「劇場版 魔法少女まどか マギカ[新編]叛逆の物語」感想というか見ていて思ったこと「贖罪」

星雲に包まれる夜 徒然日記


暁美ほむらという人物を見ていて彼女は罪悪感に苦しみ続けた側面を持った人でもあったのではないだろうかと思うようになりました。
よく罪を憎んで人を憎まずと言います。
これは考えてみるとその過程の中で被害を受けた側が完全に受けた被害の賠償を受けるというのは難しいという事実に突き当たります。
例えば、友人の過失で自分が怪我をしたとしましょう。しかし、いくら相手が謝っても受けた傷が治る訳もありません。
それどころか友人は自分に傷を負わせたことを負い目に感じて、離れて行くことで友人では無くなってしまう可能性すら生じて来ます。
罪を憎んで人を憎まずというのは相手を許して今までと同じ関係を続けた方が結果として被害は少なくなるという合理的判断に過ぎないという見方も出来るのではないかと思えてきます。
その一方で相手に被害を与えた側として考えれば相手を見る度に怪我が目に入ったりすれば負い目は大きくなるばかりといったことも可能性としては起こり得てきます。
ほむらの例で言えば、彼女の行動はまどかに取り返しの付かない運命を背負わせることに繋がったが誰にも責められない。それが罪悪感となって彼女を苦しめ続けた側面もあったのではないかと思えます。
その苦しみからほむらが解放されるには罪を贖うか贖罪が必要となって来ます。
今回、彼女は自らを処刑することによって贖罪としようとしたのではないかと思えます。

*この先は「魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語」を見ていることを前提として書いているため内容にネタバレが多く含まれているので注意願います。

前回ではほむらが自身が結界を作り出した魔女であることに気が付きました。
彼女は自分自身の魂であるソウルジェムをその身から離し自ら撃ち砕こうとしますが自分に死が訪れないことを魔女となった証明とします。

ほむらはQべえと対峙することで全てを知る事となります。
ほむらはインキュベーターの作った外部遮断フィールドの中で魔女となる寸前の状態で閉じ込められている事。
今回の試みが円環の理である鹿目まどかの観測を行う為の実験である事。

加えてインキュベーターの目的がまどかの支配を目的としている事を知ります。
それを阻止する為にほむらは呪いを募らせて完全なる魔女となることで自らの結界の中でQべえを滅ぼそうとします。
Qべえはほむらを思い止まらせるために説得します。
・外部遮断フィールドの中での死は円環の理から外れることで有り、その魂は永遠に救われない
・まどかと再び出会う機会も失われる
以上の事柄を伝え説得しようとしますが魔女化した自分は残りの魔法少女達が倒してくれると語るのみです。

ほむらは魔女化する中で輝きと後悔が追い掛けて来ると言います。その意識の中でまどかとほむらは並んで座ります。まどかが倒れようとするのを彼女は手を伸ばして支えようとしますが触れることは叶いません。
まどかの眠る部屋の扉は閉ざされます。
これがほむらの絶望です。

混濁した意識の中で展開される風景は彼女のまどかへの罪の意識の現れであるとも言えます。彼女はまどかを救う為に魔法少女となり、その願いは叶えられないままに終わる。
それが彼女の絶望であるとも言えるでしょうか。

その姿を魔女へと変貌させた彼女の姿はさながら処刑台へと向かう罪人のそれです。
囚人のように鎖で手を繋がれた彼女の周りを多数の処刑人の格好をした使い魔が取り囲みます。
その連行の最中に頭部が崩落しますが、それを自らの足で踏みにじります。

崩落した頭部の意味はもはや自らの理性が失われ、死刑の執行を本能的に受け入れたように見えます。
事実、彼女を待つものは魔法少女達の手によって齎される滅びです。これが彼女自らが望んだ死刑の形です。

彼女は自らの作り出した結界の中でインキュベーターに鹿目まどかの観測を許し、且つそれは支配へと繋がることを知り、それを阻止する為に自ら魔女化することを選びますが、これが終わった後もまどかはインキュベーターの支配の手から逃れこそすれ、以後も人としての生を許されず円環の理として在り続けなければなりません。
従って彼女の滅びを以てしても鹿目まどかを円環の理となる運命へと押しやった罪は消えず真に救済するには至らない。
彼女が行おうとしている贖罪は己の死を以てして行おうとしているということになるのでしょうか。

魔女化したほむらと魔法少女達が対決することになります。

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