「魔法少女まどか☆マギカ[後編] 永遠の物語」の考察1「ほむらの願いと想い」

魔法少女まどか☆マギカ 徒然日記
魔法少女まどか☆マギカ

*「魔法少女まどか☆マギカ[後編] 永遠の物語」を見ていることを前提として書いているため内容にネタバレが多く含まれているため注意願います。

「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ後篇 永遠の物語」は暁美ほむらと鹿目まどかがメインの話になっているなぁという印象です。前篇でほむらは戦隊もののブラック的な謎のキャラで実はまどかの実の姉とかなのか?と思わせていたポジションからいよいよ彼女メインで描かれている印象です。

後篇の冒頭でさやかと杏子の結末が描かれます。
これに対してほむらの反応というのは同情的ではあるものの、やや冷淡にも見えましたが、それは彼女が時間遡行者であるということから考えれば、目の前の出来事は今まで何度となく繰り返してきた類似事項の一つでしかないという事実に突き当たります。

鹿目まどかの魔法少女としての飛び抜けた資質について

魔法少女の潜在力とは背負い込んだ因果の量で決まります。潜在力、つまりは資質とも言い換えられるでしょうか、それは多くの人たちに影響を齎す、もしくは齎して来た一国の女王や名のある救世主といった人達は己の存在、行動の結果として因果が集まることになりますので、そういった人物が魔法少女となれば能力もそれに応じて高いものとなります。
では、平凡な人生を送ってきた鹿目まどかの資質の高さはどこから由来するのでしょう。
その答えは暁美ほむらでした。彼女はまどかを救う為に時間遡行を繰り返しています。
その副作用として時間遡行が繰り返される度に平行世界として存在する因果の糸がまどかを中心として集まってしまった為によるものでした。
皮肉です。彼女がまどかを救う為に繰り返した行為はインキュベーターから見てまどかの持つ魔法少女としての価値を高めることへと繋がり、より魔女となる運命を逃れ難いものへと変えていったのでした。

では、ほむらが魔法少女となりまどかに対して、あれほど強い気持ちを以て守ろうとする理由は何なのでしょう?

ほむらがまどかに対して抱く気持ち

ここで彼女の願いがどういった経緯から発せられ、繰り返した時間遡行の内容から彼女がまどかに抱く気持ちを探ってみたいと思います。

1度目の時間遡行

まどかに出会う前、暁美ほむら病気で長期間入院していて当初は運動も勉強もダメな引っ込み思案で、おまけに魔女に拐かされそうにもなった所を魔法少女であったまどかに助けられるという出会いをしています。彼女の扱いは一昔前のヒロイン枠です。
冒頭の彼女を見る限り元々ほむらは強い人間であったという訳ではないようです。
魔女から助けられたまどかにほむらは付いて歩き、ワルプルギスの夜にまどかが敗れた時にQべえから魔法少女としての資質を見出されます。
この辺りは、当時、インキュベーターの本当の意図を見抜く者はなくほむらが望めば契約を邪魔するものはありません。従って、それまでQべえはほむらを魔法少女となる有資格者とは見ていません。翻って考えると彼女は抑圧的な性格であり表面から感情の動きを知ることが難しい。彼等の欲するものが感情エネルギーであると考えると、まどかの死によって生じた彼女の感情の揺らぎの激しさが魔法少女の資格ありと写ったのだろうと推測します。
彼女の願いは「鹿目さんとの出会いをやり直したい」「彼女に守られる自分じゃなくて彼女を守る自分になりたい」というものでした。彼女は自分に対して強いコンプレックスを抱いています。まどかは彼女を友人として扱っているようなのですが彼女は自身のコンプレックスから自分はまどかの友人たる資格を持ち得ていないと考えていたようです。それは願いの際の言葉の後に続く「彼女に守られる自分じゃなくて彼女を守る自分になりたい」という言葉に現れているように思えます。
通常であればまどかの死を嘆くのであれば彼女の復活または彼女を救うことを願う筈です。しかし彼女の願いは「出会いをやり直したい」というものです。従って彼女は自身が強くなることでまどかとの関係性を変えたいという欲求を持っていたと考えられます。
つまり、まどかが単純に復活するだけでは以前と同じく彼女はまどかの庇護対象の一人に過ぎません。また彼女の中で友人とは対等な関係であるという考え方があったのではないかと仮定すると、自己の能力の向上が伴うであろう魔法少女となり、且つまどかとの出会いをやり直すことが出来ればまどかと友人となることを望む彼女にとっては過去の弱い自分を消すことが出来るという一石二鳥の願いだったのでしょう。
しかし時間遡行という大き過ぎる能力はその分だけ魔法少女の能力リソースを割く必要があった兼ね合いからか他の魔法少女と比較した場合に例えば攻撃能力だけといった一部分だけで見ると劣るものとなったのは彼女の誤算であったのでしょう。

同時に思うのは過去のほむらは現在のまどかと立ち位置が似ています。。
現在のまどかは他の魔法少女の後を付いて回り魔法少女にならない自分に負い目を感じています。過去のほむらは魔法少女となれない自分に負い目を感じていたのではないでしょうか。現在のまどかは巴マミに憧れて一度は魔法少女になりたいと考えました。ほむらも同様に魔法少女であるまどかに憧れを抱き同じようになりたいと願っていたのではないでしょうか。
自分も魔法少女となったことで彼女と対等な友人となりたい。その為には彼女との出会いをやり直す必要があると考えたのかもしれません。昔の弱い自分ではなく魔法少女となった仲間として出会いをやり直して友人となる。始まりはそんな単純な思いから出た願いであったのかもしれません。

2度目の時間遡行

初めての時間遡行によって退院日に戻った彼女は転校初日にいきなりまどかに自分が魔法少女となったことを告げる姿は自分も彼女と同じ魔法少女となったのだという喜びに満ちています。しかしこの時の彼女は他の魔法少女達が超人的な動きを見せるのに対して彼女だけはその動きについていけません。彼女にも魔法少女となったことで身体能力などの向上が付与されている筈なのですが能力を使い切ることが出来ていないのは彼女が以前の運動を苦手としていた頃の記憶に縛られているからではないかと思えます。従って、この時の彼女は守る力を与えられてはいるもののそれを行使するには至っていないため依然として守れる自分になりたいという願いを叶えてはいません。
この平行世界でもワルプルギスの夜にまどかが敗れ魔女化したことで彼女はインキュベーターの本当の目的を知ります。

3度目の時間遡行

過去に戻った彼女は他の魔法少女達へインキュベーターの目的を話しますが信じて貰えません。それどころかさやかからは、この時は敵対していたであろう杏子との繋がり疑われた上に、戦い方に文句を付けられる始末なので人は自分の信じたいものしか信じないという言葉を思い出すのですが、ここで先ずは戦闘能力を高めることで仲間に認められることが必要だと考えたのか、オドオドしながらヤクザ事務所に忍び込んで銃器を奪って来る辺り彼女は図々しいのかそうではないのか判断に迷う所です。
三度ワルプルギスの夜に挑み彼女とまどかの二人は横に並んで倒れ世界について言います。
彼女は冗談交じりに「私たちこのまま怪物になってこんな世界、なにもかもめちゃくちゃにしちょうか」と物騒なことを言い出します。まどかは「守りたいものもこの世界にはたくさんあったから」言います。

二人の世界観の違い

彼女にとっての世界の中心はあくまでまどかという個人であって世界というのは、その付随物の一つでしかない。故に中心となるべき対象が無くなった世界に大きな価値を見出していない。
対してまどかには多くの守るべき対象があり、その為に世界は依然として守らなくてはならない対象であるという事。
また、まどかから魔女になる前に始末を付けて欲しいと頼まれたことで初めて彼女は「まどか」と下の名前で呼び掛けるようになります。これは漸く彼女がまどかを守ることの出来る友人になれる条件を満たすことが出来たということなのだと思うのですが、そこで待ち受けていたのは自分が守らなければならないまどかが魔女化する前に止めを刺すという過酷な依頼でした。この時に彼女は同時に二度と同じことを繰り返さないと決意させたのでしょう。

4度目の時間遡行

次に過去に遡った彼女は入院しているベッドから起き上がると「誰も未来を信じない。誰も未来を受け止められない」と一人呟くとメガネを外し髪を解きます。これは今まで彼女にとって自身を束縛していたものからの解放と成長を示しているように思えます。
彼女は自分一人で魔女と戦いまどかを戦わせないと決意しています。
しかし、この時にまどかが魔法少女となることを決断させたのは皮肉にも戦いに苦しむ彼女の姿でした。
結果としてこの時のまどかは最強の魔法少女となり、やがて最悪の魔女となることが決まります。

現在へと至る

彼女の願いは字面だけで見れば半分は叶えられたとも言えます。当初の願いの目的は守られるだけではなく守ることの出来る自分になりたいという自分の成長を伴った願いでした。魔法少女としての彼女の能力は願いを発した頃のまどかを既に凌駕しているでしょう。おそらく彼女は当初に想定していた以上の能力を獲得しています。しかし依然としてまどかを守ることが出来ない。それどころかまどかを助けようとすればするほど距離が出来て自分は孤独になっていく。

彼女がまどかに対して抱く気持ちはどんなものなのでしょう。初め抱いていた気持ちは憧れであり、友人になりたいとう単純な好意であったのではないかと思います。その気持ちはやがてまどかを庇護対象としたことで嘗ての自分の姿をまどかに見出し、嫌悪感を感じたと同時に自己愛にも繋がったのではないかと推測します。余りに困難な作業の繰り返しは、やがて執着となっていったことも想像に難くありません。更に時間遡行を繰り返すことでまどかに因果の糸が集まり彼女の業をより深いものとした罪悪感も加わります。それらの多くの気持ちが綯交ぜとなった感情の解釈は各人に委ねられた部分であるのだろうと思います。

長くなってきたので今回はこの辺で

劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[前編] 始まりの物語を見た感想と言うか雑感