「劇場版 魔法少女まどか マギカ[新編]叛逆の物語」感想というか見ていて思ったこと「嘗ての記憶」

星雲に包まれる夜 徒然日記

最近はまどマギについて書き続けているのですが、なぜ今頃になってこんなに力を入れているのか未だ自分自身で分かっていない悲しい笑いです。確か、この作品をテーマに書いてみようかどうしようか迷っていた頃は作品のテーマをイノセンスだと思っていました。それでは具体的にどの辺がイノセンス何だろうと思って取り敢えず書き始めてみて思ったのは、それはテーマの中に含まれてはいるけれど、それだけではなく本当は「愛」とは何なのか?というシンプルで、だからこそ難しいテーマに挑んだものが魔法少女まどか☆マギカだったのではないだろうかと思い始めています。

※この先は「魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語」を見ていることを前提として書いているため内容にネタバレが多く含まれていますので注意願います。

新編に入って違和感として感じたのは暁美ほむらが転校生として登場したシーンです。
この転校生として登場する時の早乙女先生の目玉焼きの件は、もはや様式美だな等と思うようになるほど筆者が飼い慣らされているのはさて置き、ほむらがメガネを掛けてお下げの気弱キャラに戻っているところに驚きました。
彼女の本来の姿が現在の姿なら以前の凛とした姿というのは、鹿目まどかを救う為というただ一点の理由によって齎されたものであったと考えると、まどかが円環の理となった一連の記憶が失われているなら当然とも言えるのか等と思います。
他にこの時点で円環の理としてのまどかの記憶を失っていた証左として魔法少女としての武器が劇場版後篇の最後にまどかと同じ弓に変わっていたのはほむらが失われたまどかへの同質化を願う現れだと思っていたので、それが再び盾に戻っていたことでも現れているのだろうと捉えています。

ほむらが持つ各世界での武器
・まどかが人として存在した世界では盾
・まどかが円環の理となった世界では弓
・新編の世界では再び盾

しかし、ほむらが魔法少女達と合流してから一か月程でまどかを名前で呼んでいるのは、以前のほむらが名字呼びから名前で呼ぶまで3回ほどの時間遡行を経た上であったことを考えると記憶が戻ったか戻りつつある兆しでもあったのかもしれないと思います。
そして瞳がナイトメア化したものを浄化した帰り道から彼女は世界に違和感を感じ始めているようです。
やがて違和感は確信へと変わり杏子と共に自分たちの住む見滝原から出て嘗て杏子がテリトリーとしていた風見野市へ移動出来るのか試そうとしますが、これは叶いません。
因みにまどかを名前で呼んでいるのに対して杏子へは普通に苗字呼びなのが対比としてみるとちょっと切なかったりします。
この時に彼女は魔女と円環の理の成り立ちである鹿目まどかについての記憶を取り戻しています。メガネと髪を解き、今までのスタイルに戻ると自分が魔女の作り出した結界の中にいることを確信します。
ほむらは魔女であるベベを問い詰めるためマミの部屋から無理矢理に連れ出します。

マミとほむらはべべを巡り一戦を繰り広げ、二人の戦いはマミに軍配が上がり、その中で二人は話し、マミも自分たち魔法少女達が魔獣と戦っているのだから魔女など知らないと答え、自分たちが戦っているナイトメアとは何なのかと驚きます。
マミに掛けられている記憶操作にも綻びが見え始めています。

マミに拘束されるほむらを助け出すさやか。
さやかも魔女の存在を知る者であり、そして現在の世界を肯定します。
この世界は振り返ってみれば皆で力を合わせてワイワイと騒ぎながら日々を過ごしている日常というのは考えてみれば過酷な運命を背負った魔法少女の中でも稀に見るものであるように思えます。
故にさやかはほむらに問い掛けます。
「ねぇ、これってそんなに悪いことなの?
誰とも争わず。みんなで力を合わせて生きていく。
それを祈った心は裁かれなきゃいけないほど罪深いものなの?」
嘗て魔女となった者だからこそ分かる痛み。
そして人としての生から外れたまどかが人間としての生活を楽しむ姿を見て、この生活をもう少し送らせてあげたいという気持ちからの言葉だったのではないかと思いました。

確かにこの世界は結界の中ではあるも魔法少女たちの誰もが満足している世界。
さやかはそのささやかながらも幸せといえる世界を壊してしまって良いのかと重ねてほむらに問い掛けるのですが、彼女がその問いに答えることないままに二人の邂逅は終わります。

ほむらは壁に描かれたまどかの絵に縋ります。
その姿は神に縋る信者の姿のそれです。
そこから見えるのは彼女にとってまどかは神とも言える存在となっており、その神の犠牲によって成立する世界を壊すということは宗教でいうなら戒律を破る以外の何者でもないという事です。

そんな彼女をまどかは見つけ慰めようとします。
彼女はまどかに語り掛けます。怖い夢を見た。まどかが遠い所に行ってしまったのに誰もがそのことを忘れ自分だけしか覚えていないのだと、これは離ればなれになってしまったことへの嘆きでもあります。
この問いにまどかはそんな辛いことには耐えられないと答えます。その回答によってほむらはまどかが円環の理となったことが決して彼女の本当に望む願いではなかったことを悟ります。同時に改めて自覚した筈です。その苦しみの中に陥れたのが他ならぬ自分自身であることを。
話をしながらまどかはほむらの髪に手を伸ばしお下げを作ろうとしますが、これはほむらを少女に押し止めようとする気持ちの表れでもあったのでしょうか。決意した彼女はそれを拒みます。

二人の周囲の咲いていた白い花は暗く染まり枯れますが再び輝き出すと浮かび上がります。それはたんぽぽの綿が浮かび上がるように見えました。
タンポポの花言葉は「愛の神託」「真心の愛」「別離」です。

そしてほむらは気付きます。
この偽りの世界を作り上げたのが自分であることに。

それでは今回この辺で

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