潰れた会社の話(長文です)

父さんの会社が倒産 ブラック企業の社窓から


実は最近になって、以前に所属していた企業が潰れていた事を知りました。そこでの事を書いてみたいと思います。

前いた会社の状況とそこでの役割

その会社で社員5名程度の小さな会社で私は唯一の営業として活動していました。
そこで開発した製品の営業を主には行っていたのですが独自性が強過ぎて最初の一年位は殆ど売れていませんでした。

この時期の精神的プレッシャーは相当なもので、心臓がいつもドキドキしているような状態で健康診断の問診の際に医師に相談したところ「ストレスだね」と一言で片づけられて悲しかった思い出があります。
いま思い返してみると軽い自律神経失調症にだったんでしょうね。

製品についてお客さんからは
・独自過ぎてよく分からない。
・具体的にどんなメリットがあるの?
・その製品の信頼性は確かなの?
・運用にどの位の手間が掛かるの?
君、よく分からんよ

これを解消するために以下のものが必要だったと思います。
・使用している技術の根拠
・成果事例
分かった

各々についてマネージャー兼技術に掛け合った結果
・使用している技術の根拠

技術流出をするつもりですか!!

・成果事例

実際に売った企業から貰えば良いですよ

・まずは自社で出せないのですか

成果を出すまでには時間が掛かるし今はそんな事に人員を割いている余裕はありませんよ

当然まったく売れなくて頭を抱える事となる訳ですが、見かねた開発者でもあったマネージャーは「営業はまず自分を売れ」という本を勧められます。
大人になって初めて本気で人を殴ってやりたいと思いました。
お返しに「誰にでも分かるJava」を勧めてやろうと思ったのを堪えて自分を褒めてあげたいです。
偉かったぞ。自分!
それでも一年くらい掛かりましたが採算ラインに乗せてみます。

そしてどうなったか?

人の手柄は横取りしたくなる

盗人

同僚に古株でweb担当をしていた人物がいたのですが、
この人はマネージャー子飼いの人物でした。
彼はマーケティング担当を自認しており、
ある日の酒の席で
「僕は人に頭を下げるのが嫌いだから営業は嫌です。
 だから人に頭を下げなくても良いように動くだけです」
この様に熱く語ってくれる男だったので、
どういった手を打ってくれるのかな?と期待しました。
(マネージャーにその時の飲み代をせびりに行ったことには敢えて目をつぶりました)
その彼が取ったこうどうは!
なんと営業の手柄を横取りする事に精を出し始めたのです。
なるほど!!それなら確かに人に頭を下げなくても大丈夫だね!!と、
驚いた事を昨日のことのように思い出します。

余りに露骨な動きに開いた口が塞がらない日々が続きます。
しかしマネージャーはお歳暮に送られた苺の味が気に入ったのか
いつの間にか営業方針を決めるのはこの人物と言う事になっていきます。
営業を知らない人間が営業に口を出して碌な結果にならないのは、
あるあるだと思うのですが、
こちらもご多分に漏れず営業活動が空転する日々が続くようになります。
こうして営業の影響力は順調に削られていく事となります。

Facebookという名のトラップ男爵登場!!

しかし当初は売上は出ていました。

なぜか?
web広告を打ち始めたんです。
(当然だろというツッコミは無用です。まぁ、それをやらない会社だから廃業になっちゃったんですけどね。
逆にそれまでテレアポだけでやっていたという事実に驚きます)
これのお問い合わせに対して営業を掛けるのは、
興味を持った相手に営業を掛けることになるので成約率も高かったです。
何度かアプローチを掛けて購入して貰うケースが多かったものに対して、
導入費用を削ることを許可するから、
今すぐに申込むように今から電話を掛けろ!
とかバカじゃねーのという指示で有望な顧客候補を無くす羽目になったのも、
営業としては歯ぎしりするほど無念でしたが、
web広告を打てるのはこのアホンダラだけということもあり、
そのお陰で楽な営業が出来るのも事実なので我慢できました。

しかし!!
ここでトラップ男爵の登場です。
男爵

その名はFacebook!!
facebookロゴ
なぜこれがトラップになるのか?
Facebook内には広告を出せるのです。
後に判明するのですがweb担当者が上手くいっているweb広告予算を削って、
Facebook広告に予算を割り振り始めるのです。

そこで更にweb担当者とマネージャーの迷走は続きます。

そうだ。一緒にwebコンサルの仕事も取って来てよ。
こいつらとち狂ってんなと確信するセリフを吐いて
Facebook広告に力を入れ始めるのです。

ただ誤解しないように言っておくとfacebookの広告は成果が出ないという事ではないです。
成果が出なかった理由は製品と関係のない内容の記事広告を出していたので、
単に見た人が製品に興味を持たないので売り上げに繋がらなかっただけです。

更に悲劇は続きます。
会社でブログを立ち上げる事になります。
当初は製品を使用したブログをあげることで製品の一般認知を獲得することで販売に繋げよう。
一緒にブランド力も高めようというものでした。

これがいつの間にかどこかのホームページや本で適当に見たことのある、
どうでも良いwebコンサル話のようなものをあげだします。
それだけなら鼻くそでもほじりながら他人事として見ていられたのですが、
このクソみたいブログに広告費を出すと抜かし出します。

このweb担当、実は製品についてよく分かっていないという重大過ぎる欠点を抱えているのですが、
それについてもブログ作成を切っ掛けに製品理解が深まって広告の精度が高まればと期待していたのです。
更に事態は悪化します。
なんとこのweb担当がブログを作ることに飽きてしまうのです。
そうした経緯で記事作成の下請けになったのはパートのおばちゃん。

そうして実際に制作されるブログは当然ですが製品とは全く関係のない一般書籍で得られる知識、もしくは他社で無料ツールが存在している製品の一部機能を使った分析もどきの感想文。

これも後に判明するのですが、
このweb担当者はwebコンサル会社に転職をするのですが、
この時期も転職活動をしています。
奴は転職をする為の実績作りとしてFacebookのいいね!獲得の為に
ゴミみたいな記事に製品の広告費も含めて投入します。

こうして広告の目的は大きくずれていくことになります。
当初の目的・・・製品の一般の認知度を広げることとあわよくば製品へのお問い合わせ
web担当の目的・・・facebookのいいね獲得(web担が転職する為の分かり易い実績として)

確かに「いいね!」は付きました。
いいね
しかしfacebookからの製品についてのお問い合わせは来ません。

同時に激減するweb広告からの製品へのお問い合わせ。
facebook

なぜか下がらない売り上げ

ただ、この時点で売り上げは下がっていません。
なぜか?
これを営業では種まきをするという言い方をするのですが初めての訪問時は無理でも半年後位に買ってくれるというのがよくあるのです。
タイミングが悪い事に以前の見込みのお客さんが広告の失敗の埋め合わせをするかのように製品を導入してくれたのです。

やっぱり下がった売り上げ

そうして3か月程して売り上げが下がり始めました。
広告からの反響は激減。
(一緒に問い合わせの質も下がります)
無駄につくいいね!
減り続ける見込みのお客さん。

新規の売り上げも見込みのお客さんも無くなっていきます。

奪うべき手柄が無くなるとどうなるか

俺はもう関係ない

会社で会議をしても売り上げが下がっているという話になります。
営業は何をやっているんだとなります。
そして完全に他人面となるweb担当者。

この後は悲惨でした。

いつの間にかweb担当者配下に収まっているパートのおばちゃんにも見下されるようになります。
(電話で来たお問合せの電話を受けたおばちゃんから言われたのが
「あの~、見込は低いと思うので、一緒に来て貰わなくても大丈夫です」
と足手纏いだから来ないでくれない?と遠回しに言われる程になります。

追い打ちを掛けられるように、昇給は年に一回あったのですが社長から雀の涙の昇給である事が伝えられます。
「最近、売り上げが減ってるから」
売り上げほぼゼロの状態から売り上げを積み重ねて、その粗利の三分の一のと比較しても明らかに低過ぎる額でした。
売り上げが上昇したのはweb担当者のお陰、下がったのは営業が働いていないからとなっていたようです。

モニター事件発生!!

壊れたモニター
そして、ある日、営業先から会社に戻って来ると自分の使用しているPCのモニターがオンボロになっていました!?
なんで?

希望を出し続けて売り上げの調子が良い時の勢いで何とか捻じ込んだ展示会に販売製品を出展させる事になっていたのですが、その時にモニターを使用することになります。
そこに私の使用していたものが使われる事になったのでした。
因みに週3で来るパートのおばちゃんも同じモニターを使用していたのですが、こっちはそのまま。
自分の地位がパートのおばちゃん以下になった瞬間でした。
今まで本当にありがとうございました。
ここで自分は退職を決意します。

そして退職へ・・・

勇退

こうしてドラクエで言うなら
スタート画面のチャーッチャラッチャッチャッチャッチャッ チャラーラーラーラー♪
からデレデレデレデレデレッデーデッ
「ざんねんですがあなたの冒険の書は消えました」へと流れるように進みます。

モニター事件から一か月後に適当な理由をでっち上げて会社を退職する旨を会社に伝えます。
それについて社長からは引き止められますがマネージャーからあいついねえ方が上手く回るよという後押しによって受け入れて貰えました。

退職についての会議

退職理由は家の都合という事にしたので社長は在宅でも出来る仕事があればと言ってくれました。
製品の売り上げが間違いなく立ち行かなくなる事は目に見えており、私もこれはさすがに心苦しかったので引き受けたかったのですが、web担当から「あなたが在宅で出来るような仕事なんかないでしょ」の一言で無事になくなり、おかげで後腐れなく無事に退職する事が決まりました。
本当にありがとうございます。

筆者が退職すると営業がいなくなるという事で求人募集をする事と、筆者程度の人間が売れたのだから更に人数を増やせばもっと売れるということでしょう。
営業3名を募集することになります。
私は集まった新人さんへの教育と既存顧客の引継ぎをして退職というスケジュールになりました。

求人を担当する事になった

求人

求人は頑張りました。
求人媒体に募集を出しても応募が少なく採用活動はかなりの苦戦を強いられる可能性があると求人媒体の営業さんにアドバイスを受けてスカウト活動に勤しみます。
その時に利用した求人媒体は登録されている転職希望者の経歴の概要だけ見れてスカウトのメッセージを送ることが出来るものでした。
(名前や住所などは閲覧不可)
Web関連の知識のある人には片っ端からスカウトメールを毎日出しました。
(大変でした。求人募集を集めるなんて人事が鼻くそでもほじりながら適当にやって面接で偉そうにしてりゃいいんだろ?とか思っていてごめんなさい)

採用活動の結果として、
業界経験と営業経験を持つ何名かを採用する事が出来ました。

退職後の引継ぎと新人への教育

教育

後は営業先の引継ぎと新人さんたちに製品についての教育を行えば、いよいよお役御免です。

営業先の引き継ぎは無事に終了します。
(まぁ紹介するだけだしね)

しかし製品についての教育が上手くいかなかった。
新人さんたちは業界経験のある人達だったのですが、製品には特殊な専門知識が必要で、これについて理解して貰うのに思った以上に手間取ります。
トレーニング期間としては半月ほどあったのですが、それでもかなりタイトなスケジュールとなりました。

屈辱の日々再び

カノッサの屈辱

まぁ確かに退職する奴の影響力なんて小さいに越した事はないです。
それなら叩いて自分の権威を高めておこうというのは理屈としては分かりますが本当に実行するとは・・・。
という事で虚ろな目で過ごす最後の日々が始まります。

・新人さんにレクチャーをしているとweb担当からイチャモン
・新人さんから読むと良い本はありますか?に対して答えると、マネージャーから「そんな本は意味ないよ」
・新人さんから「悲しい笑いさんが退職された後にやっていけるか不安です」に対して、マネージャーより「いざとなれば僕が同行するから何の問題もありませんよ。(そんなゴミみたいな人間がいなくて)何が問題なんですか?」
・展示会ではweb担当者に顎で使われる
(例、「あなたはいなくても問題ないんだからゴミ袋買って来てよ」といった具合)

といったものが積み重なって気付けば新人さんたちの認識も「あ、この人はどうでもいい人なんだ」に変わっていきます。
最終的にアポイントの取れた新人さんに同行しようかと声を掛けると製品知識もろくに分かっていないのに「別に必要ないので大丈夫です」と答えてくれるまでに成長してくれます。

そんなこんなで着々と退職日は近づくのですが営業同行は出来ないままでした(言っても断られちゃったしね)
しかし営業メンバーとweb担当とパートのおばちゃんの専門知識は、このままだとヤバい、せめて営業メンバーだけでもどうにかしなくてはと思い、営業ロープレをビデオカメラで撮影して残すことにしたのですが、ここでもweb担当が出て来てくれました。
営業する側は私が行い、営業される側はweb担当者がやる事になります。
web担は完全に私をやり込める事を目的としていました。
結果として、営業をやり込める事を目的とするお客さんへの対応は残す事が出来ましたが汎用的に参考に出来るものにはならなかったので完全な失敗です。

そんなこんなで退職日は荷物の片づけが就業時間をオーバーして終わり、最後はマネージャーと新人さん1名に見送られて終わりました。
(マネージャーは事務所の鍵を閉めないといけないので残っていたっぽい)

退職したその後・・・

夕陽

文中でも書きましたが、その会社は潰れます。
理由は製品が売れなかったことと既存顧客が根こそぎ離れた事によるものだと聞きました。
web担当者はwebコンサルティング会社に転職して仕事は出来ないくせに態度だけデカくて言うことを聞かないのが問題になったのかは知りませんが転職して間も無く退職しています。

クビ

この会社での一番大きな反省点は、やはりマネージャー兼技術者と最後まで信頼関係を築けなかった事です。
いま思うと製品が売れなかった時期にお客さんからの感想をダイレクトに伝えて傷つけたりしてたのが不味かった(お客さんの酷評から営業は技術者を守らなくてはいけない)
その後、自分がいる時に求人募集の写真撮影で自分だけハブられて集合写真を撮影する等の制裁を受けたので、それでチャラにして欲しかったなぁ。

ただフォローをしておくと製品自体は上手く使えば成果が出る事はあったので、その土台を整える所まで面倒を見るのと製品の有用性を証明する事が出来れば業界を席捲した可能性は十分にあったのではないかと今でも思っています。
(一応みんな知ってる大手広告代理店の○通と代理店契約を結ぶ直前まで行ったりしていた。結局、先方の求める代理店契約を結ぶ為の条件を満たせなくて出来なかったけど、本当に厳しいんだ)

後はweb担当者を増長させた原因の一つに上場企業にwebコンサル案件を成約させて目先の売り上げ欲しさにweb担当者を適当にヨイショして案件に入らせた事。
しかもこれが大失敗。
お陰で担当者さんから会う度にうちは資料作りではなくてコンサルティングを受けたかったんだけどねぇ等と嫌味を言われる結果となった。
これを自社内でweb担当者の能力不足による失敗案件である事を明確にしておくべきだった。
そうすればweb担の影響力をいたずらに大きくしなかったので、あそこまで増長する事もなかったと思うので何事もなぁなぁで終わらせるのは良い事ではないなと学びました。

そして結局は自分の力不足です。
外部に対する営業力は発揮できていたと思うのですが、内部に対する営業に関しては完全に失敗していました。
営業力とは社内の影響力も含まれているのだということを痛いほど学ぶことが出来ました。

今回こんな記事を書いたのは、
自分の経験の棚卸をしておきたかったのと、結局、企業は人だという事。
技術、営業、マーケター、サポートする人々一丸になって取り組む事が出来ないと失敗に終わってしまうということを知って欲しかったというのが理由となります。

―追記

demon

それとweb担当者ですが、
入社してマネージャーと彼のやり取りを見ていて思っていたのは、マネージャーは彼を馬鹿だと思っているんだなぁでした。
もちろんかわいがっているというのも分かりはしたのですが、今になって思うと彼は実に上手く会社の事業を潰していったという見方も出来ます。
その上で自分は転職して離脱する算段も整えていたのですから、今までの一連の出来事って、もしかして彼のマネージャーに対する復讐劇だった?

以上となります。
長文にも関わらず最後まで読んでくれた方は本当にありがとうございます。