最近「喰うか喰われるか 私の山口組体験」著者:溝口敦を読みました。
筆者は山口組について書き続けて来た人です。
その中で暴力団と思われる者から刺されたり、更には自分の長男まで刺されて尚、屈せずに書き続けているというのは瞠目に値します。
そこで思いました。
溝口氏はヤクザからの圧力や嫌がらせに耐えて自分の記事や著書を出し続けましたが同じように耐えられる人間は多くないのではないだろうか?
実は圧力に屈したか相手に取り込まれたジャーナリストもいるのではないか?
そして圧力を掛けることに成功した勢力は同じことを繰り返すのではないか?
そうなると私たち一般の人間が見聞きしている報道情報というのは検閲されたものになっている可能性があるのではないか?
その可能性を認識せずにメディアの情報を見ていることこそ危険なんじゃないだろうか?
そんなことを想ったので今回は報道への圧力の掛け方について、次回でその対策について書いてみたいと思います。
最初こういった内容を書くことに意味があるのだろうか?とも思ったのですが、私程度が思いつくことは既に行われている公算が高いこと。そしてSNS全盛の時代に全員とは言わないまでも記者の素性を隠し切るのは不可能に近いと気付いたので、おそらく今回あげる例も既に時代遅れになっていて既に対策が取られている可能性が高いと思います。
読んで貰った方は今後メディアには外部からの圧力によってコントロールされている可能性があるという問題提起を素人が頑張って想像して書いたんだなと笑って見て貰えれば幸いです。
それでは先ず暴力団が溝口氏に対して記事の変更や差し止めを狙って取った行動を項目に分けたものが下記になり、それぞれについて書いてみたいと思います。
・ 電話や対面での圧力
・ 訴訟による圧力
・ 買収圧力
・ 直接的な暴力による圧力
電話や対面での圧力
例えば、メディアの取材相手というのは大抵の場合、報道されたくない相手と近い位置にある関係者か本人です。
取材となれば名刺も渡すでしょうし、そこには会社への連絡先や住所も書かれいます。場合によっては個人の連絡先が書いてあるケースもあると思います。
連絡先が手に入らなければ会社に連絡するか窓口で騒いで連絡するように伝えれば少なくともそういったことがあった旨は伝えられるでしょうし連絡も返ってくる可能性もありそうです。
それともしたら会社前で張って圧力を掛けたい記者が会社から出て来るか戻って来るところを抑えても良いでしょう。
そこで記事の事前チェックの要求と都合の悪い部分については差し替えを要求すれば良いのです。
こういった手段を取った時点で相手は脅威に感じている筈なので要求を突っぱねるのも難しい筈です。
これを少し発展させて記者の自宅に突然訪問するというのも相当なプレッシャーになります。
自宅の調べ方は尾行する人間を相手の勤務する会社の前に張らせておいて、対象の人物が出たら尾行させれば自宅を突き止めることが出来ます。
記者の顔写真は監視カメラ等で撮ったものを使っても良いですし下手したらSNSで公開されている可能性もあるので難しくはなさそうです。
しかし、この手もネットを主な活動場所としている人物の場合は新聞社や出版社の前で張っていれば出社してくるということもなく、しかもネットで情報を取得して記事を書く層は数も多くなって手間が掛かります。今の時代は報道されると困る行動を取っている勢力にとってもやりにくくなっているのかもしれません。良いことです。
代わりに記者本人がSNSで個人情報をばら撒いていればPCに座っているだけで必要な殆どの情報を手に入れることが出来るのは皮肉とも言えます。
何れにしても電話でも対面でも要求を突き付けられた記者は相当なプレッシャーを感じるのは間違いありません。
訴訟による圧力
記事の内容に対して訴訟を起こすことも相当なプレッシャーとして働きます。
ネックとしてはいたずらに賠償金額を高くすると印紙代も高額になる点です。
おまけに弁護士費用を考えると大手の場合は普通に弁護士を雇って対抗してくる筈なので、これは大きな新聞社や出版社にはあまり有効な手段でなく、良い宣伝になった位で捉えられる可能性もあるので費用だけ掛かって得策ではありません。しかし小さな会社や個人で活動しているフリーライター等なら取引先の出版社に迷惑を掛けられないということで比較的に有効に働くかもしれません。
もちろん嘘を書かれていれば裁判で勝てると思うので、そういった場合は有効な手段になります。
買収圧力
個人的にはこれが一番怖いと思いました。
継続的な取材が必要でそれが長期に亘った場合に取材対象の人物と食事をしようとなる流れは自然ですし状況によっては接待をしようという流れも出て来る筈です。
この時に賄賂を渡す。
しかもお酒が入っているタイミングなら手を出したくなる欲求に抗うのも難しくなります。
賄賂を返そうとしてきても「俺に一度出した金を引っ込めさせて恥を掛かせるつもりか」等とでも怒鳴れば返すのは更に難しくなります。
しかし賄賂を受け取ったことが公になればジャーナリスト生命はお終いです。
賄賂を受け取るジャーナリストの書く記事など誰も信じないからです。
つまりは受け取った瞬間にそのジャーナリストの生殺与奪権を握ることが出来るということです。
以後は都合の良い情報を垂れ流してくれるようになるのではないでしょうか。
おまけに買収した相手と同じ社内に厄介な記者がいれば、買収した相手を通じて圧力を掛けたり個人情報を引き出したりも出来るので使い勝手は良さそうです。
そして買収することに成功した記者を脅すでなく味方に引き込むことが出来れば秘密も漏れず尚且つ上層部に昇進してくれれば影響力は更に大きなものになります。
これの例として思いつく限りでは、メディアではありませんが関西電力が元助役から役員等に賄賂が渡され続けた事件が思い浮かびます。不起訴にこそなりましたが関西電力という大企業の幹部9名が起訴されているという事実は瞠目に値します。これも初めは一人に賄賂を受け取らせた所から始まっていると思うので、その効果が如何に大きなものであるか窺い知れます。
他には賄賂とは違いますが経営の厳しくなっている会社なら広告費用を多額に投入しておけばスポンサーとして影響力を持てるようにもなりそうです。
しかも圧力を掛けて当たり障りのない記事ばかりになったメディアは読者が離れます。そうなれば資金力は益々無くなっていくので買収圧力はより強い効力を発揮します。
上手くいけばそのまま会社を乗っ取れる可能性すらあります。
直接的な暴力による圧力
暴力が行われた時点では圧力になりません。その時点でアウトだからです。
効果を発揮するのはその後からです。
過去に直接的な暴力が行われた事例を見てみましょう。
1990年にジャーナリストの溝口 敦氏が暴力団に関する著作の差し止めを断った3か月後に本人が刺されています。
(犯人は捕まっておらず)
他にも1987年5月3日夜に発生した「朝日新聞阪神支局襲撃事件」が挙げられます。これは朝日新聞の記者に死者1名、重傷者1名の被害者が出ています。
他にこういった直接的な暴力行為が行われるような場合は大抵、前段階として暴力事件発生を匂わすために自宅近くに不審な車が現れたりする等して恐怖心を煽る手も使うようです。
これは単純に相手を襲うにあたっての下調べと相手が察して折れてくることを狙っています。相手が折れれば襲撃等という自分達にとってもリスクの高い行動を取らなくて済むからです。
溝口氏の場合は更に2006年には長男が組員に太腿を刺されるという事件まで起きています。
これ程の事件に見舞われながら屈しない個人ははっきり言って例外です。
そして朝日新聞襲撃事件が罪深いのは、これによって実際に暴力事件が起こるという前例と恐怖を業界に植え付けたことです。
この事件でメディア側に対して報道を抑制したい勢力から襲撃を匂わせる言動や行動に対して説得力を与えることになったのではないかと想像します。
例えば、自分がジャーナリストであるとして自宅近くに急に黒塗りの不審な車が頻繁に現れるようになったとしたらどう感じますか?
自分に家族がいて、それをされたらどう思います?
私がもしも新聞社等に勤務していて記者の部下がこういった反社会的勢力が嫌がる記事を書く指示を出すかと聞かれれば出しません。
面倒臭いことになって更に身に危険が迫るなんてものには近付かないのが一番です。サラリーマンなんですから当然です。
このように暴力が振るわれる時点では圧力にはなりませんが、実行された後からメディアがその差し止めを求められていた領域を禁忌扱いすることを狙えます。
これで暴力を匂わせる行為は以前よりも高い効果を発揮するようになります。
行う側もリスクが高く費用も掛かりますが上手くいけば効果は抜群です。
思いつくままに書いてみましたがジャーナリストであっても一人一人は個人でしかありません。記者個人を各個撃破していけば全体のコントロールは難しくても費用対が合うかどうかは別として一記事位ならどうにかなりそうだと思いました。
フリーランスなら取引先がよほどしっかりしていないと難しい筈です。
これらを繰り返して報道に圧力を掛け続けることで次第にメディア自体をコントロールすることも可能になるのかもしれない等と思いました。
次回はこれら報道に掛かる圧力への対策について書きます。
それでは今日はこの辺で
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