「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[後編] 永遠の物語」の考察3「願いの果てに」

星雲に包まれる夜 徒然日記


割と軽い気持ちで始めたまどまぎ劇場版の考察ですが気付いたら上げているページが複数にのぼり、うっかり手を出してえらい目にあっている悲しい笑いです。
前回はまどかが願いを発するに至った背景のようなものを書いたので今回はまどかの願いと、その影響について書いてみたいと思います。

*この先は「魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語」を見ていることを前提として書いているため内容にネタバレが多く含まれていますので注意願います。

願うまどか
いよいよワルプルギスの夜がやって来ます。このワルプルギスの夜というのは調べてみると別名:魔女たちの夜会とあるので単一個体ではないようです。はじめは全ての魔女たちの集合体かと思っていたのですが、そうなって来ると逆に弱すぎようにも思えるので、ある程度の数の魔女たちが集まった複合体であるという捉え方が適当なのかもしれません。

ほむらはこれに挑みますが為す術がありません。
他の住人達と避難していたまどかはそこでQべえからほむらの絶望を知らされます。
ほむらが立ち止まることは諦めることと同義であり依ってまどかの運命を変えられないと確信すればグリフシード(魔女)へと姿を変える。従って、ほむらは勝ち目のあるなしに関わらず戦うしかない。
もはや彼女は希望を持つ限り救われないという無間地獄に立っている状態である。
以上のことを伝えます。

まどかは戦いの場に赴くと、正に敵に倒れソウルジェムを黒く染めようとする寸前のほむらの手を取ります。そして魔法少女になることを告げて願います。
その内容は「全ての魔女をこの世から消し去りたい。全ての宇宙、過去と未来の全ての魔女をこの手で」という願いへと繋がります。
この願いにQベえは時間干渉というレベルではなく因果律そのものへの反逆であり神となることを願うに等しいと驚きます。

まどかの願いの意味
次に巴マミが自分の部屋でまどかに紅茶で持て成します。
おお、生きっとったんかマミ!!等と一瞬思ったのですが、これはまどかの心象風景としての最後の自分への最後の問い掛けであるのか、願いがによって過去の魔法少女の意識と触れられるようになっているかのどちらなのかは迷う所です。
何れにせよマミは先輩として最後に本当にその願いを叶えて良いのかいくつかの事実と共に問い掛けます。
・まどかは未来と過去とすべての時間で永遠に戦い続けることになる
・その願いはまどかという個体を保てなくなる
・一人の個体から魔女を滅ぼすという概念になる
・魔法少女すべての希望になる

マミがまどかに渡すティーカップのデザインは受け皿は周りを三つの円が囲んでいます。これは未来と過去と現在の中心にまどかが存在する事になるというメタファーなんでしょうか。

蛇足だとは思いますがまどかの願いの意味を願いの言葉からも少し深堀したいと思います。
「全ての魔女を消し去りたい。全ての宇宙、過去と未来の全ての魔女をこの手で」
魔性少女たちを魔女化させないことで救済するのは彼女自身の手によってです。
救済対象は全ての魔法少女です。
過去と未来ということは時間軸から彼女は解放されます。
全ての宇宙ということは距離という概念からも彼女は解放されます。

状況によって同時多発的に対処する必要があると考えると同時に違う場所に現れて行動する事も可能になるでしょう。
魔女化は魔法少女の希望が絶望へと変化した際の結果です。
その際に呪いが回収されることで魔女化することが無くなります。
単純に考えると魔法少女が魔女化する際に発生する現象のような存在へ変化したとも言えそうです。
現象はただ発生する。魔法少女の魂の救済だけを目的とした概念となる。
魔法少女達の魂の救済者としてのその力は時間的制約と距離的制約という軛からの解放は文字通り次元を超越した神の御業と言えます。

この願いは叶えられました。

まどかの願いに基づいて宇宙の再編が行われ鹿目まどかという存在の結末を見守ることをほむらは時間を超える魔法を持つことから許されます。
宇宙の再編が終わったことによってまどかは
・人生に始まりも終わりも無くなった
・個人として世界に生きた証もその記憶も残されていない
・その存在は概念となった
・誰も認識出来ないし誰にも干渉出来ない

その事実を知ったほむらは悲嘆するのですが願いを叶えたことで過去の全てをも知ったまどかはほむらの全てを理解し受け止めます。

まどかとほむらのすれ違い
まどかは願いを叶えたことによってほむらの全てを理解します。
自分が結んでいたりぼんを「あなたは私の最高の友達だったんだね」と言ってほむらに渡します。
ほむらはまどかに縋り「こんな場所に永遠に取り残されるっていうの」「私はあなたを忘れちゃうのに」と激しく問い掛けます。
これは自分に対してもまどかがこんな状況に置かれても良いのかという問いを発しているように見えます。まどかは「いつも一緒」だと言います。ほむらは止めようとしますが、まどかは遠ざかって行きます。

対象的な二人の態度です。
見ていて、まどかはグレートマザーのような存在だと思いました。その大きな愛の救済対象は全ての魔法少女に及びます。
ほむらはまどかだけを見ています。まどかもほむらを見てはいますが、あくまで救済対象である魔法少女の一人としてであって彼女一人を見ているわけではありません。
ほむらはまどかを特別な存在として彼女の為に行動しました。その行動の意味が友情なのか愛情なのか、それとも単なる執着に過ぎないのか、それとも其々合わさったものであるのか判断は出来ませんが、ほむらにとってまどかが特別な存在であることだけは確かでした。
しかし、まどかにとってほむらは特別な存在ではありません。

以後の世界
ほむらはまどかから渡されたりぼんを持ち彼女だけは唯一まどかの記憶を残したままに再編された世界を生きます。
その世界は仕組みを変えていましたが魔女が存在しなくなっても人の世の呪いが消え去る訳ではありません。
世界の歪みは形を変えて魔女の存在こそ無くなりましたが今では同様に人を襲う魔獣と魔法少女は戦っています。
ほむらの持つ武器は盾から弓矢へと変わっています。これはまどかとの同質化を無意識的に求めることの現れなのでしょうか。
この世界では魔法少女が希望を求めた因果がこの世に呪いを齎す前に消え去っています。
その因果の回収の仕組みは円環の理と呼ばれています。
浄化し切れなかったソウルジェムが消滅する理由はインキュベーターにも理解出来ていません。
ほむらはふとしたタイミングでQべえに以前の世界のことを話します。
同時にまどかの事も伝えます。
Qべえはエネルギー回収という観点からすると以前の魔女からの方が効率は高いと率直な感想を漏らします。

Qべえにまどかのことを話した理由は何なのでしょうか。
インキュベーターはエネルギー回収を目的としています。
現在よりもエネルギー回収効率の高い方法が分かれば、現在で言えば円環の理であるまどかの探求にインキュベーターは力を割くこととなる。謂わばインキュベーターの目的とするエネルギー回収の改善を促す仮説を提供したとも言えそうです。

最後、ほむらが魔獣に戦いを挑む背中から広がる翼は呪いの色を放ち周囲を染めました。

「魔法少女まどか☆マギカ[後編] 永遠の物語」の考察は以上となります。

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