保険のおばちゃんが必要な理由

フランクな格好で営業に来るおばちゃん 徒然日記


本日もファスト&スローを読んでいたのですが、今後も保険のおばちゃんの存在が消滅することは無さそうだと思ったので、その理由を書いてみたいと思います。

本の中で、人は認知負担の軽重に関して、その負担を担う側に与える影響について書かれています。

認知負担が軽くなる状況
・機嫌が良い時
・直感を信じやすくなる
・慣れ親しんだ心地よい状況

認知負担が重い場合
・慎重で疑り深くなる
・普段より努力しミスを犯しにくい
・直感に頼らない
・創造性を発揮しない

簡単にまとめると
人は機嫌が良かったり慣れ親しんだ場所では深く考えず直感的に行動する。
人は理解出来ないものにあたる時、疑い深く慎重に行動するようになる。

この認知を容易にする要因としては、自分が今まで繰り返された経験、理解する対象について説明する文書が見やすいものであると人の理解は更に進みやすくなります。
変わった点としては、説明を受ける側が笑顔でいるだけでも理解は進みやすいものと受け取るようになるそうです。
そして、人はそういった状況に置かれた場合、気が緩み直感的にものごとを捉えるようになるのだそうです。

ここで冒頭の保険のおばちゃんの話に戻って来るのですが、恐らくですが、これを読んでいる方達の中にも職場に保険勧誘のおばちゃんがやって来ていて保険の説明を受ける事となり保険の契約をした方もいるのでないかと思います。

現在はインターネットが発展したことで保険に入りたいと思えば検索を掛ければ大抵のことは分かります。実際にネットでの販売に注力している保険会社も存在しています。しかし、そんな状況下にあっても保険のおばちゃん達は元気に営業活動に勤しんでいます。

なぜでしょうか?

それは保険という商品に答えの一端があるような気がします。
日本人は保険が大好きだと言います。日本人の保険加入率は平成28年度で男性80.6%、女性81.3%です(生命保険文化センター調べ)と高い加入率となっています。
筆者の周りでも例えば結婚して子供が出来ると保険の加入を考えるようになり、いつの間にか毎月の保険料を支払っているという人は少なくありません。
しかし保険の約款などを見れば分かりますが、商品の内容は複雑ですし、複雑な商品であるということは説明文も難解なものになって来ることを避けられません。つまりは保険加入を考える人にとって認知負担がある程度重くなることを避けられない為、相手は加入を考える保険に対して慎重で疑り深くなり直感に頼らず商品の意味を正しく理解しようとする努力を求められることになります。

だから普段であれば煙たい事この上ない保険のおばちゃんに説明を聞いて、そのおばちゃんから保険を申し込んでいるのです。
実際に保険のおばちゃんから保険に加入した友人に保険についてネットで調べたりしなかったの?と聞くとネットではよく分からなかった。だから普段からよく見かけるおばちゃんに話を聞いたと言います。しかし、おばちゃんの話が分かり易かったか聞くと「いや、いまいちよく分からなかった」等と言うのです。
理解出来なかったのになんで保険に加入したの?と聞くと、上司もこのおばちゃんから加入しているみたいだし、同じ内容の保険だって言うから加入したんだ。等と宣ってきたりします。

そうです。保険の約款などを見ると分かるのですが、専門用語がびっしり並んだ書類を全て理解しようという気が起きないのだろうというのはよく分かります。読むのだけでも面倒なのに更に分からない用語を一生懸命調べて等というのは面倒臭そうです。

そこで認知容易性の話に戻るのですが、保険のおばちゃんは大体において長期間に渡って会社に出入りしているケースが多いです。また、出入りしているおばちゃんから保険に加入している同僚も顧客として抱えており、しかも社内で見掛ければあめ玉なんかをくれたりします。
しかも彼女たちは辛抱強い。
いくら邪険に扱われても所詮は保険大好き日本人なので何れ保険加入を考える機会が訪れるのを知っているので自腹で購入した飴ちゃんを惜し気もなく気前よく配ってくれるのはその為です。

そして保険の営業のおばちゃんは言うまでもなく営業のプロフェッショナルです。所謂、営業本で紹介されるような営業スキルなんかは全て知っている上に普通に使いこなしています。従って相対するお客さんの心を解き解すのなんかはお茶の子さいさいですし自分が営業を掛けるにあたって有利な場所を話し合いの場所として必ず指定して来ます。
そこでリラックスしておばちゃんから一つ二つの面白い話を披露されて気が付けば笑顔でリラックスした状態になって保険の説明を受けることになります。

つまり認知容易性を軽くする要因を保険のおばちゃんは作ることに長けています。そして人は認知容易性の軽いものに対して直感に頼った行動をします。顧客見込みに対して定期的に顔を出して何となく親しみを持たせ、対象の上司や同僚を顧客として抱えることで新規申込者の不安を和らげ、持ち前の営業テクニックで心も解きほぐす。
そうすると説明を受ける側は保険加入を考えているので知っている顔のおばちゃんで、知り合いも加入している製品で保険会社も大きい。それに元々から保険に入らなければと思っていたから加入してもよいか。と、直感的に判断して説明を受けたおばちゃんから保険に入ってしまうのです。

これがネットなら書いてあることも詳細まではよく分からないし、ニュースで保険金の払い渋りなんてものがあるとも聞くから何となく怖い。
でも、知っている人が間に入ってくれるなら何となく大丈夫かな?と考えるのでしょう。

以上の点が今後も暫くは保険のおばちゃんの存在が無くなることはないのだろうなぁと思うに至った理由です。

それでは。

参考図書