誰にでも自分はこうだというセルフイメージがあると思います。
セルフイメージとは自分の頭の中で描いた自画像のようなものなのだと思います。
足の速い子供であれば、自分は足の速い人間。
絵の上手な人であれば、自分は絵の上手い人、絵描き、絵師である。
といったセルフイメージを描くことになるのでしょうか。
これらは残念ながら自分で思い描いたイメージなので必ずしも正しい訳ではありません。
間違った例を挙げれば、私の友人のジャイアン(仮称)は自分で歌が上手い人だと思っています。
私がジャイアンの歌について歌は下手だけど声はでかいと思っています。
もしもジャイアンが自分は歌手になりたいと言い出せば私は友人として「これは凄く言い辛いことなんだけど、君、歌、下手だよ」と告げざるを得ないわけです。
自己のセルフイメージと他者がその人に対して抱くイメージが一致していれば問題ないのですが、このように大きな乖離が生じている場合は些かの問題を生じさせることになります。
私が正確な事実をジャイアンに告げた場合に想定される反応は以下になります。
1.「そうなんだ。じゃあ諦めて家業のスーパーを継ぐよ」と事実を受け入れる。
2.「はぁ?おまえ耳がおかしいんじゃねえか?青狸がバックに付いてるからって調子に乗ってんじゃねえぞ!」と言って殴り掛かってくる。
3. 「そうか・・・(こいつ耳がおかしいんだな)」とこちらの解釈を無言で否定する。
これらの反応が予想されます。
素直に受け入れられる人であれば、こちらも勇気を出した甲斐があるというものですが、これは残念ながら稀な例になると思います。
実際は2、3の例が多く、ジャイアンは私と話したその後にでもスネ夫(仮称)あたりに「のび太(仮称)に俺の歌が下手だって言われたんだけどよ。そんなこと無えよな?」
「え、ジャイアンの歌が下手だってのび太が言ったの?・・・。う、うん、う、うまい?と思うよ。多分だけどね。いやぁ、でも僕も歌とかよく分からないから、な、何とも言えないんだけどね。おそらく、きっと、そうなんじゃないかな?」
とでも言って貰って「そうだよなぁ。あいつ耳が悪いんだよな」と自分を無理やり納得させるに違いないのです。
このように一度作り上げたセルフイメージというのは中々変え難いものがあります。おまけに、これを壊すようなことを言えば、それが事実であったとしても衝突が起きますし、そうならなくても自己弁護が行われてそのイメージは守られたままのことも往々にしてあることでしょう。
一度企業の社長をすると辞められないとよく耳にします。
理由として
一つは社長の頃の収入が下がってしまう事による金銭的な理由
もう一つは今さら誰かの下に付いて人の指示で動きたくないという立場の問題
ホームレスの中にも以前は会社の高い地位にいたり会社の経営を行っていたという例があると聞きます。
ということは普通の暮らしよりもホームレスの方が金銭的には厳しいものになっている筈なので、この暮らしに耐えられるなら実は金銭的な理由は必ずしも耐え難い理由とはならない。
そこで思ったのですが一度作り上げた「自分は会社のトップで全て自分で決めて動ける偉い人」というイメージを崩すことが再起を起こすべく行動を起こす妨げになっている要因になっているのかもしれません。
会社が潰れた後に別の会社で働くということは誰かの指示で動くことになります。
これが自分のセルフイメージを崩す受け入れ難い事実になっているのではないかと推測します。
普段の生活にしてもそうです。
社長の頃はタワマンの上層階に住んでいたものが6畳一間のアパートに引っ越すというのも「自分は社長で稼いでいるから成功者が住むに相応しい場所に住む」というセルフイメージの一部を「自分は会社を潰して資金が無いから収入に相応しい場所に住む」と書き換えるのは想像するだけで難しいものだと分かります。
故に夜逃げに至った社長であれば、仕事を探し住居や食事の内容といった生活レベルを落とすことは難しい。
つまり生活を変えるということはそのままセルフイメージを書き換える必要があるからです。
もしも自分の持つ預金等の資産が尽きるまでにセルフイメージの書き換えが出来なければ以降は借金をするか飢えることになる。その限界点が見えてくれば失踪する可能性が見えて来ます。それは最悪、自殺に至る可能性すら考えられます。
またセルフイメージは自分だけでなく他者が自分に対して抱いていると思われるイメージもあるのではないかと思います。そのため社長である自分を知る人々のいる今の場所でセルフイメージの書き換えが出来ない。だから誰も自分を知らない土地に行くことで始めて全てリセットして一から新しいセルフイメージを書き換えることが出来るようになるのではないかとも考えられます。そうなって初めて再構築するべく仕事に就いて日々の生活を送ることが出来るという人もいるのかもしれません。
これは今回の例に限らず企業をリストラされた人も当てはまるでしょうし、あるいは学校でいじめに遭ったことで不登校になった場合もセルフイメージを傷つけられたことが原因であると言い換えられるかもしれません。もしもそういった人たちを再起させる必要が生じたなら相手の傷付けられたセルフイメージの再構築を行う為にその人を知る人が誰もいない場所で改めてスタートしてみても良いのかもしれないと思いました。
それでは今日はこの辺で