創造性を失わせる労働環境について

疲れたサラリーマン ブラック企業の社窓から


前回は創造性が会社組織から失われていく流れが出来てしまっているのではないかと書かせて貰ったのですが、アレ?そもそも創造性って何だ?と思い調べてみたところ下記の記述を見つけました。

創造性とはつまり素晴らしくよく働く連想記憶である。
(サルノフ・メドニック 心理学者)

上記の記述を読み、確かに世の中には様々なものが存在しており、全くのゼロから一の価値を創り出すということは出来なくなっているのではないかと思います。
例えば、革新的と言われたiPhoneにしても言ってみれば携帯電話と携帯音楽プレーヤーや携帯ゲーム機を一つにしただけであるという見方も出来ます。
真に価値があることは、それらを一つにするという発想を得た事であり、組織を動かし、それを実現させた手腕にあります。つまりスティーブジョブスというアップル社のリソースをマネジメント出来る立場の人間がiphoneの構想を得た事で初めてiphoneを作ることが出来たのだと思います。
つまり彼は携帯電話という一つの端末に他の機器の機能を持たせてまとめることが出来るのではないか?という仮説を自分の会社の技術力を利用して証明したたものがihoneであったのだろうと思います。

では、素晴らしく連想記憶を働かせるにはどうした良いのかと言うと、それはこっちが教えて欲しい位なので、ここでは逆に素晴らしく働く連想記憶を妨げるものを考えてみたいと思います。

先ず、人は疲労や睡眠不足によって記憶力等の脳力とでも呼ぶべき能力が低下します。以上の点を考えると長時間労働と関連して睡眠する時間が不足するということは記憶力などの脳力のパフォーマンスを低下させます。そして創造性とはつまり連想記憶であると考えるなら脳の性能が低下するということは連想記憶の働きを弱めることであり、結果として創造力を低下させる事になるのだと思います。

先日も世界の時価総額ランキングから日本の企業の多くの企業が外れてしまったのは創造力無きが故ではないだろうかと書いたので、今回も日本に的を絞って調べてみます。

先ず日本の平均労働時間を調べてみました。
日本人の年間での平均労働時間
1710時間。
一日あたりに換算すると7時間弱。
ほぼ9時5時です。

意外です。てっきり日本の長時間労働が労働者を蝕んで等と考えていたのですが、日本人は意外と働いていないことが分かり、いきなり前提条件が崩れてしまいました。しかも日本の年間総労働時間は減少傾向にあるようです。
働きすぎて自殺者が出たりしたのは日本の中では例外にあるブラック企業であったのです。良かったようなそうでないような、でも腑に落ちないこの感じは何だろうと思って更に資料を読み進めてみると、この労働時間を算出したデータ元は派遣やパートアルバイトの労働時間を含めて計算してのものであったようです。
これを正社員に絞ると平均労働時間は2000時間に跳ね上がりますし、特に30歳代男性社員の15.1%は週の平均労働時間は60時間以上になります。これは年間に直すと2940時間となります。(平成29年版厚生労働白書参照)

週の労働時間60時間
一日の労働時間12時間
12×245(年間の平均労働日数)
年間の労働時間2940時間

それでは一日のタイムスケジュールを勝手に推測してみます。
通勤片道1時間と想定すると往復で2時間
昼休み1時間
朝の準備や帰宅してから着替える時間が1時間
帰宅してから食事や入浴する時間が2時間
テレビやスマホでメールやインターネットを見る時間が1時間
労働時間12時間
上記の時間を合算して19時間
睡眠時間5時間

うーん、自分の時間が一日のうち2~3時間しかありませんね。
創造性とは素晴らしくよく働く連想記憶である。という定義から考えて見ると記憶力が必要だと思うのですが、これは長時間労働とそれによって生じる睡眠不足によって削られてしまっている。故に創造性を発揮しなければならない人が、創造性を発揮出来ていない状況が生じてしまっていることが日本企業が海外から遅れを取っている理由にならないでしょうか?

また長時間に渡って休み無く働くということは仕事以外の記憶が頭に入る機会が減少します。そうなると仕事と掛け合わせるべき他の記憶が不足しているために創造力を発揮出来ていない可能性も考えられます。
そして、睡眠時間が5時間というのも大きな問題です。

睡眠が仕事に対して与える影響について調べみました。

ペンシルベニア大学とワシントン州立大学で行われた睡眠に関しての実験です。
被験者:1日平均7~8時間睡眠をとる健康な男女を48名
実験内容:被験者をグループに分けて2週間記録。

調査結果:
睡眠時間の短いグループは日ごと身体機能が低下していった。
最も能力低下が大きく現れたのは、4時間睡眠のグループ。しかし6時間睡眠のグループも大差はなかった。

他に発見が2つ。

1つ目:寝不足は累積する。6時間睡眠のグループは1週間経過すると1日中、睡魔に襲われながら過ごすようになった。
2つ目:自分では能力の低下に気付かない。

今までのことを纏めると企業の屋台骨である30代男性社員の15.1%は長時間労働によって自分の時間を持つことが出来ず、創造を行う際に仕事と連想されるべき材料自体の持ち合わせが無く合わせて睡眠不足が継続的に発生することで徹夜を続けている人間と同じ程度に仕事のパフォーマンスが低下した状態で問題のある判断を下す。つまり創造力のある若手や外部の提案を評価することが出来ずに却下している可能性があります。しかもその事に自分でも気付いていないという最悪の事態が考えられます。しかも怖い点としては創造力のある人間も長時間労働のサイクルで日々を過ごすことによって徐々に創造力を無くしている可能性が高いという事です。

従って、新しい価値を求められる世界に於いて日本企業では必要な能力をスポイルして無くす組織構造になっていると考えれば、そりゃあ世界企業の時価総額ランキングから日本企業の殆どがランキング外に弾き出されもするわ!!という結論に至りました。

それでは

前回の記事
創造性を無くしていく組織
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