旭川14歳少女イジメ凍死事件 学校がいじめを認めない理由

この事件について週間文春さんの記事を見て思ったのは、なぜ学校はいじめが起きたという事実をこれほど頑なに認めないのだろう?でした。

文春オンライン旭川14歳少女イジメ凍死事件 #1

校長がインタビューに答えているところを見ると、どの段階でかは知りませんが学校の教師達の中で情報共有が行われていたのは間違いないようです。
爽彩さんの一件については警察の介入もありました。

これをいじめではないと校長は答えています。
筆者は今回の一件をいじめという範疇を超えた犯罪行為と捉えているのですが校長は生徒間のトラブルに過ぎないという認識であると重ねて答えています。
そこで辞書で調べたみました。

いじめ:特に学校で弱い立場の生徒を肉体的または精神的に痛めつけること
トラブル:いざこざ、やっかいなこと
(広辞苑より)

肉体的な苦痛:加害者達に川に飛び込ませられる
精神的な苦痛:加害者から自慰行為を画像にするよう強要されて、それを加害者間で共有され実際に目の前でそうするよう強要される

これはいじめではないのでしょうか?
敢えて言うなら加害者の行ったことはいじめの範疇を超えた犯罪行為です。
以上のことから考えて少なくとも「いじめ」が行われていたことは間違いないと思うのですが、こう思うのは筆者だけなのでしょうか?
どうも頭が混乱してきました。

文部科学省のいじめの定義です。

「いじめ」とは、「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係のある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものも含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの。」とする。なお、起こった場所は学校の内外を問わない。「いじめ」の中には、犯罪行為として取り扱われるべきと認められ、早期に警察に相談することが重要なものや、児童生徒の生命、身体又は財産に重大な被害が生じるような、直ちに警察に通報することが必要なものが含まれる。これらについては、教育的な配慮や被害者の意向への配慮のうえで、早期に警察に相談・通報の上、警察と連携した対応を取ることが必要である。
文部科学省「いじめの定義の変遷」


教頭が母親に伝えた画像の拡散は校内で起きたことではないので学校として責任は負えないという発言を覆す「起こった場所は学校の内外を問わない」という定義の文言に動揺します。更に被害者は心身の苦痛を感じているものという条件も十分に満たしています。

今回の事件がここまで明確にいじめの定義に当て嵌まっているにも関わらず学校側が頑として認めない理由とは何なのでしょうか?

学校の監督官庁である文部科学省はいじめについてどのような認識を持っているのかサイトをあたってみました。

いじめの防止などは、全ての学校・教職員が自らの問題として切実に受け止め、徹底して取り組むべき重要な課題である。

ー文部科学省「学校におけるいじめ問題に関する基本的認識と取組のポイント」


上記に加えて更にいじめに関する取り組みの指針まで書かれています。

またその中にある適切な教育指導の項目には
・いじめを行った生徒へ他人の痛みを理解できるようにうする指導を根気強く継続して行うこと
・他の生徒に対していじめをはやし立てたり傍観したりする行為も許されてないという認識を持たせること

以上の他にもいじめを行った生徒に対して隔離、また限度を超える場合には出席停止や警察との連携することについてまで書かれています。

何かと批判の多い文科省ですがいじめについての認識については間違えていないように思えますし実際にいじめが起きても、ここに書かれた内容の通り学校があたっていれば解決していたのではないかと思いました。

では、なぜ学校側は問題を解決できなかっただけでなく、これだけの醜態を晒すことになったのでしょうか?

爽彩さんに対して加害者達から行われた行為が「いじめ」であることに疑いようはありません。

且つ今回の事件は重大事態にあたると思われます。
繰り返しますが学校側はなぜそれを認めないのでしょうか?
そこで学校側の立場になって考えてみました。

いじめが起きた際に学校が行うこと
・いじめの調査
・教育委員会への相談と支援の依頼
・地方公共団体の長への重大事態発生の報告と結果の報告
「いじめの重大事態に関するガイドライン」第3重大事態の発生報告 参照
以上の作業が発生します。

ここからは想像です。
教師は多忙です。
担任教師もデートする時間の確保に必死です。
いじめの内容は犯罪行為が含まれた深刻なものです。
犯罪行為も含まれているので警察とも連携しないといけません。
面倒です。
学校側は頭を抱えます。

しかしいじめ自体が起きていなかったらどうでしょう。
以上の煩雑かつ困難な作業が全て消滅します。

では、どうすればいいか?
爽彩さんが川に飛び込んたことで警察が保護した際に警察から学校へ齎された報告です。
・爽彩さんが「お母さんに会いたくない」と言っている。
・爽彩さんが「いじめではない」と言っている。

以上の報告内容から、学校側は考えます。
これは家庭内での児童虐待であっていじめではない。
このまま児童虐待の問題で済むよう学校側は願います。
そうなれば全て家庭が悪い。
いじめられていたのも家庭が原因に違いない。

しかし児童虐待の疑いは晴れてしまいます。

再び学校側は頭を抱えます。
爽彩さんに対して加害者達が行っていたことは疑いようなく「いじめ」です。しかもいじめの重大事態に十分該当する内容です。
そうなった場合、重大事態に基づいた調査が行われることになります。
そうなるとどうなるでしょう?
いじめの重大事態の調査に関するガイドラインには教職員への処分の項目があります。
そこには教職員に対する聴き取りを行ったうえで客観的に事実関係を把握し、教職員の懲戒処分等の要否を検討すること。とあります。
保護者から担任へいじめに関しての相談が複数回行われています。いつの段階からかは知りませんが今回のいじめについての対応が教頭や校長が行っていることから川に飛び込んだ頃には学校全体でも情報が共有されています。
つまり学校側が爽彩さんのいじめ事件を認めるということは重大事態の認定へと繋がり、それは重大事態に基づいた調査に移行が為され、そのまま学校側の懲戒が決まる公算が高いということです。
もう学校側は引き返すことが出来る地点を超えてしまっているのです。

この頃には学校側は保身のためにいじめが行われていることを認めないという方針を固めていたのではないかと思われます。
学校側は次に警察からの報告に注目したのではないでしょうか。
爽彩さんがいじめではないと警察に言っている。
いじめが行われていないことに警察のお墨付きを得ることが出来ました。
しかも児童相談所は母親と爽彩さんが会えないように措置を取っている。
このあと虐待についての嫌疑は晴れていますが、きっと見落としがあるに違いありません。加害者と言われる生徒たちも母親から虐待を受けていたと答えている。その後に加害者たちは爽彩さんの自慰画像を所持し且つグループLINEで拡散し、教頭もその画像の存在を母親から知らされて教頭の携帯のカメラで撮影していますが小さなトラブルに過ぎません。教師は生徒を信じるものなのです。加害者呼ばわりされる生徒たちこそ被害者です。しかし行き過ぎた部分も多少はあるので指導の必要があることは認めます。加害者生徒たちも根が悪くないちょっとやんちゃな連中だから少し言えば悔いてくれる。
それに別に更生しなくても、主な加害者生徒は3年生なのであと少しすれば卒業してしまうので少しの時間を引き伸ばせば解決です。

問題は爽彩さんが退院した後です。
それも母親には学校は彼女が戻ってくることを待っていると伝えれば良い。
加害者たちにもよく言い聞かせました。
猥褻画像だって消去させました。復元してまたばらまかれていますが加害者生徒たちの年齢から言って法で裁くことは出来ないのだから仕方ありません。学校でやれることはやったのです。

ここで振り返ってみましょう。
爽彩さんを追い詰めていたのは下記2点です。
・いじめを行う加害者
・彼女の画像の存在

何も解決していません。
それどころか学校側はいじめが起きていることを認めていないので加害者たちから爽彩さんが守られることもありません。
普通に考えれば、そんな所に親が子供が行くことを許す筈がありません。
従って、学校側が何もしなければ不登校になるか転校するかのどちらかの措置が取られる筈です。
不登校なら適当にお茶を濁して時間稼ぎをしている内に勝手に卒業していなくなってくれるので問題は解決です。
転校がベストです。学校から問題が消滅するからです。
そして被害者生徒が救われることはありません。

以上のように考えると学校側がいじめを認めなかった理由は同じ生徒である加害者たちのためではなく保身による行動だったように思えます。
なぜなら「いじめ」が行われていることを認めれば学校が本来とるべき行動を取っていなかったことを認めることになり責任を問われることになるからです。
故に「いじめ」が行われたことを学校側は認められないのです。

そして本来であれば重大事態となった場合、学校は心理的なケアも含めての爽彩さんへの専門的機関による支援へ繋げる努力を行うことも定められていました。

学校側が「いじめ」を認めていればです。

学校側は恐らくですが今回の事件に関して最適解を見付けたのだと思います。
「いじめ」自体を無かったことにすれば自分たちは何もしなくていいと。
そう考えると校長の生徒間のトラブルという答えに終始した意味も分かります。
従って学校側にとっていじめは起きていなかったのです。

2021年4月23日 文部科学省より教育委員会に対し事実関係の確認指示
2021年4月27日 旭川市教育委員会が「重大事態」であることを認定
2021年5月   第三者委員会による重大事態による調査を行う

少なくとも「いじめ」が起きていたこと、且つそれが重大事態に値するものであったことが公に認められました。調査結果から学校側への懲戒も為されることになるのは間違いなさそうです。

最後に廣瀬爽彩さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。