知事が警察に対して持つ権限について

交番 社会派気取り

川口市はクルド人問題もあり市民から治安についての不安が訴えられています。
そんな川口市ですが犯罪件数は減っているのだそうです。

実は治安の良い川口市(笑)
出典:川口市・埼玉県・全国 刑法犯認知件数 川口市役所

川口市民としてホンマかいな?と思いました。

下記の図式があります。
犯罪認知件数≠発生犯罪件数
犯罪認知件数=被害届

川口市の言う犯罪件数とは認知件数のことです。
これは単に被害者からの訴えを警察が無視して数字が良くなっているだけなのでは?という疑惑について前回も書きました。

埼玉県警は機能しているのだろうか?

埼玉県議会でも主に川口市で発生しているクルド人問題に伴って警官の負担率が高いことについて不安視されている向きがあり質問が出ています。

(仮称)川口北警察署となる市内3番目の新設が令和8年度に向けて、設計が今年度より始まっておりますが、川口市の治安情勢は刑法犯認知件数が県下有数であり、川口市内の所管する令和5年犯罪件数は、前年同期比で約30パーセントも増加しております。
埼玉県の警察官1人当たりのカバー人口が令和4年度は636人で、14年続ワースト記録。お隣の東京都警視庁は322人と実に埼玉県の2分の1と、埼玉県警の警察官は日本一高い負担状況で働いているわけであります。

引用:「令和5年6月定例会 一般質問 質疑質問・答弁全文(白根大輔議員)」-埼玉県議会より

そんな中で恐喝メールの告訴状の受付を拒否されたという事案が起きます。

【埼玉県警の怠慢について】
私が受けた恐喝メールの件について、川口警察署に告訴状を提出しに行きました。
話は聞いて頂けました。「恐喝=実害」にも関わらず、刑事課警察官は「実害がないから捜査出来ない。」とのこと。
告訴状の受理は断られました。は?

「松本克也 Against PKK@川口市からリコールする人」-Xより

私を恐喝した人物は、警視庁により逮捕されました。

「松本克也 Against PKK@川口市からリコールする人」-Xより

しかも管轄の埼玉県警でなく警視庁により逮捕されるという失態・・・
埼玉県警は警察機能を果たしてきちんと機能しているのか?という疑問を抱くには十分であるように思います。

知事は都道府県警に何も出来ないのか?

埼玉県警の現状について県行政の長である知事の大野ともひろ氏は自分に関係ないと思っているようです。
(この人も調べたら出身は川口市なんですよね・・・)

知事が警察に対して出来ることは全て行った
出典:「大野もとひろ知事」Xポストより

このポストに対して速攻でツッコミが入ります。ビバSNS!

知事から独立ってどういうことだよ
出典:「ねこのすけ氏のツッコミ」Xポストより
警察と公安委員会の関係
出典:「公安委員会制度」- 警察庁
独立(どくりつ) とは?
出典:「独立」の意味- goo辞書

知事から県警が独立してるってどういうこと?
独立という意味が分からないんですか?
それとも埼玉県の治安は知事に何の責任も無いという責任逃れですか?的な皮肉と私は解釈しました。
素晴らしい!

大野知事からの回答
出典:「大野知事の回答」Xポストより

それに対して大野知事は官僚出身の人らしく警察の上に公安委員会があるが、そこに対して権限がないので何も出来ないと面白くも何ともない返しを述べています。
個人的な感想は「じゃあ県知事なんか辞めちまえ!」ですが、本当にそうなのでしょうか?

組織図を見ると確かに知事は都道府県警察に対して直接の指揮命令権を持っていません。

ですが知事は警察への予算を握り公安委員会を所轄しています。

所轄とは
指揮命令権のない監督であって指揮監督より更に弱いつながりを示すとありました。
どうも曖昧ですね。

そこで警察法を調べてみると下記の法令がありました。

2都道府県知事は、委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合においては、当該都道府県の議会の同意を得て、これを罷免することができる。
「警察法第42条」

このように知事は都道府県公安委員会の任免権を持っています。

それでは埼玉県公安委員会のメンバーを確認してみます。

埼玉県公安委員会メンバー 2024
出典:公安委員会のプロフィール 埼玉県庁

加村 啓二氏は弁護士なので法的な部分から警察とやりあえそうではありますが他はどうなんだろ?

都道府県公安委員会とは?

それでは公安委員会の役割とは何なのでしょうか?

都道府県には、都道府県公安委員会が置かれ、都道府県警察を管理しています。

引用:「警察のしくみ」-警察庁

警察を管理しているとありますが、よく分からないですね。
具体的に何をしているのでしょうか?

都道府県公安委員会は,月3~4回程度の定例会議を開催し,所掌事務に属する事項について,審議,決裁 を行うほか,重要な事件,事故及び災害の発生状況とこれらに対する警察の取組みや,治安情勢の中長期的傾向とそれを踏まえた警察の施策等様々な警察の業務について所要の報告を徴し,指示等を行っている。

引用:「第9章 公安委員会制度と警察活動のささえ」-警察庁より

警察から重要と思われる事件等について公安委員会に報告を行い指示等を行っているようですが、細々とした事件の報告は受けないでしょうし寧ろそういった所にこそ問題のある事件が紛れているのではないかと懸念します。

ただ警察庁の方でも警察の不祥事については頭を抱えている様子が下の引用から窺えるように思えます。

最近起きている一連の不祥事案の反省に立ち、警察における監察が自浄機能を果たすよう警察庁、管区警察局及び都道府県警察の監察体制を強化し、苦情処理や監察など組織の静脈を動脈と別個の指揮命令系統として確立するとともに、警察の監察を市民の代表である公安委員会がチェックする機能を抜本的に強化することが必要である。

「監察、公安委員会及び苦情処理の在り方」-国家公安委員会より

ウ 都道府県公安委員会が必要あると認めるときは、警察職員(警察庁・管区警察局の職員を含む。)を監察調査官に任命し、具体的・個別的な指示に関する監察の遂行状況の調査を補助させることができることとする。

「監察、公安委員会及び苦情処理の在り方」-国家公安委員会より

公安委員会は警察の管理を行い、その業務の中に監察も含まれ警察が機能しているか調べる権限を持っています。
しかし警察という専門組織を専門外の人間が調べられるかどうかと言えば実際問題として難しい。
その為に都道府県公安委員会から要請があれば警察庁から人を要請することも出来る。

あと事例は無いのか調べてみたところ実際に個別に監察の指示を出しているものがありました。

また、都道府県公安委員会は都道府県警察に対して、監察について必要があると認めるときは具体的又は個別的な監察の指示をすることができ、これまで、神奈川県公安委員会(13 年4月)及び奈良県公安委員会(同年7月)が、警察職員による不祥事案の発生に際して各県警察に対し監察の指示を行ったほか、予算執行に関する不適正事案の発生に際して、北海道公安委員会(16 年3月)
及び福岡県公安委員会(同年4月)が、各道県警察に対し監察の指示を行った。

引用:「警察の組織と公安委員会制度」警察庁-より

これらを見ると埼玉県公安委員会は埼玉県警に対して、実際に告訴状の受け取りを拒否した事案と必要な被害届の受け取りを拒んでいる件について、その気になれば監察対象とすることが出来ます。

また苦情の処理として公安委員会がチェックするようにもなっているようで、この点については良かったと喜んだのですが落とし穴がありました。

3 苦情処理システムの整備
警察・公安委員会に対する文書による苦情申出については、公安委員会に集約するシステムを確立し、その処理結果を文書で通知(回答)しなければならないものとする。

上記措置により、市民の苦情が警察限りで処理されることなく、公安委員会のチェックを受けられるよう図る。

引用:「監察、公安委員会及び苦情処理の在り方」-国家公安委員会

文書の中に電子メールやファックスは含まれないようです。
下記の引用は京都府警のものですが他も概ね同じようです。
(埼玉県警については明記されたものがありませんでした)
しかし時代錯誤なやり方で警察の保身の為の措置なのかと勘繰ってしまいます。

警察法に規定する苦情以外の苦情 公安委員会を名あて人とする前号の警察法に規定する
苦情には該当しない苦情(電子メール・ファクシミリによるものを含む。)をいう。

引用:「公安委員会に対する苦情等の申出に係る事務の取扱いに関する訓令」
令和4.5.27 京都府警察本部訓令第11号-京都府警より

公安委員会を罷免するには知事の調査が必要

公安委員会の役割は県警の管理となり監察も含まれます。
埼玉県公安委員会は監察を行うべき事案が起きているように思えるのですが、これが行われていなければ公安委員会としての職務上の義務を放棄していると言えないでしょうか?

職務の義務違反が起きていれば当然、罷免対象に入って来ます。
そして義務違反が起きているかどうかは調査をしなければ分かりません。
県知事が公安委員会を調査する権限について明確な規定こそありませんが、県知事は行政の長なので必要な範囲内の調査を行うにあたって規定を設けてしまうと却って阻害することになるとして設けていないと考えるのが妥当です。
そうでないと知事は都道府県公安委員会を調査に依らない独断で罷免出来ることになってしまいます。
このように県知事は行政の長として持ち得ている権限に基づき都道府県公安委員会が機能しているかどうか調査をする権限を持っていると考えられます。

最後に

知事は確かに警察に対して具体的な指示を出し都道府県警察を機能させることは出来ません。
しかし都道府県警察が正常に機能していないということであれば都道府県公安委員会に対してそれを正すよう依頼することが出来ます。
それを公安委員会が受け入れず職責を果たしていないということが調査によって判明すれば議会の同意を得た上で罷免出来ます。
このように知事は警察に対して直接的な権限は持っていませんが、都道府県公安委員会を通して婉曲に正す権限は持っています。

従って警察が正常に機能していないのであればその責任の一端が知事にあることは否めません。
本来、知事とは都道府県行政の長なのですから与えられた権限に基づいて行政を正すべき義務を負っています。
警察に問題があれば警察の問題を解決すべく懸命に努力する。
それが知事のやるべきことです。
国への警察定員増の働きかけを行っていることについては評価しますが、警官が増えただけで以前と被害に苦しむ市民の声を無視する等の行為によって数字だけ良くなって実際の治安には影響なかったとなっては目も当てられません。

このように大野知事は思い違いをされている部分があるように見受けられますので正されたく存じます。

あと、これは蛇足ですが警察はやっぱり知事から独立した組織ではないと思います。
もし独立してるならクーデター起こされちゃってるってことになると思うんだよな。

それでは本日この辺で