせざるを得ない状況に追い込まれていたと考えるのが普通です。
更に表面化していない長時間労働を強いられている人間が多数存在していると考えると今まで自殺者を出した者は加減を知らない人間であるとマイナス査定こそ付けられたとは思いますが、他の自殺者を出さない程度のパワハラを行っている者は会社から部下を上手く使うことが出来ていると評価されている可能性が高い。
両者の評価の分かれ目は生かさず殺さずの加減が上手いかどうかです。
実際に自殺者を出して書類送検となった教育主任は過去にも会社から注意を受けています。そういった経緯があるにも関わらず会社から再び新人の教育係として1対1であたって「殺すぞ」「自殺しろ」等の暴言がされている点から見ると会社がパワハラを重大視していなかったことは間違いなさそうです。

三菱電機の20代の男性新入社員が自殺し、兵庫県警が自殺教唆容疑で教育主任の30代男性社員を書類送検した事件で、教育主任が過去に暴言を吐くなどして会社から注意を受けていたことが18日、遺族の弁護士などへの取材で分かった。

ー2019年12月18日 「教育主任が過去にも暴言 三菱電機、再発防げず:日本経済新聞」より引用

長時間労働の弊害を除外して単純に普通の上司とパワハラ上司の労働時間を比較してみます。
普通の上司の部下が月に平均労働160時間(1日8時間×20日)
パワハラ上司の部下は月に平均労働160時間+残業100時間=合計260時間労働
課員5名と仮定すると
普通の上司は月に800時間の労働力
パワハラ上司は月に1300時間の労働力
以上のように長時間労働のマイナス効果諸々を考えず労働集約的なものとして比較すればパワハラ上司の方が普通の上司の1,6倍の仕事量をこなせます。

仮に三菱電機のマネージャーが全てパワハラ人間であると仮定してみます。会社の連結従業員数は145,653名です。
(三菱電機会社HP企業情報より)

従業員数(145,653)×100時間=14,565,300時間
14,565,300時間÷160(従業員1人の月平均労働時間)
=91,033.125人分
月に凡そ91,000人分の労働力を上乗せ出来ます。
そして実際にパワハラ上司の方が実績を出していることが多いのだと思います。そう考えるとパワハラ上司は会社から評価を受けて上層部に相当数存在している可能性が高い。これが会社からパワハラを完全に排除できない要因の一つなんだろうと見ています。
少なくともマネジメント層から見て過去の自分の正当化の為にもパワハラを熱心な指導として好意的に捉えていたのは間違いなさそうです。
そうでなければ労働問題が原因として8年で5名もの自殺者が出るとは考え辛いです。

そして技術というものは洗練されていきます。
部下をパワハラする。
そのパワハラを受けた部下も自分の部下にパワハラをする。
こうして受け継がれたパワハラはより洗練されて相手に大きなダメージを与えるようになる。

そこで一つの疑問が湧いてきます。
なぜ自分がされて苦痛であったパワハラを部下に行うのでしょうか?

その問に対してアンナ・フロイト(「精神分析」の著者であるフロイトの娘)の行っていた研究が一つの答えになりそうです。
「攻撃者の同一化」
これは虐められていた子供が虐める子供になるようなことを言います。
上司からパワハラを受ける。
それを認めることは自分が為す術もなく上司から攻撃される弱い対象であったという事実を受け入れることです。
決して自分は弱い存在であったと認めることは出来ない。そういった上司の攻撃に為す術なく攻撃されていたという事実を乗り越える為に自分も部下を攻撃することで乗り越えようとする心の防御機構のことを「攻撃者の同一化」と言うのだそうです。

三菱電機にとってもパワハラをする人間が再生産されることは労働集約的な業績は上がるというメリットがあります。

恐らくですが三菱電機にも初めパワハラをする上司が一人いたのだと思います。
その人はパワハラを行使することで部下を洗脳して使い潰しながら出世して同じようなパワハラをするようになった嘗ての被害者である部下を「昔は俺があいつを育ててやったんだ」等と言って引き上げることで自分が今まで行ってきたパワハラを正当化させて更にパワハラを社内に蔓延させていく。
そう考えると一番悪いのは最初のパワハラ人間を放置した上司なんだろうと思います。

続いてパワハラを受ける被害者側の事情です。
三菱電機は一流企業です。
その中で働く社員も一流大学を出て、その中でも特に優秀と言われる層が集まっているであろうことは想像に難くありません。
ということは幼少の頃から努力を積み重ねて来た自信と自負も相当なものである筈です。
それがパワハラを受けて歪み元からあった能力の高さから自分が受けたパワハラをより洗練させて自分の部下に行っていくという負の再生産が存在していると考えると、努力とは必ずしも正しい結果を齎さないということが分かり何とも遣り切れない気持ちになります。

加えて人間には反抗心があります。
そういった攻撃というのは表面的に暴力を振るったり批判するなどの表に出て来るものばかりとは限りません。
受動的な攻撃というものもあります。
例としてあげれば結婚して妻が嫌な家事をサボタージュすることで夫に対して被害を与える等がこれにあたります。
これは無意識に行われることも多いそうです。
このように嫌な仕事を押し付けられてミスや失敗を繰り返すことで仕事を押し付けてきた者に復讐するケースもあるということです。
これは完全な推測ですが三菱電機では検査不正が続いています。これは不正が露呈することで今までの上司が処分されて復讐になるという側面を理解した上で進めていたのではないかとも思うのです。

同社の冷熱システム製作所(和歌山市)が製造したビルや店舗などの大型施設に使われる業務用空調について、最終検査工程に使う装置が断線による故障で正常に作動していなかった。具体的には、絶縁抵抗試験と耐電圧試験が常に合格になる状態となっていたという。

東洋経済「三菱電機、再び不祥事「変わらぬ後手対応」の唖然」より引用

名古屋製作所では米国の安全規格であるUL規格に適合していない電磁開閉器関連製品を、長崎製作所では鉄道車両の空調装置などの検査不正が発覚していた。今回の調査により、新たに名古屋製作所で4件、長崎製作所で4件、合計8件の新たな品質不正が明るみに出た。

「三菱電機、新たに8件の品質不正が発覚 名古屋と長崎の製作所」より引用

パワハラは部下を力で押さえつける行為でもあります。
パワハラを行う者が評価されている会社であるということは上の人間に対して下からものを言うことが出来ない組織となっている公算が高い。
そうなれば仕事の責任や失敗も上から下の人間に対して押し付けられるようになりますから構造的な問題によって生じた社内のミスが起きたような場合には隠すか黙っているかになります。正直に報告すれば責任を押し付けられて詰め腹を切らされるか解決することの出来ない問題を押し付けられるかの何れかになるからです。
その結果が三菱電機で続く検査不正なんだろうとも思うのです。

三菱電機側でも労務問題の再発防止に向けた取り組みを開始しています。
この取り組みについて三菱電機のニュースリリースを見たのですが、残念ですがこれを見る限りでは労務問題を解決させるのは難しいのかもしれないと感じました。

そこには自殺した社員に対して下記のように書かれていました。

「当社および関係会社において社員がお亡くなりになるという痛ましい事案が発生しました」

(「三菱電機株式会社 ニュースリリース「労務問題の再発防止に向けた新たな取り組みについて」)より引用

通常は社員に対して敬語を使いません。従って「亡くなった」が正しくなると思うのですが、こういった書き方を見ると、自殺して亡くなられた方は社外の人という捉え方なのだと感じました。
もちろん当該社員の方は鬼籍に入っているので厳密に言えば会社からは籍が外れていることになるので間違えている訳ではないのですが、会社の問題で自殺した弱い人間は社員ではないと言っているようにも見えました。それは風聞で聞く三菱の社風と一致しており、こういった所からも社内の様子というのは窺い知ることが出来るものなのかと驚いています。

そして三菱電機で言う労務問題の解決については総務もしくは人事で行われることになると思うのですが、パワハラをする人間が評価されてきた歴史と言うのは昨日今日の話でなく大きく時間を遡った先から行われ続けて来ていたと考えると現在の上層部はパワハラを続けてきた人間である公算が高い。
労務問題を解決しようと下から働き掛けても上層部が反対すれば成功しません。
そしてパワハラによって部下を使い潰して成功してきた人間であれば今も同じ手法を取っていると思われるのでパワハラが行われなくなれば実績を出せなくなります。
その際に実績を出す一番安易な解決方法は形を変えて同じことを続けることです。
そうでなければ他のクリーンなマネジメント手法を取ることですが、そこで湧いてくるのは今までパワハラで強制的に働かせてきた人間が今さら他の手を使えるのか?という疑問と上層部にまで成り上がった人間が今までの自分を否定することが出来るのか?という単純な疑問です。

今回のパワハラ問題については三菱電機の社員の持つ優秀さがマイナス方向に強く働いた結果であって、これを正しく方向転換することは本気で変える気があるなら可能だとも思います。
同様の問題を抱える企業が他にも多く存在していることも間違いありません。
三菱電機に能力のある人材が揃っていることは疑いようがありません。問題はパワハラを行使することによって現在の地位にいる上層部を否定する行動を容認するほど本気であるか、詰まりはしがらみを克服出来るかどうかに掛かっているように思えます。叶うなら他の企業にもパワハラ以外にも成果を出すことの出来るマネジメント手法があるのだと証明することで道筋を示して欲しいというのが私の願いでもあります。

そんなことを思ったので今日は書いてみました。

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投稿者: 悲しい笑い

新卒でいきなりブラック企業に入社してから数々のブラック企業を渡り歩いた途中でどさくさに紛れて営業マネージャーをやったり新規事業の立ち上げ等を行っていました。 投稿はその都度、興味の湧いたものを書いています。