筋肉は裏切らないについて思うこと

企業戦士 筋肉 どうかしている

筋肉は裏切らない。
関節は裏切る。
脂肪の忠誠心は半端ない。

以上のような話を聞いて会社で例えてみようと何故か思い立ったので書いてみます。

先ずは裏切らない筋肉君です。
彼は有能な営業マンとしましょう。
筋肉君は会社が採用活動を頑張ってようやく会社に来てくれた有能な社員です。人事がリクルートの営業に唆されてナンボ吸い込まれたか分からない位の費用が掛かった兼ね合いからくるプレッシャーに半分ノイローゼ状態となって、ようやく採用出来た人材です。正に血のにじむような努力の賜物といえましょう。

そんな期待の星の筋肉君ですが流石はブラック企業です。
課長は勝手にやってくれるだろうと放任。
彼が新しく取り組んでいたプロジェクトも面倒だからと棚上げして誰でも出来るルーティンワークを押し付ける。
するとどうでしょう!
筋肉君は勤務の裏側で転職活動を始めており気付いたら会社を辞めていなくなってしまっているのです。

次に関節さんです。
関節さんは目立ちませんが有能な営業事務です。
筋肉君が取って来た仕事を回すために陰で頑張ってくれます。
しかし彼女のことを省みる者は誰もいません。それでも彼女は増えた仕事の量と共に増える膨大な事務作業と他部署との連携を文句も言わずに処理します。
そしていつか彼女は爆発することになります。
ある日、課長が関節さんに言います。
「いやあ筋肉君のお蔭で仕事が引っ切り無しだよ。それじゃあ関節子ちゃん、この仕事よろしく頼むよ」
「おう、ハゲ、ゴラァ」
「え、気のせいかなぁ。いま誰かが私にハゲって言った気がするよ」
「あん?オマエは顔だけやのうて耳まで悪いんか?おい?コラ!儂がどんだけ気い悪くしとるか分かるかハゲ。筋肉が仕事取って来ただぁ。オマエそれやったら儂の仕事が増えとるやないかい。どないなっとんねん、これ」
「いや、関節子ちゃんが忙しいのは分かるけど、ほらね。やっぱり仕事を取って来ることが大事だから。それに伴って事務が増えることは仕方ないよ」
「おまえ管理職やったら儂の健気な姿を見とったら補助の人間を付けるとかするのが筋なんちゃうんか?分かった。ほな、儂は今から有休を使う。これから温泉に行ってくる。後は勝手にやってくれや」
そういうと彼女は熱海へと旅立ってしまいました。
普段は温厚で優しい微笑みを浮かべている彼女が心の底からぶち切れた瞬間でした。

残された会社は大変です。
筋肉君がいくら頑張って仕事を取ってこようと思っても関節子ちゃんがいなければ何も出来ないことが判明してしまったのです。
おまけに仕事が滞れば何も出来なくなったことに耐えられなくなった筋肉君は裏切ることなく正面から堂々と辞表を叩きつけて何処かへ行くか、役立たずの脂肪君へと姿を変えてしまいます。
もはや彼女の心の傷が癒されるまで全ての仕事はストップするより他ありません。
仕方ありません。彼女は唯一にして無二の存在なのですから。
しかも彼女が帰って来てくれれば良いです。以降、関節子ちゃんは絶対の存在となり、たまにしか働いてくれなくても皆は黙って彼女のご機嫌を取るしかないのです。
それでも彼女が働いてくれるなら良い方です。最悪の場合、彼女は病んでしまって二度と仕事をしてくれなくなる可能性すら有るのです。そうなった場合は仕方ありません。右膝関節子ちゃんが戻って来なければ右足支社は永遠に機能しません。

そして最後に忠誠心の半端ない脂肪です。
役立たずの能無しです。遥か昔の頃には会社のエースである筋肉として鳴らした時期もあったという噂もありますが誰も信じていません。
今じゃ窓辺で過去を懐かしんで黄昏ているかPCのソリティアに勤しむ日々です。
会社が本当の危機の危機に際した際には、その身を挺して皆を支えてくれるという噂もありますが本当かどうかは怪しい所です。
しかし忠誠心だけは半端ありません。
大昔は脂肪を飼っていることが余裕を持った強い者の証として重宝された時期もありました。それも今となっては怠惰の証でしかありません。脂肪を無駄に飼っていても会社が経営改善に取り組む積りがない証拠と経営陣が責められる材料にしかなりません。
そのため株主から会社の利益を求められた経営陣は役立たずの脂肪をリストラすることにしました。
仕方ありません。何の役にも立たないのですから。
そこで会社は帰国子女のダイエット人事部長にリストラを命じました。

ダイエット人事部長と脂肪さんの戦いは熾烈を極めました。
脂肪の会社への執着も半端ではありません。
肩叩きをすれば、そこが凝っているととぼけ。
会社から摘まみ出そうとすれば机に齧り付く。

執拗な兵糧攻めや揉み出し等の揺さぶり、果ては真夏にも関わらず脂肪さんの居る部屋には暖房を入れるといった強硬策の決行により、ついに脂肪さんを会社から摘まみ出すことに成功します。
しかし何と言うことでしょう!!
数日すると嘗て自分の席であった場所にひょっこりと脂肪さんが腰を下ろしているのです。

二人の戦いは長いものとなりました。
二人の攻防は一進一退を続け、ある一時期はダイエット人事部長が優位に立つのですが、気が付くと視床下部執行役員辺りが「やっぱりたまには甘いものも食べたい」等と言って裏口を開けて脂肪さんを招き入れてしまうのです。
それに加えて筋肉君さえもが「脂肪がある程度あった方が筋肉が付きやすい」と脂肪さんに肩入れしてきます。
おまけにダイエット人事部長の施策はやりすぎではないかと批判に晒されることも少なくありませんでした。
かと思えば何も知らない他の役員連中はダイエット人事部長君はやる気があるのかね?と皮肉をぶつけて来る始末です。しかも水面下ではダイエット人事部長をリストラしてエステさんと人事部長を入れ替えた方が良いのではないかという話まで出て来る始末です。
この経営陣の無理解は思いのほかダイエット人事部長を挫けさせたようです。もはやダイエット人事部長が生を感じられるのは脂肪さんと戦っている時だけです。
皮肉にも彼の一番の支えとなっているのは脂肪さんなのです。ダイエット人事部長の追い出し施策を悉く跳ね返し、挙句の果てには内部の協力者達の力を借りて気が付けば会社に不死鳥の如く舞い戻って来る脂肪さんの姿は感動的ですらあります。
誰もが思いました。なぜオマエはその力を仕事で発揮できないのだと。
今日も二人の追いかけっこはトムとジェリーが如く続きましたとさ、めでたしめでたし。

これを書いていて冒頭の考えと多少変わったので書きます。
先ず筋肉は裏切らないけど、適度な負荷を掛け続けないといなくなってしまう。
関節は裏切るというか、常に省みて必要以上の負担が掛かっていないかどうか見ていないとほったらかしていた妻が如く働かなくなってしまう。
脂肪の忠誠心は半端ないが同時に彼の協力者も多い。

それでは今日はこの辺で