「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[後編] 永遠の物語」の考察2「まどかが願うに至った背景」

星雲に包まれる夜 徒然日記


後篇の考察のようなものを書いていて気づいたら随分と長くなってしまったのでいくつかに分けることにしました。
取引先の担当者に適当に話を合わせる為に観始めた割にアニメ版を3回程度すべて見返して、劇場版も気付いたら5回以上全て見返しているので我ながら随分と嵌り込んだもんです。

前回はほむらの願いと過去へと遡ることでまどかへ抱く感情の源泉のようなものが分かった気がしました。
今回はまどかに視点を移し、現在の彼女が願いを発するに至った事情のようなものを探ってみたいと思います。

しかし何だか書いていて思うのですが魔法少女まどか☆まぎかの主人公というのはほむらであって、まどかを中心としたほむらの物語だったのではないだろうかと思い始めています。

*この先は「魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語」を見ていることを前提として書いているため内容にネタバレが多く含まれているので注意願います。

母の苦しみ

まどかはさやかの葬儀に参加して帰宅した玄関に自分の脱いだ靴を揃え直すこともせず自室に戻ります。彼女の育ちから見て脱いだ靴は揃えるよう教育を受けていそうなので、それを行う余裕も無くなっている状況を見ると精神的に差し迫った状況に追い込まれていることが伝わってきます。
当然、母親もその様子に気付くのですが、それでも何も出来ないところに母親の苦しさがあるのだろうという気がします。その母も旧友であり、まどかの教師でもある早乙女和子と酒を飲みながら苦しさを吐露しているところから、その苦しみの度合いが伝わって来ます。
彼女の持つグラスの向うにぼやけて写る指と指を合わせようとする画は映画「E.T」を思い起こさせます。この作品のテーマには異文化コミュニケーションのようにお互いに分からない者同士が付き合う難しさのようのものが含まれているのかもしれない等と思います。
母性のようなものは包み込み受け入れてくれる反面で包み込んだものを圧迫し優しく中身を腐らせてしまうというリスクが伴います。この点でまどかの母は父性的でもあり娘を信頼することで成長の芽を奪ってはならないという信念のようなものも窺えます。

一方でまどかはQべえから魔法少女とインキュベーターの関係を言い訳として聞かされます。

Qべえの言い訳

・魔法少女とインキュベーターの関係を家畜に例える
―家畜は生存競争から保護され種として繁栄している
―インキュベーターは人類を知的生命体として交渉している
―人類の発展にも寄与してきた

・裏切ったのは彼女たち自身の祈りである
―多くの少女は希望を叶えて絶望に身を委ねた
―どんな希望も条理に沿ったものではない以上そこから災厄が生まれるのは必然である
-これらを裏切りと捉えるのであれば願うこと自体が誤りである
※同時にまどかへ今までの魔法少女達の行く末を見せる

まどかの反応

・魔法少女たちはインキュベーターに裏切られたと捉えた
・感情的な面からインキュベーターの考えを受け入れられない

理屈だけであればインキュベーター側に分があるようにも見えますが、これにまどかは感情的な面から拒否反応を示します。
Qべえというのは終始一貫して理性的で男性的ですが対するまどかは感情的で女性的に映ります。
この二者の対立は男性と女性が対立するステレオタイプ的な画でもあると思いました。

まどかはほむらの自宅を訪ねます。

ほむらの苦しみ

ほむらの部屋には振り子時計の影が映ります。それは大きな鎌が揺れているようにも見えます。

これの意味は二つです。
一つ目、ほむらの能力が時に由来するものであることを示す
二つ目、ほむらが現在進行形で苦しみ続けていることの暗示
(拷問器具の中には鎌を左右に揺らしながら徐々に鎌の高度を下げて行き、その下に固定された者を切り刻むものがあり、彼女の置かれる状況は正にその拷問台に掛けられている姿そのものではないかと思えます)

まどかはほむらにワルプルギスの夜について問い質し自分が助力すると懸命に訴えます。そして彼女が真実に触れようとする度に大きな影が彼女を突き刺します。
ほむらはまどかの申し出を必要ないと向き合うこともせずに断ります。
揺れる影はほむらの体を深く突き刺し、遂に耐え切れずまどかを抱きしめ自分に守らせて欲しいと訴え掛けますが彼女は呆然とします。この時、影は轟音を挙げます。

このシーンを見ていて思うのは、まどかは今まで繰り返された時の中の殆んどで自らの意志を持って魔法少女となることを選択しています。言い換えれば彼女は選択することの出来る人であるということに思い当ります。
ほむらの苦しみを感じ取ったまどかはジレンマに苦しむことになったのだろうと思います。
ほむらが苦しんでいるのは自分の為であること、自分が魔法少女になるということはインキュベーターの意図することであり、そうさせない為にほむらは苦しんでいる。
自分は戦うことを選択したいと考えている事。

この状況がまどかが自分の身と引き換えにしてでも願いを発するに至った背景となったのだろうか等と思いました。

それでは今回この辺りで

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